2022年12月20日

文字サイズ

3|豊岡市(兵庫県)のデイサービス車両を使った外出支援

▽心理的制約の緩和:顔見知りが相乗りする安心感
▽環境的制約の緩和:デイサービス車両による有償送迎の仕組み創設
▽経済的制約の緩和:既存の資源活用による追加コストの抑制、相乗りによる利用料低減

兵庫県豊岡市は2021年9月から、デイサービスの送迎車両で、非通所日の利用者を有償でスーパーや病院などに送迎するオンデマンド送迎「ちょい乗り500」の実証実験を行っている。利用者がアプリ等で利用を申し込むと、専用システムが、近くを走行中の送迎車両にルート変更を指示し、デイサービスへの送迎ついでに、非通所日の利用者の送迎もしてくれるというものである。

導入の背景は、以下の通りである。豊岡市では2007年、路線バスが26路線中11路線を休止し、市は交通ネットワーク維持のために、循環バスや自家用有償旅客運送などを導入してきたが、介助が必要な高齢者等の移動手段は不足したままである。市社会福祉協議会が高齢者と障害者にヒアリング調査等を行ったところ、外出に「困っている」と「将来に不安がある」との回答割合がいずれも8割に上っていた。

高齢者が困っている内容としてては、「親族や友人に送り迎えを頼むのは気兼ねするから外出を我慢している」、「バスのステップを上がれない、カートを乗せられない」、「バス停までの坂道や道路横断が大変で、バスを利用できない」、「免許返納の必要性を認識しているが、生活のために返納に踏み切れない」などであった。これらへの対策が必要とされているものの、人口減少が進んでおり、今から新たな移動サービスを一から創り出すのは困難な状況であった。

一方で、市内を見渡すと、デイサービス施設や訪問看護ステーションなど、多数の福祉車両が入れ子状態で走行している。市が調べたところ、市内を走行する福祉車両は1日2,000トリップ(走行回数)にも上っていた。このようなことから、市内の交通事業や福祉事業の運送の在り方を見直し、送迎を効率化すると同時に、将来的には同じプラットフォームを活用して、様々な生活援助サービスも付加していくことができないかと考えたという。

「ちょい乗り500」は、前橋市の一般社団法人「ソーシャルアクション機構」のシステムを使用して、利用者からの予約と、近くを走行しているデイサービス車両とをマッチングするものだ。既存の送迎の仕組みを使用するため、大きな追加コストも必要ない。2021年9月から行っている実証実験では、対象エリアは公共交通が乏しい「日高地区」、運営時間はデイサービスが開業している平日の日中のみとした。対象者は、非通所日のデイサービス利用者で、利用料は1回500円。

昨年9月から2か月間の実績は、利用回数が延べ107回、リピート率は100%。参加したデイサービス事業所が1社、使用車両が2両に限られたため、申込があっても「近くに送迎車両が走行していない」との理由でマッチング不成立になった割合が4割に上ったという。マッチング率を向上するため、市は今後、参加事業所数を増やすという。また実証実験終了後も、恒常的なサービスとして継続できるように、国に制度化を要望する方針だという。
4|デイサービス施設「ひかりサロン蓮田」(埼玉県)の「ショッピングリハビリ」

▽身体的制約の緩和:買い物や交流を通じた介護予防、認知症予防
▽心理的制約の緩和:顔見知りが相乗りする安心感、「買い物」という目的作り、仲間との交流による「楽しみ」を提供
▽環境的制約の緩和:デイサービス車両による送迎
▽経済的制約の緩和:追加料金なし(介護サービス利用料に含まれる)

埼玉県蓮田市の「東武ストア蓮田マイン」2階にあるデイサービス施設「ひかりサロン蓮田」では、買い物を通じたリハビリ「ショッピングリハビリ」を行っている。地域の要介護高齢者等が送迎車両で施設に着いた後、スタッフや利用者同士で対話や体操をした後、館内をウォーキングし、スタッフが見守る中で、地下1階のスーパーへ移動して買い物まで行う。利用者の属性は、市内在住のチェックリスト該当者から、要介護2までの70歳~90歳代の高齢者。ケアプランに基づいて週1~3回利用している。デイサービスの場合、送迎費用はもともと介護保険の報酬単価の中に含まれているため、利用者が特別に料金を支払う必要はない。

ショッピングリハビリは、運営する「我が家カンパニーズ株式会社」が、パートナーである島根県雲南市の「株式会社ショッピングリハビリカンパニー」と協力して構築した仕組みだ。買い物をする際は、利用者は自身の杖やカートを使うこともあれば、ショッピングリハビリカンパニー社が開発したカートを用いることもある。スーパーの床は平らで、室温も管理されており、カートを持っていれば、歩行機能が低下してきた高齢者でも一人で歩行しやすく、リハビリに適しているという。日常生活の一コマとして自然に歩行訓練ができる上、商品を選ぶときや会計時には頭を使い、店員らと会話もするため、運動機能と認知機能の維持・向上にも良い影響を与えるという。

ひかりサロン蓮田では、1回のショッピングリハビリで、利用者約10人に対してスタッフが3、4人付き添い、利用者の状態に応じて、商品を棚から取ったり、カートからレジまで買い物を運んだりするのを手伝う。

我が家カンパニーズ株式会社によると、利用者はもともと閉じこもりやうつの傾向があったが、ショッピングリハビリを通じて社会参加するようになったことで、歩行スピードが速くなったり、気力がわいてうつや閉じこもりから脱却したりという効果が出ているという。ひかりサロン蓮田では、さらに気力を持ってもらえるように、旅行を企画したり、公益財団法人「日本漢字能力検定協会」が実施する漢字検定の会場認定を受けて、挑戦を勧めたりしている。

ただし、非通所日には利用者らは外出手段がないため、移動課題が解決された訳ではないという。通院の際はタクシーを利用する人が多いが、経済的負担は大きく、近くに住む息子や娘が仕事を休んで送迎と付き添いをする場合もあるという。
写真2 ひかりサロン蓮田のスタッフが付き添って買い物をする利用者
5|乗合タクシー「チョイソコ」を使った外出機会の創出

▽身体的制約の緩和:外出増加による心身機能の向上
▽心理的制約の緩和:健康づくりや娯楽などお出掛けの「楽しみ」を提供
▽環境的制約の緩和:乗合タクシーの運営
▽経済的制約の緩和:乗合タクシーによる低額な利用料、報酬付きイベントを企画

株式会社アイシン(愛知県刈谷市)が運営するAIオンデマンド乗合タクシー「チョイソコ」は、2018年に愛知県豊明市で運行開始したのを手始めに、北海道から九州まで全国に拡大し、2022年11月時点で、全国約40超の地域に導入されている。全国の多くの路線バスやコミュニティバスなどが赤字に苦しむ中、「チョイソコ」は、地域の事業所に停留所を設置する代わりに協賛金を支出してもらい、収益性を上げるスキームに注目が集まってきた。しかし、チョイソコのもう一つの大きな特徴は、地域の高齢者に、通院や買い物での利用に留まらず、継続的に利用してもらうために、そういった事業所や地元自治体等と協業して、高齢者が楽しめるイベントを継続的に実施している点にある。

これまでに開いてきたイベントは、ウォーキングや歴史ガイド、果物狩り、食事会、食と栄養の勉強会、運動教室、麻雀、歴史講座、サポカーや電動車椅子の乗車体験会など、屋内型から屋外型まで、多岐にわたる。他にも、高齢者をターゲットに事業展開する異業種企業と協業したベントも開いてきた。株式会社花王が高齢者向けの化粧体験イベントを企画し、会場までのチョイソコ利用料を無料にしたり、株式会社アシックスと協力して足にまつわる健康イベントを実施したり、といった具合である。チョイソコが、高齢者の外出目的を創出すると同時に、協業する企業の商品やサービスを宣伝する「媒体」にもなり、事業の持続可能性を向上しようというものである。

アイシンは今後、さらに多くの高齢者に外出を増やすため、参加することで「報酬」が得られるタイプの企画を検討しているという。昨年度は、岐阜県各務原市のハーブ農園で、ハーブを摘む農作業を手伝うと、温浴施設の無料利用券をもらえる企画を実施した。このような報酬型を今後、他の地域にも拡大するという。

このように、外出目的と外出手段を同時に提供してきたことで、実際に、利用者の外出が増え、心身機能の向上にも効果があることが分かってきた。昨年度、埼玉県入間市や地元の病院などと共同で行った実証実験では、普段外出機会が少ない高齢者らを対象に、イベントを多数開催したり、歩数に応じてポイントを付与したりする外出促進策を実施し、期間前後で、歩行速度や筋肉量、握力などを測定した。その結果、期間中に10回以上チョイソコを利用した積極活用グループは、20人中16人が数値が向上していたのに対し、利用回数が5回未満だった消極活用グループは、35人のうち17人が悪化していたという。

5――先進事例を地域に広げていくための要点

5――先進事例を地域に広げていくための要点

|多様なプレーヤーによる移動サービスの構築
4で述べてきた先進事例の要点を述べたい。一点目は、先進事例の実施主体から分かるように、多業種のプレーヤーが移動サービスに関与し、重層的に外出の手段と機会を提供していることである。

近年、地方を中心として人口減少が進み、コロナ禍で乗客減少が加速し、公共交通への需要は縮小していると認識されがちである。しかし高齢者向けの、小さい生活圏内を送迎するサービス、いわゆる末端交通に特定してみると、高齢者の増加によって、寧ろニーズは増加している。(上)で説明した「介護予防・日常生活圏域ニーズ調査」のランキング調査や、「在宅介護等実態調査」の全国集計の結果からも、そのことは明らかである。

このような状況に対して、これまで見てきたように、既存の公共交通事業者だけでニーズに応えるのは難しい。事業性の面でも、輸送だけで収支を合わせることは難しく、技術的にも、乗降時の介助や付き添いまでを、交通事業者だけで完結することは難しい。高齢者サービスに関わる様々な企業が、それぞれの強みを生かせる方法で、事業範囲を少しずつ拡張し、送迎までリーチすることが望ましいと言える。

従来の公共交通が担っていた都市間交通や都市内の幹線交通に比べれば、高齢者の移動は小さな範囲が多いため、地域との関連も、より濃いものだと言える。高齢者が積極的に外出するようになれば、消費が活性化し、地域の企業にとってもメリットが生まれる。

とは言え、交通以外の企業にとっては「送迎」というと距離感を感じるかもしれないが、運転業務を担うことができなくても、運営に協力する方法はいくつもある。例えば渋川市社会福祉協議会の「あいのり」では、地域のスーパーが協賛金を出して買い物支援に協力しており、ショッピングリハビリでは、「東武ストア蓮田マイン」がフロアの一部を「ひかりサロン蓮田」に貸し、リハビリの場としてスーパーを提供している。アイシンのチョイソコでは、地域ごとに多くの事業所がスポンサーとなったり、アイシンと協業したりして、運営を費用面で支えたり、外出機会を創出したりしている。

このように、地域の多業種の企業や団体に、送迎または運営協力を行ってもらうためには、まず、高齢者の外出促進と、それによる地域活性化という目標を共有し、対策を議論する場が必要となるだう。例えば最近では、自治体などが、地域の経済界とMaaSの会議体を設置する事例が増えているが、そのような場で「高齢者の外出」についてもテーマに掲げ、対策を協議していけると良いのではないだろうか。
|介護業界との連携の必要性
(1)で述べたことと重なるが、様々な業種の中でも、今後、特に重要になってくるのが介護業界の関与だと筆者は考えている。全国で「高齢者の高齢化」が進んでいるからである。

(上)でも述べたように、高齢者人口のうち「75歳以上」の後期高齢者は2020年で既に1,800万人を超え、65歳~74歳の前期高齢者(約1,700万人)を超えた。今後もその数は増加する見込みだが、中でも増加率が高いのが、「85歳以上」の高齢者である。国立社会保障・人口問題研究所の予測では、85歳以上人口は、2035年に1,000万人を超える見込みとなっている。例えば2020年の人口と2030年の予測人口を年齢階級別に比べると、前期高齢者と呼ばれる「65~74歳」は16%減、後期高齢者のうち「75~84歳」は19%増であるのに対し、「85歳以上」は37%増である。

(上)で説明したように、85歳以上になると、心身機能の衰えが進み、多くの人が日常活動動作(ADL)にも何らかの援助が必要になってくる。要介護率も男女ともに3~4割に上昇する。一口に「高齢化」と言っても、地域に65歳以上高齢者が増えることと、85歳以上高齢者が増えることでは、社会の様相に大きな違いがある。85歳以上高齢者が増えれば、今よりもっと多くの生活援助サービスが必要になることは目に見えている。移動サービスはその筆頭に挙げられるだろう。地域によって、人数や単身世帯の割合等に差があるため、ニーズに差はあると考えられるが、85歳以上高齢者の増加に備えて、どのような移動サービスを整備する必要があるかを、各地域で検討しておかなければならないだろう。

そして、介助が必要な高齢者に対する移動サービスを実施できるプレーヤーがどこにいるかと考えると、介護業界が筆頭に挙がるだろう。4でも述べた通り、デイサービス施設は全国に約5万か所、高齢化と人口減少が進んだ過疎地や離島にもある。数の上ではコンビニエンスストアに並ぶ存在である。しかも、送迎のための専用車両と仕組みを持っている施設が多い。そのうち意欲のある事業者が、送迎の対象範囲を地域の要介護高齢者等にまで拡張することができれば、高齢者の移動支援に大きな役割を果たすことができる。

4までに述べてきたことを整理すると、例えばベーシックな関わり方としては、ひかりサロン蓮田のショッピングリハビリのように、施設で運動した後に、近くのスーパーまで移動して、買い物を通じたリハビリをする方法もあるだろうし、あるいは、施設の駐車場に移動販売車を誘致して、利用者や地域の高齢者等の買い物の機会を提供する方法もあるだろう。そうすれば、少なくとも、生活に不可欠な「買い物」問題については解決できる。

次に、応用的な関わり方としては、兵庫県豊岡市の実証実験「ちょい乗り500」のように、非通所日の利用者や、地域に住む要介護高齢者等を、デイサービス施設送迎のついでに、病院やスーパーにも送迎する仕組みを構築する方法が考えられる。これをするには、実際には1)タクシー会社に送迎を委託、2)デイサービス施設が自前のリソースで送迎、の2種類の方法がある。

6――先進事例を各地域に広げていくための課題

6――先進事例を各地域に広げていくための課題

1|緑ナンバーと白ナンバーに対する法令の違い
次に、先進事例のような取組を、各地域で行っていく上での課題を述べたい。4で、多業種が移動サービスに関わること、とりわけ介護業界との連携が重要であることを述べたが、そこでネックになるのが法規制の壁である。3でも述べたように、現状では、デイサービス施設の送迎車両を始めとして、道路運送法の許可・登録を受けていない白ナンバーの送迎車両では、住民の有償送迎をすることはできない。

しかし現状として、豊岡市の実証実験エリアように「公共交通は殆ど無いが、介護・福祉の送迎車両は入れ子状態で走行している」という地域は全国にあるだろう。公共交通が無い地域にとっては、運転ができない住民の移動を担う、殆ど唯一の手段になるかもしれない。また、「85歳以上1,000万人時代」を控えた今、介助付きの送迎をできる数少ないプレーヤーでもある。

さらに近年は、白ナンバーであってもサポカーのような先進安全自動車が発達しており、逆に、緑ナンバーであっても高齢ドライバーが増えているため、それぞれの安全性を表す変数は、変化していると言える15。移動課題解決のために、地域の実情に応じて、柔軟な運用を検討しても良いのではないだろうか。
|介護業界の規模と体力
いずれにせよ、介護業界に移動支援に協力してもらうためには、大きな課題がある。先進事例として説明した「ちょい乗り500」の実証実験では、利用者からの満足度は大変高かったが、事業者の姿勢には濃淡が見られた。市が、デイサービス施設に参加を呼び掛けても、すぐに手を挙げた法人は1社のみだった。介護業界は中小零細企業が多く、新しい取組を行う余力が無いためである。地域で移動サービスのプラットフォームを構築しても、参加するデイサービス施設が少なければ、車両数も少ないため、送迎を希望する高齢者とのマッチングが成立しづらい。

従って、まずは地域の介護・福祉施設が課題意識を共有したり、利害を調整したりする場を持つことがスタートとなるだろう。送迎の他にも、不動産や設備の共有など、互いに連携すればメリットが得られることはあるだろう。豊岡市でも現在、市内の複数の介護施設が連携する動きがあるという。また香川県三豊市でも、複数の施設が、ダイハツ工業のシステムを使って共同送迎を始めている。送迎業務は中身が煩雑で、負担が大きいと言われており、中小零細の施設にとっても、共同送迎できるようになれば、それだけでも業務削減につながる。その上で、第二段階として、地域の高齢者の送迎まで拡張できるところが出てくるかもしれない。

また、2-3|で述べたように、現在は基本的に、タクシードライバーが乗客の介助をすることはないが、介助が必要な高齢者の増加に伴い、将来的に、地域によって、関与するタクシー会社が現れた場合には、デイサービス施設がドライバーに対し、介助に関する研修を実施する、というような協力の仕方も考えられる。

今後、85歳以上高齢者が増加すれば、移動に限らず、あらゆる業態のあらゆるサービスに、高齢者の介助や認知症ケアに関する知識や技能が必要となる時が来るだろう。「デイサービス施設はコンビニより数が多い」ともよく言われるが、デイサービス施設は、規模が小さい施設が多い点が弱点ではあるが、高齢者との接点を持ち、介助の知識とノウハウを持ち、さらにハードの施設・設備を持っている点は、超高齢社会の経済社会システムを深化させていく上で、大きな可能性でもあるだろう。

7――終わりに

7――終わりに

急激な高齢化により、国内の高齢化は今も進行しており、2035年には「85歳以上1,000万人時代」を迎える。このような中で、高齢者の移動課題は、年々深刻さを増している。高齢ドライバーによる死亡事故は年間300件を超え、高齢者の閉じこもりは増えている。高齢者の社会参加が減ると、地域の活気が失われる。

本稿では、そうした状況の打開策編として、高齢者の外出抑制の要因となっている身体的制約、心理的制約、環境的制約、経済的制約という四つの制約を緩和する方法について、先進事例を交えて説明してきた。大きく言えば、今後の方向性としては、経済的制約の緩和の中で述べた「シェア」が一つのキーワードになると筆者は考えている。これまでの業態や業種の垣根を越え、地域の様々なプレーヤーが、高齢者の外出促進、「気軽に外出できることにより、より豊かな生活を提供する」という目標をシェアし、それぞれの事業範囲に近いところで移動サービスをシェアしていく。それは結果的に、地域活性化、地域のサステイナビリティにつながっていくだろう。

特に、地域における白ナンバーの送迎と、緑ナンバーの運送の在り方を見直していくことは、今後、高齢者の移動に限らず、あらゆる移動サービスを存続していく上で、カギになるのでははないだろうか。旅客自動車運送事業や貨物自動車運送事業、事業者による白ナンバーの送迎、ボランティア送迎など、いずれの形態でも、ドライバー不足は極めて深刻だからである。事業者の壁、属性の壁を超えて「共同運行」、「共同送迎」を実現できれば、各事業所の経費削減や人手不足解消だけでなく、ドライバーの報酬引き上げや、先進安全車両や装置等への投資にもお金を回し、全体として運送・送迎の安全性向上につなげられる可能性もある。

高齢者の移動課題の解決と、ドライバー不足の解消、脱炭素、交通事故の低減など、重要な社会課題を解決していくためにも、属性を超えてあらゆる「移動」を見直し、全体最適を模索していくべきではないだろうか。
Xでシェアする Facebookでシェアする

生活研究部   准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任

坊 美生子 (ぼう みおこ)

研究・専門分野
中高年女性の雇用と暮らし、高齢者の移動サービス、ジェロントロジー

経歴
  • 【職歴】
     2002年 読売新聞大阪本社入社
     2017年 ニッセイ基礎研究所入社

    【委員活動】
     2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
     2023年度  日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員

(2022年12月20日「基礎研レポート」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【高齢化と移動課題(下)~打開策編~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

高齢化と移動課題(下)~打開策編~のレポート Topへ