2023年01月27日

米GDP(22年10-12月期)-前期比年率+2.9%と2期連続のプラス成長、市場予想も上回る

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:成長率は2期連続のプラス成長、市場予想も上回る

1月26日、米商務省の経済分析局(BEA)は22年10-12月期のGDP統計(1次速報値)を公表した。10-12月期の実質GDP成長率(以下、成長率)は、季節調整済の前期比年率1で+2.9%(前期:+3.2%)と2期連続のプラス成長となった(図表1・2)。また、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+2.6%も上回った。

一方、22年通年の成長率は前年比+2.1%と1984年以来の高成長となった21年の+5.9%から大幅に低下した。
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)/(図表2)米国のGDP(項目別)
10-12月期の成長率を需要項目別にみると、在庫投資の成長率寄与度が+1.46%ポイント(前期:▲1.19%ポイント)と前期からプラスに転じて成長率を押し上げたほか、政府支出が前期比年率+3.7%(前期:+3.7%)と前期に続いて堅調な伸びを維持した(図表2)。

一方、住宅投資が前期比年率▲26.7%(前期:▲27.1%)と前期並みの大幅なマイナス成長となったほか、個人消費が+2.1%(前期:+2.3%)、設備投資が+0.7%(前期:+6.2%)と前期から伸びが鈍化した。さらに、当期は輸出の減少もあって外需の成長率寄与度が+0.56%ポイント(前期:+2.86%ポイント)と前期から成長率の押上げ幅が大幅に縮小した。

これらの結果、GDPから在庫投資と外需を除いた国内最終需要は前期比年率+0.8%(前期:+1.5%)と前期から伸びが鈍化しており、国内需要の減速を示した。

このように、当期は2期連続のプラス成長となったものの、在庫投資や外需による成長押上げの影響が大きく、国内最終需要の弱さにみられるように表面の数値が示すほど米経済は堅調ではない。FRBによるこれまでの金融引締めの効果に加え、今後の更なる金融引締めの影響によって国内需要を中心に米国経済の減速は続こう。
 
1 以降、本稿では特に断りの無い限り季節調整済の実質値を指すこととする。

2.結果の詳細:

(個人消費・個人所得)自動車・自動車部品の消費が回復
10-12月期の個人消費は、財消費が前期比年率+1.1%(前期:▲0.4%)と4期ぶりにプラス成長となったほか、サービス消費が+2.6%(前期:+3.7%)と前期からは鈍化したものの堅調な伸びを維持した(図表3)。

財消費では、耐久財が+0.5%(前期:▲0.8%)と3期ぶり、非耐久財が+1.5%(前期:▲0.1%)と4期ぶりにプラスに転じた。

耐久財では、娯楽・スポーツカーが▲1.7%(前期:+9.5%)と高い伸びとなった前期の反動もあってマイナスに転じたほか、家具・家電が+0.4%(前期:+2.6%)と前期から伸びが鈍化した。一方、自動車・自動車部品が+7.5%(前期:▲13.0%)と前期からプラスに転じて耐久財消費全体を押し上げた。

非耐久財は、衣料・靴が+0.8%(前期:+5.9%)と前期から伸びが鈍化したものの、食料・飲料が+1.1%(前期:▲2.9%)、ガソリン・エネルギーが+2.6%(前期:▲2.9%)とプラスに転じた。

サービス消費は、住宅・公共料金が+1.8%(前期:▲0.2%)、輸送サービスが+2.6%(前期:▲0.2%)と前期からプラスに転じたほか、娯楽サービスが+3.2%(前期:+3.6%)と前期に続いて堅調な伸びを維持した。一方、医療サービスが+3.7%(前期:+5.5%)と堅調を維持したものの、前期から伸びが鈍化したほか、飲食・宿泊サービスが+1.7%(前期:+5.1%)、金融サービスが+0.2%(前期:+5.3%)といずれもプラスを維持したものの、前期から伸びは鈍化した。
(図表3)米国の実質個人消費支出(寄与度)/(図表4)米国の実質可処分所得伸び率と貯蓄率
実質可処分所得は前期比年率+3.3%(前期:+1.0%)と2期連続のプラスとなったほか、前期からプラス幅は拡大した(前掲図表4)。一方、貯蓄率は2.9%(前期:2.7%)と7期ぶりに前期から上昇した。
(民間投資)設備機器投資が減少
10-12月期の民間設備投資は建設投資が前期比年率+0.4%(前期:▲3.6%)と小幅ながら7期ぶりにプラスとなった(図表5)。一方、設備機器投資が▲3.7%(前期:+10.6%)と2桁の伸びとなった前期の反動もあってマイナスに転じたほか、知的財産投資が+5.3%(前期:+6.8%)と堅調を維持したものの、前期から伸びが鈍化した。
(図表5)米国の実質設備投資(寄与度)と実質住宅投資 建設投資では、製造業が前期比年率+10.6%(前期:+22.3%)と2桁の伸びを維持したものの、前期から伸びが鈍化したほか、商業・医療が▲6.4%(前期:▲12.0%)、電力・通信が▲6.6%(前期:▲15.0%)と前期からマイナス幅が縮小した。さらに、資源関連が+11.0%(前期:▲2.3%)とプラスに転じて建設投資全体を押し上げた。

設備機器投資は、産業機器が+2.2%(前期:▲11.0%)と前期からプラスに転じたほか、輸送機器が+31.0%(前期:+90.4%)と前期から鈍化したものの、堅調な伸びを維持した。一方、情報処理関連が▲23.0%(前期:+9.2%)と前期からマイナスに転じて設備機器投資全体を押し下げた。

知的財産投資では、研究・開発が▲0.6%(前期:▲1.1%)とマイナス成長ながらも前期からマイナス幅が縮小したほか、ソフトウエアが+13.3%(前期:+15.1%)と前期から伸びが鈍化したものの、好調を維持した。一方、娯楽・文学等が+3.2%(前期:+18.6%)と前期から伸びが大幅に鈍化した。

最後に住宅投資は、集合住宅が前期比年率+17.3%(前期:▲5.7%)と前期からプラスに転じたものの、戸建てが▲39.0%(前期:▲39.0%)と前期並みの大幅なマイナスとなった。
(図表6)米国の実質政府支出(寄与度) (政府支出)非国防の連邦政府支出が大幅に増加
10-12月期の政府支出は、州・地方政府が前期比年率+2.3%(前期:+3.7%)と前期から伸びが鈍化した一方、連邦政府が+6.2%(前期:+3.7%)とこちらは前期から伸びが加速するなどマチマチとなった(図表6)。

連邦政府支出では、国防関連支出が+2.4%(前期:+4.7%)と前期から伸びが鈍化した一方、非国防支出が+11.2%(前期:+2.5%)と前期から大幅に伸びが加速した。
(貿易)輸出が3期ぶりに減少
10-12月期の輸出入は輸出が前期比年率▲1.3%(前期:+14.6%)と3期ぶりに前期からマイナスに転じたほか、輸入が▲4.6%(前期:▲7.3%)とこちらはマイナス幅が縮小しており、当期は輸出入ともに外需の成長率寄与度を縮小する方向に働いた。

輸出を仔細にみると、サービス輸出が前期比年率+12.4%(前期:+7.5%)と前期から伸びが加速した一方、財輸出が▲7.0%(前期:+17.8%)と前期からマイナスに転じて輸出全体を押し下げた(図表7)。

財輸出では、自動車関連が24.1%(前期:+0.7%)と前期から大幅に伸びが加速したほか、食料・飲料が▲22.0%(前期:▲28.4%)と大幅なマイナスとなったものの、前期からマイナス幅が縮小した。一方、工業用原料が▲9.4%(前期:+32.6%)、資本財(自動車関連除く)が▲0.7%(前期:+13.8%)、消費財(食料、自動車関連除く)が▲21.0%(前期:+2.5%)と前期からマイナスに転じた。とくに、当期は消費財の落ち込みが大きくなった。

サービス輸出では、輸送が+60.7%(前期:▲10.1%)と前期から大幅なプラスに転じたほか、旅行が+35.1%(前期:+28.3%)と前期から伸びが加速した。

一方、輸入は財輸入が▲5.6%(前期:▲8.6%)と前期からマイナス幅が縮小したほか、サービス輸入が+0.4%(前期:▲0.8%)と前期からプラスに転じた(図表8)。

財輸入では、食料・飲料が▲4.7%(前期:▲11.2%)、消費財(食料、自動車関連除く)が▲21.0%(前期:▲34.4%)と前期からマイナス幅が縮小した一方、工業用原料が▲1.8%(前期:+1.9%)、資本財(自動車関連除く)が▲3.8%(前期:+7.7%)、自動車関連が▲0.6%(前期:+11.7%)と前期からマイナスに転じた。

サービス輸入は、輸送が▲23.0%(前期:▲31.3%)と前期からマイナス幅が縮小したほか、旅行が+29.3%(前期:+30.9%)と前期から鈍化も堅調な伸びを維持した。
(図表7)米国の実質輸出(寄与度)/(図表8)米国の実質輸入(寄与度)
(物価・名目値)PCE価格指数の総合、コアともに物価上昇圧力の緩和基調が持続
10-12月期のGDP価格指数は前期比年率+3.5%(前期:+4.4%)と前期から低下した一方、市場予想(同+3.2%)は上回った。この結果、名目GDP成長率は前期比年率+6.5%(前期:+7.7%)と前期から低下した(図表9)。

一方、FRBが物価の指標として注目するPCE価格指数2は、前期比年率+3.2%、前年同期比+5.5%(前期:+4.3%、+6.3%)と前期比、前年同期比ともに前期から低下した(図表10)。また、物価の基調を示す食料品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数は、前期比年率+3.9%、前年同期比+4.7%(前期:+4.7%、+4.9%)となり、こちらも総合指数同様、前期比、前年同期比ともに前期からは低下した。PCE価格の総合指数、コア指数ともに前年同期比がFRBの物価目標(2%)を依然として大幅に上回っているものの、前期比、前年同期比ともに低下が続いており、物価上昇圧力の緩和基調が持続していることを確認した。
(図表9)米国の名目と実質の成長率/(図表10)米国のPCE価格指数伸び率
 
2 現在、FOMCのメンバーは四半期に一度物価見通しを公表しており、そこで物価の指標として採用されている指数がPCE価格指数とコアPCE価格指数である。見通しは年単位で、各年の10-12月期における前年同期比が公表されている。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年01月27日「経済・金融フラッシュ」)

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