2022年12月26日

米個人所得・消費支出(22年11月)-PCE価格の総合、コア指数ともに前月比、前年同月比が前月から低下

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得が市場予想を上回る一方、個人消費は市場予想を下回る

12月23日、米商務省の経済分析局(BEA)は11月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.4%(前月:+0.7%)と前月から低下した一方、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.3%を上回った(図表1)。個人消費支出は前月比+0.1%(前月改定値:+0.9%)と+0.8%から上方修正された前月を大幅に下回ったほか、市場予想の+0.2%も下回った。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は横這い(前月:+0.5%)と前月、市場予想の+0.1%を下回った(図表5)。貯蓄率1は2.4%(前月:2.2%)と前月から+0.2%ポイント上昇した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.1%(前月改定値:+0.4%)と+0.3%から上方修正された前月を下回った一方、市場予想(+0.1%)に一致した。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.2%(前月改定値:+0.3%)と+0.2%から上方修正された前月を下回った一方、市場予想(+0.2%)に一致した(図表6)。前年同月比は総合指数が+5.5%(前月改定値:+6.1%)と+6.0%から上方修正された前月を下回った一方、市場予想(+5.5%)に一致した。コア指数は+4.7%(前月:+5.0%)と前月を下回った一方、市場予想(+4.6%)は上回った(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:インフレ上昇圧力の緩和を確認

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 11月の個人消費(前月比)は財消費の落ち込みから+0.1%と10月の+0.9%から大幅に低下した(図表1)。実質ベースでは横這いとかろうじてプラスを維持したものの、22年7月以来の低い伸びとなっており、高い伸びとなった前月の反動もあって11月は個人消費の伸びにブレーキがかかった。

一方、個人所得(前月比)は労働需給の逼迫を背景にした賃金・給与の堅調な伸びを維持したこともあって、前月から鈍化も底堅い伸びが続いている。この結果、貯蓄率は4ヵ月ぶりに小幅な上昇に転じた。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数は総合指数、コア指数ともに前月比、前年同月比ともに前月から低下しており、物価上昇圧力が緩和していることを示した。もっとも、前年同月比の水準は依然としてFRBの物価目標(2%)を大幅に上回っており、利上げ幅を縮小しながら金融引締めを継続していくFRBの金融政策方針を正当化する内容と言えよう。

3.所得動向:賃金・給与が堅調を維持

11月の個人所得(前月比)は自営業所得が▲0.2%(前月:▲0.2%)と前月に続いてマイナスとなったほか、移転所得が+0.3%(前月:+1.6%)、利息配当収入が+0.5%(前月:+1.0%)と伸びが鈍化した(図表2)。一方、賃金・給与が+0.5%(前月:+0.5%)と前月並みの堅調な伸びを維持した。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、11月の名目が+0.4%(前月:+0.7%)と前月から伸びが鈍化した(図表3)。また、価格変動の影響を除いた実質ベース(前月比)も+0.3%(前月:+0.4%)となり、こちらも伸びが鈍化した。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:自動車関連消費が大幅に減少

11月の名目個人消費(前月比)は、サービス消費が+0.7%(前月:+0.7%)と前月並みの堅調な伸びを維持した一方、財消費が▲1.0%(前月:+1.2%)とマイナスに転じて全体を押し下げた(図表4)。

財消費は、耐久財が▲2.3%(前月:+1.6%)と前月から大幅なマイナスに転じたほか、非耐久財も▲0.2%(前月:+1.0%)とこちらも小幅ながらマイナスに転じた。

耐久財では、自動車・自動車部品が▲5.1%(前月:+4.6%)と前月から大幅なマイナスに転じたほか、家具・家電が▲1.3%(前月:+0.4%)、娯楽財・スポーツカーも▲0.9%(前月:+0.2%)とマイナスに転じた。

非耐久財では、食料・飲料が+0.6%(前月:+0.6%)と前月並みの伸びを維持した一方、衣料・靴が▲0.5%(前月:▲0.3%)が2ヵ月連続マイナスとなったほか、ガソリン・エネルギーが▲3.3%(前月:+4.1%)と大幅なマイナスに転じて非耐久財消費全体を押し下げた。

サービス消費は、輸送サービスが▲3.1%(前月:+1.3%)と前月から大幅なマイナスに転じたほか、外食・宿泊が+1.1%(前月:+1.9%)と堅調も伸びが鈍化した。一方、住宅・公共料金が+0.8%(前月+0.7%)、娯楽サービスが+1.0%(前月:+0.7%)、医療サービスが+0.4%(前月:+0.5%)と前月並みの伸びを維持したほか、金融サービスが+1.3%(前月:▲0.2%)と前月からプラスに転じた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:食料品価格(前年同月比)は3ヵ月連続で低下

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲1.5%(前月:+2.5%)と前月からマイナスに転じた(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.3%(前月:+0.5%)と、こちらは前月から伸びが鈍化したものの、24ヵ月連続のプラスとなっており、前月比では食料品価格の上昇には歯止めがかかっていない。

前年同月比は、エネルギー価格指数が+14.3%(前月:+19.1%)と前月から伸びは鈍化も21ヵ月連続で2桁の上昇となった(図表7)。一方、食料品価格指数は+11.2%(前月:+11.6%)と65ヵ月連続のプラスとなったものの、3ヵ月連続で前月から低下した。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年12月26日「経済・金融フラッシュ」)

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