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コロナ禍からの「移動」の再生について考える~不特定多数の大量輸送から、特定少数の移動サービスへ~
生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子
新型コロナウイルス感染拡大後、「移動」は変化している。人々の移動回数が減り、移動手段は公共交通からパーソナルな手段へとシフトが進んだ。旅客運送事業者の生産活動は低迷し、反対に、自動車小売業は回復基調にある。移動の減少によって、地域では対面サービスや旅行消費額が落ち込み、地域経済にも影響を与えている。また、高齢者にとっては、身体機能低下のリスクが増している。若い世代を中心に、新しい人と出会い、交流する機会も減り、孤独や孤立への不安も増している。
移動の変化をより深堀りすると、人々が移動に求める要素は、公共交通の代名詞である「不特定多数」から「特定少数」にシフトしていると言える。それがコロナ禍における人々の「安心感」を高めると考えられる。
今後、移動を回復していくために、筆者は次の三つが必要だと考える。第一に、移動が身体機能や精神面の健康を維持する上で重要だという事実を発信することである。第二に、交通事業者が、サービスをより「特定少数」に近づけて、安心感を高める工夫をすることである。第三は、人々に敢えて外出したいと思ってもらえるように、移動に付加価値をつけ、外出の動機付けをすることである。
移動の減少や交通事業者の経営悪化を「仕方ない物」として放置せず、移動の再生、基本的な人間関係や社会活動の復活を目指した取組が必要だろう。
■目次
1――はじめに
2――コロナ禍による移動の減少
1|国内における移動回数の減少
2|移動距離の短縮
3|高齢者の移動の減少
3――移動手段の変化~公共交通の減少、パーソナルな移動手段へのシフト~
4――人とモノの輸送や自走に関わる事業者への影響
1|旅客運送業の低迷と自動車小売業の回復基調
2|宅配貨物運送業の好調
3|旅客運送事業者の経営悪化
5――移動減少が個人と地域社会にもたらす影響
1|移動の減少による地域の経済社会への影響
2|高齢者の移動減少による身体機能低下リスク
3|人間関係の疎遠化と孤独、孤立の増加
6――「移動」に求められる要素の変化
1|不特定多数から「特定少数」へ
2|相乗りへの意識
3|「安全」と「安心」の違い
7――今後の移動サービスを考える
8――終わりに
(2022年03月31日「基礎研レポート」)
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03-3512-1821
- 【職歴】
2002年 読売新聞大阪本社入社
2017年 ニッセイ基礎研究所入社
【委員活動】
2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
2023年度 日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員
坊 美生子のレポート
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