2023年01月18日

全国旅行支援の利用状況-「第11回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」より

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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■要旨
 
  • ニッセイ基礎研究所が20~74歳を対象に実施した調査によると、昨年末までの「全国旅行支援」の利用率は21.1%(うち複数回利用は41.1%)で、「GoToトラベル」利用者の56.6%が「全国旅行支援」を利用している。属性別には、時間に比較的余裕のある未就学児のいる子育て世帯や高齢層、経済的に比較的余裕のある雇用者の管理職層や年収600万円以上で多い。
     
  • 「全国旅行支援」を利用した理由は、最多は「割引額が魅力的だから」(55.9%)、次いで「クーポン券が魅力的だから」(45.7%)、「行きたい地域があったから」(38.1%)、「そろそろ旅行へ行きたいと思っていたから」(36.6%)までが3割を超えて続く。
     
  • 属性別には、性年代やライフステージ、職業別に見ても上位は同様だが、子育て世帯は割引額の魅力を強く感じ、高齢層は目的地が対象であることも重視する傾向がある。一方、世帯年収1,000万円~1,200万円未満の首位は「そろそろ旅行へ行きたいと思っていたから」であり、他層は割引をきっかけに旅行を考えた一方、高収入層はもともとあった旅行需要を施策が後押ししたといったプロセスの違いがあるようだ。
     
  • 「全国旅行支援」を利用しない理由は、最多は「経済的な余裕がないから」(29.6%)、次いで「(新型コロナウイルスに対する)感染不安から、外出を控えているから」(21.5%)、「国内の感染者数が増えているから」(20.3%)までが2割を超えて続く。また、「特に理由はない」(19.3%)も約2割を占めて目立つ。
     
  • 属性別に見ても上位に経済的余裕のなさがあがるものが多いが、高齢層では感染不安による外出自粛、子育て世帯や経営者や雇用者では「スケジュールがあわなかったから」、高収入層では「特に行きたい・泊まりたいと思っていなかったから」が上位を占める。
     
  • 政府の需要喚起策の利用者には偏りがあるが、動かせる消費を動かすことで雇用を改善し、日本経済を活性化させる必要がある。また、足元の物価高進行下では経済的に余裕のある世帯でも負担は生じており、観光需要が一旦落ち着いた後は全体として節約志向の強い生活防衛色の強い消費行動が色濃くあらわれる可能性がある。ここで、個人消費縮小させないためには今後の賃上げの状況が非常に重要である。


■目次

1――はじめに~政府による観光需要の喚起策「全国旅行支援」の利用状況は?
2――「全国旅行支援」の利用状況い
 ~利用率は約2割、時間や経済的な余裕のある層で利用が多い
  1|全体の状況
   ~2022年末までの利用率は21.1%、うち41.1%が複数回利用の積極層
  2|「GoToトラベル」利用経験別の状況
   ~「GoToトラベル」利用者の56.6%が「全国旅行支援」を利用
  3|性年代やライフステージ別の状況
   ~時間に余裕のある未就学児の子育て世帯や高齢層で利用が多い
  4|職業別や年収別の状況
   ~経済的に比較的余裕のある管理職層や年収600万円以上などで利用が多い
  5|コロナ禍の不安別の状況
   ~経済的に不安のない層で利用が多い、感染不安による大きな差異はなし
3――「全国旅行支援」を利用した理由
 ~お得感は子育て世帯で強く、高収入層の旅行需要の後押しにも
  1|全体の状況
   ~最多は割引額の魅力で過半数、次いでクーポン、そろそろ旅行へ行きたかったも3割超
  2|性年代やライフステージ別の状況
   ~子育て世帯は割引額の魅力を強く感じ、高齢層は目的地も重視
  3|職業や年収別の状況
   ~高収入層は割引がきっかけというより、もともと旅行需要があり、施策が後押し
4――「全国旅行支援」を利用していない理由
 ~経済的余裕のなさ、高齢層は感染不安、雇用者等は日程
  1|全体の状況
   ~最多は「経済的な余裕がないから」で29.6%、次いで感染不安が約2割
  2|性年代やライフステージ別の状況
   ~高齢層は感染不安、子育て世帯は経済的余裕のなさと日程あわず
  3|職業や年収別の状況
   ~低収入層は経済的余裕のなさ、高収入層は希望なし、雇用者等は日程あわず
5――おわりに~動かせる消費を動かし雇用改善させ日本経済を活性化、賃上げ重要
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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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