2022年12月21日

米住宅着工・許可件数(22年11月)-着工件数は3ヵ月連続減少、市場予想は上回る

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:住宅着工は市場予想を上回る一方、許可件数は市場予想を大幅に下回る

12月20日、米国センサス局は11月の住宅着工、許可件数を発表した。住宅着工件数(季節調整済、年率)は142.7万件(前月改定値:143.4万件)と142.5万件から上方修正された前月を下回った一方、市場予想の140.0万件(Bloomberg集計の中央値)を上回った(図表1、図表3)。

着工許可件数(季節調整済、年率)は134.2万件(前月改定値:151.2万件)と152.6万件から下方修正された前月、市場予想の148.0万件を下回った(図表2、図表5)。
(図表1)住宅着工件数/(図表2)住宅着工許可件数

2.結果の評価:着工・許可件数ともに戸建て住宅の不振が継続

住宅着工件数の伸びは前月比▲0.5%(前月▲2.1%)と減少幅は縮小したものの、3ヵ月連続のマイナスとなった(図表3)。集合住宅が+4.9%(前月:▲0.2%)とプラスに転じた一方、戸建てが▲4.1%(前月:▲3.4%)と3ヵ月連続でマイナスとなったほか、減少幅が拡大して全体を押し下げた(図表4)。

前年同月比は▲16.4%(前月:▲8.3%)と7ヵ月連続のマイナスとなったほか、減少幅が大幅に拡大した。内訳をみると、集合住宅が+23.3%(前月:+18.0%)と4ヵ月連続で2桁の伸びを維持したものの、戸建てが▲32.1%(前月:▲20.0%)と7ヵ月連続でマイナスとなったほか、減少幅が大幅に拡大して全体を押し下げた。

地域別寄与度(前月比)は、南部が+0.1%ポイント(前月:+3.1%ポイント)と2ヵ月連続プラス、西部が+1.8%ポイント(前月:▲3.5%ポイント)とプラスに転じた。一方、中西部が▲1.0%ポイント(前月:+1.4%ポイント)とマイナスに転じたほか、北東部が▲1.3%ポイント(前月:▲3.1%ポイント)と3ヵ月連続のマイナスとなるなど、マチマチの結果となった。
(図表3)住宅着工件数(伸び率)/(図表4)住宅着工件数前月比(寄与度)
先行指標である住宅着工許可件数は、前月比▲11.2%(前月:▲3.3%)と2ヵ月連続のマイナスとなった(図表5)。戸建てが▲7.1%(前月:▲3.3%)と9ヵ月連続でマイナスとなったほか、集合住宅も▲16.4%(前月:▲3.3%)と2ヵ月連続でマイナスとなった(図表6)。

前年同月比は▲22.4%(前月:▲11.0%)と4ヵ月連続でマイナスとなったほか、減少幅が拡大した。集合住宅が▲9.2%(前月:+8.1%)とマイナスに転じたほか、戸建てが▲29.7%(前月:▲21.9%)と9ヵ月連続のマイナスとなって全体を押し下げた。
(図表5)住宅着工許可件数(伸び率)/(図表6)住宅着工許可件数前月比(寄与度)
(図表7)住宅市場指数(項目別) 一方、全米建設業協会(NAHB)による戸建て新築住宅販売のセンチメントを示す住宅市場指数は、12月が31(前月:33)と12カ月連続で低下し、20年4月以来の水準に悪化したほか、小幅な改善を見込んだ市場予想の34も下回った(図表7)。内訳は販売現況が36(前月:39)と前月から低下した一方、客足が20(前月:20)と横這いとなったほか、販売見込みが35(前月:31)と改善するなど、まちまちの結果となった。

NAHBのプレスリリースは「高い住宅ローン金利、インフレ率をはるかに上回る建設費の上昇、値ごろ感の悪化による消費者需要の低迷が、22年の建設業者センチメントを毎月引き下げた」ことを指摘した。一方、同リリースでチーフエコノミストのディーツ氏は、住宅市場指数の低下幅が過去6ヵ月で最小となったことに触れ、住宅ローン金利が足元で一頃より低下していることから、建設業者センチメントの低下サイクルが底に近づいている可能性を示唆した。もっとも、FRBによる金融引締めの継続が見込まれる中、戸建てを中心に住宅需要の本格的な回復は当面見込み難いだろう。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2022年12月21日「経済・金融フラッシュ」)

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