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- 米FOMC(22年12月)-予想通り、利上げ幅を0.5%に縮小、政策金利見通しを上方修正
2022年12月15日
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1.金融政策の概要:政策金利の0.5%引上げを決定
米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が12月13-14日(現地時間)に開催された。FRBは政策金利の引上げ幅を前回会合(11月)の0.75%から0.5%に縮小させた。量的引締め政策の変更はなかった。
声明文では前回からの変更はほとんどなかった。また、「インフレ率を長期的に2%に戻すために十分に抑制的な金融政策スタンスを達成するためには目標レンジの継続的な引上げが適切であろう」との表現が維持され、利上げ継続方針を明確にした。
今回の金融政策方針は前回会合に続いて全会一致での決定となった。
FOMC参加者の経済見通し(SEP)は前回(9月)から、成長率見通しが下方修正されたほか、インフレと失業率見通しが上方修正された(後掲図表1)。
政策金利見通し(中央値)は、23年が前回の4.6%から5.1%に+0.5%ポイント上方修正された一方、24年が前回の3.9%から4.1%と+0.25%ポイントの上方修正に留まった結果、24年の利下げ幅は前回の▲0.75%ポイントから▲1.0%ポイントに拡大した。
声明文では前回からの変更はほとんどなかった。また、「インフレ率を長期的に2%に戻すために十分に抑制的な金融政策スタンスを達成するためには目標レンジの継続的な引上げが適切であろう」との表現が維持され、利上げ継続方針を明確にした。
今回の金融政策方針は前回会合に続いて全会一致での決定となった。
FOMC参加者の経済見通し(SEP)は前回(9月)から、成長率見通しが下方修正されたほか、インフレと失業率見通しが上方修正された(後掲図表1)。
政策金利見通し(中央値)は、23年が前回の4.6%から5.1%に+0.5%ポイント上方修正された一方、24年が前回の3.9%から4.1%と+0.25%ポイントの上方修正に留まった結果、24年の利下げ幅は前回の▲0.75%ポイントから▲1.0%ポイントに拡大した。
2.金融政策の評価:タカ派的な内容だが、大きなサプライズはない
パウエル議長が事前に示唆していたこともあり、政策金利の0.5%の引上げは予想通り。政策金利見通しの引上げも事前に示唆されていたが、当研究所は23年の政策金利の上方修正幅を0.25%ポイントと予想していたので、やや予想を上回った。一方、それ以外では声明文、パウエル議長の記者会見ともに大きなサプライズはなかったが、全般的にインフレ抑制優先のタカ派的な結果と言えよう。
パウエル議長の記者会見では、足元でインフレ率は低下しているものの、インフレの持続的な低下傾向を確信するには多くの証拠が必要だとしたほか、FOMC参加者のインフレ見通しには上振れリスクがあることを示し、インフレ動向次第では次回会合以降に今回示された政策金利見通しがさらに上方修正される可能性に言及した。
当研究所は、これまで政策金利の最終到達水準を4.75-5.0%と予想してきた。これは、来年に米国経済が景気後退に陥るなど、FOMC参加者より景気を悲観的にみていることを反映している。しかしながら、本日のFOMC会合がタカ派的となったことで当研究所が予想するマイルドな景気後退に陥っても、23年の政策金利を5%以上に引上げる可能性が高まったと言えよう。
パウエル議長の記者会見では、足元でインフレ率は低下しているものの、インフレの持続的な低下傾向を確信するには多くの証拠が必要だとしたほか、FOMC参加者のインフレ見通しには上振れリスクがあることを示し、インフレ動向次第では次回会合以降に今回示された政策金利見通しがさらに上方修正される可能性に言及した。
当研究所は、これまで政策金利の最終到達水準を4.75-5.0%と予想してきた。これは、来年に米国経済が景気後退に陥るなど、FOMC参加者より景気を悲観的にみていることを反映している。しかしながら、本日のFOMC会合がタカ派的となったことで当研究所が予想するマイルドな景気後退に陥っても、23年の政策金利を5%以上に引上げる可能性が高まったと言えよう。
3.声明の概要
(金融政策の方針)
(フォワードガイダンス)
(景気判断)
(景気見通し)
- 委員会はFF金利の目標レンジを3.75-4.00%に引き上げることを決定(今回削除)
- 委員会はFF金利の目標レンジを4.25-4.50%に引き上げることを決定(今回追加)
- 加えて、5月に公表された「連邦準備のバランスシート削減計画」に記載されている通り、財務省証券、エージェンシー債、エージェンシーの住宅ローン担保証券の保有を引き続き削減する(変更なし)
(フォワードガイダンス)
- 委員会は雇用の最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す(変更なし)
- インフレ率を長期的に2%に戻すために十分に抑制的な金融政策スタンスを達成するためには目標レンジの継続的な引上げが適切であろう(変更なし)
- 将来の目標レンジの引上げペースを決定する際、委員会は金融政策の累積的な引締め、金融政策が経済活動やインフレに影響を与える時間差、経済・金融情勢を考慮する予定である(変更なし)
- 金融政策の適切なスタンスを評価するにあたり、委員会は経済見通しに対する今後の情報の影響を引き続き監視する(変更なし)
- 委員会は目標の達成を妨げる可能性のあるリスクが生じた場合には、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある(変更なし)
- 委員会はインフレを2%の目標に戻すことに強くコミットしている(変更なし)
(景気判断)
- 最近の指標は消費と生産の緩やかな伸びを示している(変更なし)
- 雇用の伸びはこの数ヵ月堅調で、失業率は低いままだ(変更なし)
- パンデミックに関連する需給不均衡、食料品とエネルギー価格の上昇、より広範な価格圧力を反映してインフレは高止まりしている(変更なし)
(景気見通し)
- ロシアの対ウクライナ戦争は、多大な人的および経済的困窮を引き起こしている(変更なし)
- 戦争とそれに関連する出来事は、インフレ上昇圧力の一因となっており、世界経済に重くのしかかっている(戦争とそれに関連する出来事に関して、前回の「インフレにさらなる上昇圧力をかけ」”are creating additional upward pressure on inflation”から「インフレ上昇圧力の一因となっている」”are contributing to upward pressure on inflation”に表現変更)
- さらに、中国における新型コロナウイルス関連のロックダウンは、サプライチェーンの混乱を悪化させる可能性が高い(変更なし)
4.会見の主なポイント(要旨)
記者会見の主な内容は以下の通り。
- パウエル議長の冒頭発言
- 本日、FOMCは政策金利を0.5%ポイント引上げた。我々はインフレ率を長期的に2%に戻すのに十分な金融政策スタンスを達成するために、継続的な引上げが適切であると引続き考えている。
- 米国経済は昨年の急速なペースから大きく減速している。経済予測の要約で示したように、今年と来年の実質GDP成長率の予測中央値はわずか+0.5%で、長期的な正常成長率の予測中央値(1.8%)を大きく下回っている。
- 成長の鈍化にもかかわらず、労働市場は極めてタイトである。労働市場の需給バランスは依然として崩れており、需要が供給を大幅に上回っている。FOMC参加者は、労働市場の需給状況が時間の経過とともにより良く均衡するようになり、賃金や物価の上昇圧力が緩和されると予想している。
- インフレ率は長期的な目標である2%を大幅に上回っている。10月と11月物価の月次上昇率は歓迎すべき低下を示した。しかし、インフレが持続的な低下傾向にあるという確信を与えるためには、実質的に多くの証拠が必要だ。
- インフレを抑制するには、トレンドを下回る成長を持続させ、労働市場の状況をある程度軟化させる必要があるだろう。歴史的記録は、時期尚早な政策緩和を強く戒めている。我々は仕事が完了するまで、その方針を維持する。
- 主な質疑応答
- (11月のFOMC会合以降、金融環境が緩和しているが、これはインフレとの闘いにおけるFRBの努力にとって問題になるか)全般的な金融情勢がインフレ率を2%に引き下げるために導入している引締め政策を反映し続けることが重要だ。我々の焦点は短期的な動きではなく、持続的な動きだ。我々の判断では、まだ十分に制限的な政策スタンスではないので、継続的な利上げが適切だと予想している。
- (23年の利上げペースについて)今年に入ってからインフレの強さと持続性を目の当たりにした時、迅速に動きことが必要だった。実際に、そのスピードとぺースが最も重要だった。今年も終わりに近づき、今年425ベーシスポイントを引上げ、制限的な領域に入った今は、最終的な水準や何時まで利上げを続けるかが重要となっている。最終的にどの程度まで政策金利を引上げるかという問題は、インフレに対する進捗状況や金融情勢をみて、政策が十分に制限的か評価することになる。次回会合から0.25%刻みで動くことは理にかなっている。今やるべきことはゆっくりとしたペースに移行することが適切だと考えている。
- (FRBは失業率の1%上昇を見込んでいるが、これは景気後退を予想しているのではないのか)FOMC参加者の成長率見通しは+0.5%とトレンド成長率を大幅に下回るものの、プラス成長を見込んでおり、景気後退とは言えない。失業率の4.7%という水準は依然として強い労働市場を示している。
- (失業率の予想を引上げた理由は何か)労働市場の動きを反映したものではない。それよりもインフレ率の低下が予想を下回ったことで政策金利見通しが上方修正された影響が大きい。労働市場は強い。労働力不足は構造的なもので労働力の需要に対して働ける人が400万人不足している。
- (23年に利下げに転じる可能性について)今、我々が重視しているのはインフレ率を長期的に2%の目標まで回復させるために、政策スタンスを十分に引締め的なものにすることだ。金利引下げではない。そして、暫くは制限的な政策スタンスを維持しなければならないと考えている。歴史的な経験から早まった政策緩和には注意を払う必要がある。インフレ率が持続的に2%まで低下していると委員会が確信するまでは利下げを検討することはない。
5.FOMC参加者の見通し

この結果、23年の利上げ幅の予想は+0.75%ポイント(前回:+0.25%ポイント)となった一方、24年の利下げ幅は▲1.0%ポイント(前回:▲0.75%ポイント)と▲0.25%ポイント拡大した。
なお、23年のドットチャートをみるとFOMC参加者19名のうち、17名が5%以上の政策金利水準を予想している。パウエル議長はインフレ次第で政策金利見通しがさらに上方修正される可能性を示唆しており、23年の利上げ幅が0.75%ポイントから拡大する可能性も燻っている。
最後に長期見通しは2.5%(前回2.5%)と前回からの変更はなかった。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年12月15日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1824
経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
窪谷 浩のレポート
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