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重要なSDGsゴールは何?

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・サステナビリティ投資推進室兼任 高岡 和佳子
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1――重要視するゴールは人それぞれ
個人が重要視するゴールは、朝日新聞社によるアンケート(2017年~2021年の7回分)、埼玉県が県政サポーターを対象に行ったアンケート(2020年と2021年の2回分)、岐阜県が県政モニターを対象に行ったアンケート(2020年~2022年の3回分)、ケイティケイ株式会社によるアンケート(2022年の1回分)を参考にした。図表1は、ゴール別に全アンケートにおける順位を合算した値を基にランキングした結果である。なお、参考にした調査結果はいずれもインターネットの検索機能で上位に表示された調査結果であり、恣意的に選別はしていない。
当然、調査によって順位は異なる。アンケート実施時期に5年(2017年から2022年)の開きがあるが、時期による違いは案外小さい。2022年のウクライナ侵攻後で「16平和と公正をすべての人に」の順位が5ランク上昇した程度である。むしろ、居住地による相違の方が大きい。岐阜県と埼玉県の調査は、朝日新聞やケイティケイ株式会社による調査と比べて「14海の豊かさを守ろう」の順位が9ランク異なり、時期による差よりも大きな差がある。当然、身近な課題ほど関心を持ちやすいと考えられるので、いずれの県も海に面していないことが影響しているのかもしれない。このように調査によって多少の相違はあるが、さほど大きな相違はない。上位の「3すべての人に健康と福祉を」と「1貧困をなくそう」は、どの調査結果においても上位に位置しているし、下位のゴールも同様である。これより、図表1の結果は実態から大きく乖離していないと考えられる。
企業が重点的に取り組むゴールは、帝国データバンクによるアンケート調査(2020年~2022年の3回分)と一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(以下GCNJ)の会員を対象に行ったアンケート調査(2017年~2021年の5回分)を参考にした。個人と同じ方法で集計した結果を図表1に示している。個人では1位の「3すべての人に健康と福祉を」は企業でも5位と高位だが、個人では2位の「1貧困をなくそう」が企業では14位と低く、企業では1位の「8働きがいも経済成長も」が個人では12位と低い。このように、個人と企業では重要視するゴールがかなり異なることがわかる。
個人と同様に、企業も属性によって重要視するゴールは異なる。帝国データバングの調査対象企業数は2万社を超え、回答者の8割以上が中小企業である。これに対して、執筆時点におけるGCNJの会員数は525と少なく、会員には有名な大企業が多い。帝国データバングの調査結果とGCNJ会員を対象とした調査結果との間は特徴的な差がある。中小企業が含まれる帝国データバンクによるアンケート調査の方が、「1貧困をなくそう」の順位が5ランク高く、逆に「15陸の豊かさも守ろう」の順位が7ランク低い。個人では、「1貧困をなくそう」が上位で、「15陸の豊かさも守ろう」は相対的に下位なので、中小企業の方が個人の感覚に近いように思えるが、そんな単純な話ではない。個人では1位の「3すべての人に健康と福祉を」は中小企業が含まれる帝国データバンクによるアンケート調査の方が順位が低い。
地方公共団体が重点的に取り組むゴールは、自治体SDGs推進評価・調査検討会によるアンケート調査(2018年~2021年の4回分)を参考にした。個人や企業と同じ方法で集計した結果を図表1に示している。個人では1位の「3すべての人に健康と福祉を」は地方公共団体でも2位と高位だが、個人では2位の「1貧困をなくそう」が地方公共団体では11位と低い。企業だけでなく、地方公共団体も個人とは重要視するゴールが異なるようだ。
順位相関という尺度で、3つの経済主体間が重要視するゴールの順位の関係性を定量的に評価すると、企業と地方公共団体との間には正の相関関係があるのに対し、個人と地方公共団体との間はほぼ無関係である。個人と企業との間は非常に弱いが負の相関関係がある。
2――日本の取組状況
重要視されているから順調に改善しているのか、順調に改善しているから重要視されているのか、因果関係までは分からないが、大きな課題が残っていると評価されているゴールほど、あまり重要視されていない傾向があり、その傾向は個人において最も強いのである。
3――資金供給者と資金需要者間の乖離を埋める
しかし、現状は資金供給者である個人と資金需要者である企業との間には差があり、また大きな課題が残っていると考えられているゴールほど、資金供給者である個人は重要視していない傾向がある。より良い社会の実現には、適切な投資がより良い社会に繋がることを資金供給者である個人が理解するだけでは不十分である。個人が適切に投資するためには、身近な社会課題だけでなく幅広い社会課題に対する理解も必要となる。国やマスコミだけでなく企業を含めた数多くの主体が、注目されていない社会課題の重要性を発信・共有し、資金需要者が解決したい社会課題の重要性をより分かりやすく伝えることが不可欠なのではないだろうか。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年01月20日「基礎研レター」)

03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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