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- 米雇用統計(22年11月)-雇用者数および時間当たり賃金の伸びが市場予想を上回る
2022年12月05日
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1.結果の概要:雇用者数は市場予想を上回った一方、失業率は市場予想に一致
12月2日、米国労働統計局(BLS)は11月の雇用統計を発表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+26.3万人の増加1(前月改定値:+28.4万人)と+26.1万人から上方修正された前月を下回った一方、市場予想の+20.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)は大幅に上回った(後掲図表2参照)。
失業率は3.7%(前月:3.7%、市場予想:3.7%)と前月、市場予想に一致した(後掲図表6参照)。労働参加率2は62.1%(前月:62.2%、市場予想:62.3%)と前月からの上昇を見込んだ市場予想に反し、前月から▲0.1%ポイント低下した(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
失業率は3.7%(前月:3.7%、市場予想:3.7%)と前月、市場予想に一致した(後掲図表6参照)。労働参加率2は62.1%(前月:62.2%、市場予想:62.3%)と前月からの上昇を見込んだ市場予想に反し、前月から▲0.1%ポイント低下した(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
2.結果の評価:時間当たり賃金の加速など、労働需給の逼迫継続を示す結果
11月の非農業部門雇用者数(前月比)を受けて過去3ヵ月の月間平均増加ペースは27.2万人増となり、22年前半の平均である44.4万人増から明確に鈍化するなど労働市場の減速は続いている。もっとも、新型コロナ流行前(19年3月~20年2月)の平均である19.8万人増を大幅に上回る堅調な雇用増加が続いており、雇用増加ペースの鈍化は極めて緩やかに留まっている。
一方、11月の労働参加率は22年8月の62.4%から3ヵ月連続で低下するなど労働供給の回復は遅れており、堅調な労働需要を背景に労働需給の逼迫が続いていることを示唆している。
一方、11月の労働参加率は22年8月の62.4%から3ヵ月連続で低下するなど労働供給の回復は遅れており、堅調な労働需要を背景に労働需給の逼迫が続いていることを示唆している。

このようにみると、11月の雇用統計は雇用増加ペースの鈍化が緩やかに留まっているほか、賃金上昇率が加速するなど、労働需給の逼迫継続を示しており、FRBの大幅な金融引締めにもかかわらず、労働市場の減速ペースは非常に緩慢に留まっていることを示す結果と言えよう。
3.事業所調査の詳細:伸びは鈍化も、広範な業種で引き続き雇用は増加
事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+18.4万人(前月:+20.1万人)と前月から雇用の伸びは鈍化した(図表2)。

財生産部門は前月比+3.7万人(前月:+4.7万人)と前月から伸びが鈍化した。建設業が+2.0万人(前月:+0.9万人)と前月から伸びが加速した一方、製造業が+1.4万人(前月:+3.6万人)と伸びが鈍化した。
政府部門は前月比+4.2万人(前月:+3.6万人)と前月から伸びが加速した。内訳をみると、連邦政府が▲0.1万人(前月:+0.5万人)と減少に転じた一方、州・地方政府が+4.3万人(前月:+3.1万人)と伸びが加速して全体を押し上げた。
前月(10月)と前々月(9月)の雇用増加数(改定値)は前月が+28.4万人(改定前:+26.1万人)と+2.3万人上方修正された一方、前々月が+26.9万人(改定前:+31.5万人)と▲4.6万人下方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は▲2.3万人の下方修正となった(図表3)。
BLSの公表に先立って11月30日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+12.7万人(前月:+23.9万人、市場予想:20.0万人)と前月、市場予想を大幅に下回った。この結果、雇用増加ペースが前月から鈍化する傾向は変わらないものの、雇用の伸びが加速した政府部門を含まないこともあって、ADP社の統計における雇用増加ペースが雇用統計を大幅に下回った。
11月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が32.82ドル(前月:32.64ドル)となり、前月から+18セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.4時間(前月:34.5時間)とこちらは前月から▲0.1時間減少した。この結果、週当たり賃金は1,129.01ドル(前月:1,126.08ドル)と前月から増加した(図表4)。
BLSの公表に先立って11月30日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+12.7万人(前月:+23.9万人、市場予想:20.0万人)と前月、市場予想を大幅に下回った。この結果、雇用増加ペースが前月から鈍化する傾向は変わらないものの、雇用の伸びが加速した政府部門を含まないこともあって、ADP社の統計における雇用増加ペースが雇用統計を大幅に下回った。
11月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が32.82ドル(前月:32.64ドル)となり、前月から+18セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.4時間(前月:34.5時間)とこちらは前月から▲0.1時間減少した。この結果、週当たり賃金は1,129.01ドル(前月:1,126.08ドル)と前月から増加した(図表4)。
4.家計調査の詳細:労働参加率は3ヵ月連続で低下、労働供給の回復に遅れ
家計調査のうち、11月の労働力人口は前月対比で▲18.6万人(前月:▲2.2万人)と3ヵ月連続の減少となったほか、減少幅が拡大した。内訳を見ると、就業者数が▲13.8万人(前月:▲32.8万人)と減少幅は縮小したものの、2ヵ月連続で減少したほか、失業者数が▲4.8万人(前月:+30.6万人)と減少に転じて労働力人口を押し下げた。非労働力人口は+35.9万人(前月:+20.1万人)と3ヵ月連続の増加となった。これらの結果、労働参加率は62.1%と3ヵ月連続で▲0.1%ポイント低下しており、9月以降は労働供給の回復が遅れていることを示した(図表5)。
一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は11月が82.4%(前月:82.5%)とこちらも3ヵ月連続で低下した。男女の内訳は、男性が88.4%(前月:88.5%)と前月から▲0.1%ポイント低下したほか、女性が76.3%(前月:76.5%)とこちらは▲0.2%ポイント低下した。
失業率は50年ぶりの低水準である3.7%で前月から横這いとなっており、引き続き労働需給が逼迫している状況を示している。
一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は11月が82.4%(前月:82.5%)とこちらも3ヵ月連続で低下した。男女の内訳は、男性が88.4%(前月:88.5%)と前月から▲0.1%ポイント低下したほか、女性が76.3%(前月:76.5%)とこちらは▲0.2%ポイント低下した。
失業率は50年ぶりの低水準である3.7%で前月から横這いとなっており、引き続き労働需給が逼迫している状況を示している。
11月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は123.0万人(前月:116.5万人)と前月から+6.5万人の増加となった。一方、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは20.6%(前月:19.5%)と前月から+1.1%ポイント増加した(図表7)。平均失業期間は21.4週(前月:20.8週)と前月から+0.6週長期化した。
最後に、周辺労働力人口(150.4万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(368.5万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4は、11月が6.7%(前月:6.8%)と前月から▲0.1%ポイント低下した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+3.0%ポイント(前月:+3.1%ポイント)と前月から▲0.1%ポイント縮小した。
最後に、周辺労働力人口(150.4万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(368.5万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4は、11月が6.7%(前月:6.8%)と前月から▲0.1%ポイント低下した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+3.0%ポイント(前月:+3.1%ポイント)と前月から▲0.1%ポイント縮小した。
3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年12月05日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1824
経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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