2022年12月02日

米個人所得・消費支出(22年10月)-PCE価格のコア指数は前月比、前年同月比ともに前月から低下

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得は市場予想を上回る一方、個人消費は市場予想に一致

12月1日、米商務省の経済分析局(BEA)は10月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.7%(前月:+0.4%)と前月、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%を上回った(図表1)。個人消費支出は前月比+0.8%(前月:+0.6%)と前月を上回った一方、市場予想の+0.8%に一致した。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.5%(前月:+0.3%)とこちらも前月を上回った一方、市場予想の+0.5%に一致した(図表5)。貯蓄率1は2.3%(前月:2.4%)と前月から▲0.1%ポイント低下した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.3%(前月:+0.3%)と前月に一致、市場予想(+0.4%)は下回った。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.2%(前月:+0.5%)と前月、市場予想(+0.3%)を下回った(図表6)。前年同月比は総合指数が+6.0%(前月改定値:+6.3%)と+6.2%から上方修正された前月を下回った一方、市場予想(+6.0%)に一致した。コア指数は+5.0%(前月改定値:+5.2%)とこちらも+5.1%から上方修正された前月を下回った一方、市場予想(+5.0%)に一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:堅調な個人消費の持続を確認

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 個人消費(前月比)は8月の+0.7%、9月の+0.6%に続いて3ヵ月連続で堅調な伸びとなった(図表1)。また、インフレ高進にもかかわらず実質ベースでも過去3ヵ月はプラスの伸びを維持しており、FRBによる急激な金融引締めによっても堅調な個人消費が持続していることを確認する結果となった。

一方、個人所得(前月比)も10月は実質可処分所得がプラスに転じるなど、堅調な伸びとなったものの、個人消費の伸びを下回った結果、貯蓄率は4ヵ月連続の低下となっており、家計が貯蓄を取り崩して消費に回している状況が続いている。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数の前年同月比は総合指数が22年6月(+7.0%)をピークに概ね低下基調が持続しているほか、物価の基調を示すコア指数も10月は3ヵ月ぶりに低下しており、物価上昇圧力が緩和していることを示した。
この結果、12月のFOMC会合では当研究所の予想通りに利上げ幅が前回(11月)会合の0.75%から0.5%に縮小する可能性が高まったと言えよう。

3.所得動向:移転所得が押上げ

10月の個人所得(前月比)は自営業所得が横這い(前月:+0.3%)と前月から伸びが鈍化したほか、賃金・給与も+0.5%(前月:+0.6%)と小幅に鈍化した(図表2)。一方、利息配当収入が+1.0%(前月:+0.4%)と前月から伸びが加速したほか、移転所得が+1.6%(前月:▲横這い)と大幅なプラスに転じて全体を押し上げた。移転所得の増加は州による1回限りの還付付き税額控除によるもののようだ。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、10月の名目が+0.7%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速した(図表3)。また、価格変動の影響を除いた実質ベース(前月比)も+0.4%(前月:横這い)となり、こちらも伸びが加速した。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:自動車関連消費が大幅に増加

10月の名目個人消費(前月比)は、サービス消費が+0.5%(前月:+0.8%)と前月から伸びが鈍化した一方、財消費が+1.4%(前月:+0.4%)と伸びが大幅に加速して全体を押し上げた(図表4)。

財消費は、耐久財が+2.1%(前月:+0.5%)と前月から伸びが大幅に加速したほか、非耐久財も+1.1%(前月:+0.3%)とこちらも伸びが加速した。

耐久財では、家具・家電が+0.4%(前月:+0.1%)と前月から小幅に伸びが加速したほか、娯楽財・スポーツカーが+0.8%(前月:+0.8%)と前月並みの堅調な伸びを維持したことに加え、自動車・自動車部品が+5.2%(前月:+0.6%)と大幅に伸びが加速して耐久財消費全体を押し上げた。

非耐久財では、衣料・靴が▲0.2%(前月:+1.1%)と前月に大きく伸びた反動もあってマイナスに転じた一方、食料・飲料が+0.9%(前月:+0.8%)と小幅に伸びが加速したほか、ガソリン・エネルギーが+4.1%(前月:▲3.0%)と大幅なプラスに転じて非耐久財消費全体を押し上げた。

サービス消費は、外食・宿泊が+2.1%(前月:+1.3%)、娯楽サービスが+0.7%(前月:+0.2%)、医療サービスが+0.5%(前月:+0.4%)と前月から伸びが加速した一方、輸送サービスが+0.9%(前月:+2.7%)、住宅・公共料金が+0.7%(前月+0.9%)と伸びが鈍化したほか、金融サービスが▲1.2%(前月:▲0.9%)と2ヵ月連続でマイナスとなったほか、前月からマイナス幅が拡大した。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:食料品価格(前年同月比)は2ヵ月連続で低下

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+2.5%(前月:▲2.4%)と4ヵ月ぶりにプラスに転じた(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.5%(前月:+0.6%)と、こちらは前月から伸びが鈍化したものの、23ヵ月連続のプラスとなっており、前月比では食料品価格の上昇には歯止めがかかっていない。

前年同月比は、エネルギー価格指数が+19.1%(前月:+20.9%)と前月から伸びは鈍化も20ヵ月連続で2桁の上昇となった(図表7)。一方、食料品価格指数は+11.6%(前月:+11.9%)と64ヵ月連続のプラスとなったものの、2ヵ月連続で前月から低下した。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年12月02日「経済・金融フラッシュ」)

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