2022年12月01日

宿泊旅行統計調査2022年10月~全国旅行支援の開始を受けて日本人延べ宿泊者数は大幅に回復

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1. 日本人延べ宿泊者数の2019年同月比は10ヵ月ぶりにプラスへ

観光庁が11月30日に発表した宿泊旅行統計調査によると、2022年10月の延べ宿泊者数は4,426万人泊となった。前年同月比は38.0%となり、新型コロナウイルスの影響が出る前の2019年同月比でみると、▲11.6%(9月:同▲19.2%)と2ヵ月連続でマイナス幅が縮小した。

2022年10月の日本人延べ宿泊者数は4,210万人泊となり、2019年同月比は5.8%(9月:同▲4.7%)と2021年12月以来、10ヵ月ぶりにプラスに転じた。10月11日から開始された全国旅行支援によって、国内旅行者が増加した結果、日本人延べ宿泊者数の2019年同月比は伸びを高めた。

2022年10月の外国人延べ宿泊者数は216万人泊となった。2019年同月比は、2020年4月以降、▲90%台で推移を続けていたが、10月11日から水際対策が緩和されたことで、10月は▲78.9%(9月:同▲90.1%)とマイナス幅が大きく縮小した。
延べ宿泊者数の推移(2019年同月比)/宿泊施設タイプ別客室稼働率推移
2022年10月の客室稼働率は全体で52.6%となった。2019年同月差では▲11.0%(9月:同▲13.9%)と2ヵ月連続でマイナス幅が縮小した。

宿泊施設タイプ別客室稼働率をみると、旅館は39.2%、2019年同月差▲0.3%(9月:同▲3.5%)、リゾートホテルは52.6%、2019年同月差▲5.2%(9月:同▲12.1%)、ビジネスホテルは61.9%、2019年同月差▲15.4%(9月:同▲16.7%)、シティホテルは59.6%、2019年同月差▲21.0%(9月:同▲25.0%)、簡易宿所は23.7%、2019年同月差▲9.0%(9月:同▲13.6%)であった。2019年同月差では、すべてのタイプの宿泊施設で9月からマイナス幅が縮小している。

2. 全国旅行支援の開始で宿泊者数は大幅に回復

10月は新型コロナウイルスの感染が落ち着ていたこと、全国旅行支援が開始されたこと、水際対策が緩和されたことを受けて、延べ宿泊者数及び客室稼働率は大幅に回復した。

全国旅行支援は東京都以外の道府県では10月11日、東京都では10月20日に開始された。制度概要は、旅行者が交通付の宿泊旅行一泊で最大8,000円、それ以外の旅行で最大5,000円の割引を受けられ、その地域で使用することができるクーポン券を受け取ることができるというものだ。クーポン券は観光需要を分散させるために、平日が3,000円、休日が1,000円となっている。なお、すべての都道府県でワクチンの3回接種証明書もしくは陰性証明書の提示が要件とされている。

さらに、11月25日には、今後の感染状況を見極めながら、年明け以降、割引率等の制度の見直しを行った上で、全国旅行支援が実施されることが発表された。割引は、交通付の宿泊旅行一泊で最大5,000円、それ以外の旅行で3,000円へ、クーポン券は平日2,000円、休日1,000円へと縮小される。なお、現在実施中の全国旅行支援は12月27日宿泊分(12月28日チェックアウト分)まで実施されることとなった。
全国旅行支援
11月30日現在、政府によって発表されている日本人のワクチン3回接種率は66.9%となっている。国民のおよそ3分の1は事前に検査を受けて陰性でなければ全国旅行支援を使うことはできないが、日本人延べ宿泊者数が大きく回復していることなどから、全国旅行支援が積極的に活用されていることが分かる。

年明け以降も全国旅行支援の実施が決定され、2023年入り後まで日本人延べ宿泊者数は回復していくことが見込まれる。ただし、新型コロナウイルス感染症の新規陽性者は10月半ば以降増加傾向にあり、感染者数の動向には引き続き留意する必要がある。

外国人延べ宿泊者数も回復傾向にある。この背景には、10月11日以降、個人旅行の解禁、短期滞在のビザ免除の再開、一日あたりの入国者数の上限撤廃など水際対策が緩和されたことがある。それに加えて足もとの円安も追い風となり、今後も外国人観光客数は回復していくことが見込まれる。

水際対策は緩和されたが、欧州の国々のようにすべての条件が撤廃され、完全にコロナ禍前に戻ったわけではない。有効なワクチン接種証明書がなければ、出国前72時間以内の検査での陰性証明書が引き続き必要であり、これが外国人観光客数の回復を阻害する可能性があるだろう。

また、コロナ禍前、外国人観光客のおよそ3分の1を占めていた中国だが、現在は厳しい水際対策を継続しているため、日本の水際対策に関わらず、中国人観光客の回復は見込めない状況となっており、注視すべきである。
 
 

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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

(2022年12月01日「経済・金融フラッシュ」)

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