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- 米雇用統計(22年12月)-時間当たり賃金の伸びが鈍化したほか、前月分も下方修正
2023年01月10日
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1.結果の概要:雇用者数は市場予想を上回ったほか、失業率は市場予想を下回る
1月6日、米国労働統計局(BLS)は12月の雇用統計を発表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+22.3万人の増加1(前月改定値:+25.6万人)と+26.3万人から下方修正された前月を下回った一方、市場予想の+20.5万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)は大幅に上回った(後掲図表2参照)。
失業率は3.5%(前月改定値:3.6%、市場予想:3.7%)と3.7%から下方修正された前月、市場予想を下回った(後掲図表6参照)。労働参加率2は62.3%(前月改定値:62.2%、市場予想:62.2%)と62.1%から小幅上方修正された前月、市場予想を上回った(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
失業率は3.5%(前月改定値:3.6%、市場予想:3.7%)と3.7%から下方修正された前月、市場予想を下回った(後掲図表6参照)。労働参加率2は62.3%(前月改定値:62.2%、市場予想:62.2%)と62.1%から小幅上方修正された前月、市場予想を上回った(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
2.結果の評価:堅調な雇用増加が持続する一方、賃金上昇の伸びは鈍化
12月の非農業部門雇用者数(前月比)を受けて過去3ヵ月の月間平均増加ペースは24.7万人増となり、22年の平均である37.5万人増、21年の平均である56.2万人増からの鈍化が続いている。もっとも、新型コロナ流行前(19年3月~20年2月)の平均である19.8万人増を大幅に上回っており、依然として堅調な雇用増加が持続していることを確認した。
一方、失業率が1969年12月以来の水準に低下するなど労働需給の逼迫は継続しているものの、労働参加率は3ヵ月ぶりに上昇に転じており、12月は労働供給の回復を示した。
一方、失業率が1969年12月以来の水準に低下するなど労働需給の逼迫は継続しているものの、労働参加率は3ヵ月ぶりに上昇に転じており、12月は労働供給の回復を示した。

このようにみると、12月の雇用統計は依然として堅調な雇用増加が持続しているほか、労働需給の逼迫が継続しているものの、賃金上昇圧力は緩和していることを確認する結果と言えよう。このため、1月12日発表予定の12月の消費者物価指数で物価上昇圧力の緩和が確認できれば、1月31日から2月1日にかけて行われる次回のFOMC会合で利上げ幅が前回の0.5%から0.25%に一段と縮小される可能性が高まろう。
3.事業所調査の詳細:民間部門の雇用の伸びは加速も政府部門の伸びが大幅に鈍化
事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+18.0万人(前月:+17.5万人)と概ね前月並みの伸びを維持した(図表2)。

財生産部門は前月比+4.0万人(前月:+2.7万人)と前月から伸びが加速した。製造業が+0.8万人(前月:+0.8万人)と前月並みの伸びを維持したほか、建設業が+2.8万人(前月:+1.5万人)と伸びが加速して財生産部門全体を押し上げた。
政府部門は前月比+0.3万人(前月:+5.4万人)と前月から大幅に伸びが鈍化した。内訳をみると、連邦政府が+0.1万人(前月:+0.2万人)と前月並みの伸びを維持した一方、州・地方政府が+0.2万人(前月:+5.2万人)と大幅に伸びが鈍化した。
前月(11月)と前々月(10月)の雇用増加数(改定値)は前月が+25.6万人(改定前:+26.3万人)と▲0.7万人下方修正されたほか、前々月が+26.3万人(改定前:28.4万人)と▲2.1万人下方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は▲2.8万人の下方修正となった(図表3)。
BLSの公表に先立って1月5日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+23.5万人(前月改定値:+18.2万人、市場予想:15.0万人)と+12.7万人から大幅に上方修正された前月、市場予想を上回った。ADP社の統計は雇用統計とは異なり、大幅に雇用の伸びが鈍化した政府部門は含んでおらず、民間部門で雇用の伸びが加速した雇用統計と概ね整合的な結果となった。
12月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が32.82ドル(前月:32.73ドル)となり、前月から+9セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.3時間(前月:34.4時間)とこちらは前月から▲0.1時間減少した。この結果、週当たり賃金は1,125.73ドル(前月:1,125.91ドル)と11ヵ月ぶりに前月から減少した(図表4)。
BLSの公表に先立って1月5日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+23.5万人(前月改定値:+18.2万人、市場予想:15.0万人)と+12.7万人から大幅に上方修正された前月、市場予想を上回った。ADP社の統計は雇用統計とは異なり、大幅に雇用の伸びが鈍化した政府部門は含んでおらず、民間部門で雇用の伸びが加速した雇用統計と概ね整合的な結果となった。
12月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が32.82ドル(前月:32.73ドル)となり、前月から+9セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.3時間(前月:34.4時間)とこちらは前月から▲0.1時間減少した。この結果、週当たり賃金は1,125.73ドル(前月:1,125.91ドル)と11ヵ月ぶりに前月から減少した(図表4)。
4.家計調査の詳細:労働参加率は3ヵ月ぶりに上昇
家計調査のうち、12月の労働力人口は前月対比で+43.9万人(前月:▲11.9万人)と前月から大幅な増加に転じた。内訳を見ると、失業者数が▲27.8万人(前月:▲5.3万人)と減少幅が拡大した一方、就業者数が+71.7万人(前月:▲6.6万人)と大幅な増加に転じて労働力人口を押し上げた。非労働力人口は▲30.3万人(前月:+29.1万人)と4ヵ月ぶりに減少に転じた。これらの結果、労働参加率は62.3%と3ヵ月ぶりに上昇に転じた(図表5)。
一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は12月が82.4%(前月:82.3%)とこちらも4ヵ月ぶりに上昇に転じた。男女の内訳は、男性が88.5%(前月:88.4%)、女性が76.4%(前月:76.3%)と前月からそれぞれ+0.1%ポイント上昇した。
なお、12月の家計調査では季節調整係数の見直しにより、18年1月以降の統計が改訂されたが、22年の失業率では11月分が3.7%から3.6%に▲0.1%ポイント下方修正されたほかは、小数第1位までの変更は無かった(図表6)。
一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は12月が82.4%(前月:82.3%)とこちらも4ヵ月ぶりに上昇に転じた。男女の内訳は、男性が88.5%(前月:88.4%)、女性が76.4%(前月:76.3%)と前月からそれぞれ+0.1%ポイント上昇した。
なお、12月の家計調査では季節調整係数の見直しにより、18年1月以降の統計が改訂されたが、22年の失業率では11月分が3.7%から3.6%に▲0.1%ポイント下方修正されたほかは、小数第1位までの変更は無かった(図表6)。
12月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は106.9万人(前月:121.5万人)と前月から▲14.6万人の減少となった。一方、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは18.5%(前月:20.3%)と前月から▲1.8%ポイント低下した(図表7)。平均失業期間は19.5週(前月:21.4週)と前月から▲1.9週短期化した。
最後に、周辺労働力人口(126.0万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(387.8万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4は、12月が6.5%(前月:6.7%)と前月から▲0.2%ポイント低下した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+3.0%ポイント(前月:+3.1%ポイント)と前月から▲0.1%ポイント縮小した。
最後に、周辺労働力人口(126.0万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(387.8万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4は、12月が6.5%(前月:6.7%)と前月から▲0.2%ポイント低下した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+3.0%ポイント(前月:+3.1%ポイント)と前月から▲0.1%ポイント縮小した。
3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年01月10日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1824
経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
窪谷 浩のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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