2023年01月30日

米個人所得・消費支出(22年12月)-個人消費は名目、実質ともに2ヵ月連続で減少

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得、個人消費ともに市場予想に一致

1月27日、米商務省の経済分析局(BEA)は12月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.2%(前月改定値:+0.3%)と+0.4%から小幅下方修正された前月から低下した一方、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.2%に一致した(図表1)。個人消費支出は前月比▲0.2%(前月改定値:▲0.1%)と+0.1%から下方修正された前月を下回った一方、市場予想の▲0.2%に一致した。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は▲0.3%(前月改定値:▲0.2%)と横這いから下方修正された前月を下回ったほか、市場予想の▲0.1%も下回った(図表5)。貯蓄率1は3.4%(前月:2.9%)と前月から+0.5%ポイント上昇した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.1%(前月:+0.1%)と前月に一致、市場予想(横這い)は上回った。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.3%(前月:+0.2%)と前月を上回った一方、市場予想(+0.3%)に一致した(図表6)。前年同月比は総合指数が+5.0%(前月:+5.5%)と前月を下回った一方、市場予想(+5.0%)に一致した。コア指数も+4.4%(前月:+4.7%)と前月を下回った一方、市場予想(+4.4%)に一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:年末にかけて個人消費は減速

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 12月の個人消費(前月比)は名目ベースで10月に+0.8%と高い伸びとなった後、11月と12月にマイナスに転じたほか、12月にかけてマイナス幅が拡大した(図表1)。財消費が大幅に落ち込む一方、サービス消費はプラスを維持した。もっとも、実質ベースでは名目ベース同様に財消費が2ヵ月連続でマイナスとなったほか、サービス消費も12月は横這いに低下しており、実質ベースは財、サービスともに年末にかけて減速したことを示した。

一方、個人所得(前月比)は労働需給の逼迫を背景にした賃金・給与の伸びが持続していることもあって、プラスを維持している。この結果、貯蓄率は22年9月の2.4%を底に3ヵ月連続で上昇しており、12月は22年5月以来の水準に回復した。このため、22年10月以降、家計は所得対比でみた消費余力を残す状況となっている。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格は総合指数、コア指数ともに前年同月比の水準は依然としてFRBの物価目標(2%)を大幅に上回っているものの、低下基調が持続しており物価上昇圧力が緩和していることを確認した。このため、今週予定(1月31日~2月1日)されているFOMC会合では利上げ幅が前回の0.5%から0.25%に縮小される可能性が高まったと言えよう。

3.所得動向:労働需給の逼迫を背景とした賃金・給与の増加が持続

12月の個人所得(前月比)は自営業所得が+0.4%(前月:▲0.1%)と前月からプラスに転じた一方、移転所得は横這い(前月:+0.2%)と伸びが鈍化した(図表2)。また、利息配当収入が+0.1%(前月:+0.1%)と前月並みの伸びを維持したほか、労働需給の逼迫を背景に賃金・給与も+0.3%(前月:+0.3%)と前月並みの伸びを維持した。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、12月の名目が+0.3%(前月:+0.3%)と前月並みの伸びを維持した(図表3)。また、価格変動の影響を除いた実質ベース(前月比)も+0.2%(前月:+0.2%)となり、こちらも前月並みの伸びを維持した。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:財消費は広範な分野で減少

12月の名目個人消費(前月比)は、サービス消費が+0.5%(前月:+0.5%)と前月並みの堅調な伸びを維持した一方、財消費が▲1.6%(前月:▲1.3%)と2ヵ月連続で大幅なマイナスとなって個人消費全体を押し下げた(図表4)。

財消費は、耐久財が▲1.9%(前月:▲3.0%)と前月からマイナス幅が縮小した一方、非耐久財は▲1.4%(前月:▲0.4%)と、こちらはマイナス幅が拡大した。

耐久財では、自動車・自動車部品が▲3.3%(前月:▲6.0%)、家具・家電が▲1.3%(前月:▲1.2%)、娯楽財・スポーツカーが▲1.2%(前月:▲2.1%)といずれも2ヵ月連続のマイナスとなった。

非耐久財では、食料・飲料が+0.1%(前月:+0.3%)と前月から伸びは鈍化したものの、プラスを維持した一方、衣料・靴が▲1.4%(前月:▲0.8%)、ガソリン・エネルギーが▲8.1%(前月:▲3.5%)と前月からマイナス幅が拡大した。

サービス消費は、輸送サービスが+3.2%(前月:▲2.9%)と前月からプラスに転じたほか、住宅・公共料金が+1.1%(前月+0.8%)と前月から伸びが加速した。また、医療サービスは+0.4%(前月:+0.4%)と前月並みの伸びを維持した。一方、娯楽サービスが+0.9%(前月:+1.3%)と前月から伸びが鈍化したほか、金融サービスが▲0.4%(前月:+1.4%)とマイナスに転じた。さらに、外食・宿泊が▲0.5%(前月:▲0.2%)と2ヵ月連続のマイナスになるなど、マチマチの結果となった。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格(前年同月比)は22ヵ月ぶりに1桁の伸びに低下

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲5.1%(前月:▲1.5%)と2ヵ月連続のマイナスとなったほか、マイナス幅が拡大した(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.2%(前月:+0.3%)と、こちらは前月から伸びが鈍化したものの、25ヵ月連続のプラスとなった。

前年同月比は、エネルギー価格指数が+7.6%(前月:+14.4%)とプラスとなったものの、22ヵ月ぶりに1桁の伸びに低下した(図表7)。一方、食料品価格指数は+11.2%(前月:+11.2%)と66ヵ月連続のプラスとなったものの、4ヵ月連続で伸びが鈍化した。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年01月30日「経済・金融フラッシュ」)

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