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景気ウォッチャー調査(22年10月)~全国旅行支援でサービスを中心に景況感は改善。ただし、値上げ懸念で先行きに厳しい見方

山下 大輔
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1.景況感の改善が継続したが、先行きへの悲観的な見方が広がる
(注)調査期間中の10月28日に、政府の新たな経済対策(「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」が閣議決定され、「引き続き全国旅行支援等の国内需要喚起策の着実な実施やイベント支援などを通じて国内観光の活性化を図っていく」とされた。
2.景気の現状判断DI:飲食、サービスが大きく改善
<回答者のコメント>
- 10月11日に全国旅行支援がスタートして予約が殺到し、予約システムが数日間ダウンするなど、一度に予約が増加している(北陸・観光型旅館)
- 新型コロナウイルス感染症が落ち着いており、インバウンドや国内旅行に関しての規制緩和で活発に動き始めている。しかし、これから冬に向かって第8波が発生した場合は、状況が変わってくる(九州・タクシー運転手)
他方、住宅関連(前月差▲4.4ポイント低下の39.7、2か月ぶりの低下、25か月連続の50割れ)となった。資材価格の高騰や資材不足や、消費財の値上げによる家計の生活防衛意識の高まりがその背景にあるとみられる。
<回答者のコメント>
- 各種商品の値上げに伴い、客の間では買い控えの雰囲気が感じられる(近畿・住宅販売会社)
- ロシアのウクライナ侵攻に端を発して、世界的に資材、食材等が大幅に値上がりしている。建築関係でも資材高騰からなかなか仕事が決まらないというのが現状である(南関東・設計事務所)
雇用関連は、前月から大きく下落し、50を割り込んだ。円安や値上げによる影響に加え、求人数に対して求職者数が少ないことで採用が決まらないなどの人手不足もその背景にあるようだ。
<回答者のコメント>
- 新型コロナウイルス感染症、円安、原油高などの影響もあり、一部の企業で受注が落ち込み、残業がなくなったり契約が更新されなかったりするケースが少し増えてきている(南関東・人材派遣会社)
- シニア層や女性の求職者が増えてきている。物価高などの影響があると思われる。新規求人は前年比でプラスの状況ではあるが、増加幅は小さくなってきている。業種によってもばらつきが見られ、製造業は減少傾向にある一方、行動制限緩和や観光需要の高まりなどにより、卸小売業、飲食、サービス業では増加している(甲信越・職業安定所)
- 求人件数は3か月前から横ばいでも、求職者数が減少しているため採用数も減少している(東海・人材派遣会社)
3.景気の先行き判断DI:家計動向関連のサービス、飲食、雇用関連が大きく悪化
<回答者のコメント>
- 寒い冬には遍路の仕事がほぼ無くなる。全国旅行支援が終わると今より更に人の動きが悪くなると予想する。新型コロナウイルス感染症の終息時期も不透明であり、今より良くなることはない(四国・タクシー運転手)
- 12月に全国旅行支援が終了するとともに、国内の物価高による消費抑制があいまって、国内宿泊客の反動減があるとみている。インバウンド客は増加傾向にあるが、高級路線のホテルに集中しており、国内宿泊客の減少を補うことは難しいと考える(北陸・都市型ホテル)
- 必ず新型コロナウイルスの感染第8波は到来するほか、値上げの痛みが徐々に積み重なるため、景気は悪化する(近畿・その他飲食)
- これから原材料の価格高騰による値上げがあり、消費の落ち込みが予想される。全国旅行支援などはあるが、安くなっているから来客数が伸びているわけで、それが終われば買い控えをする人が多くなるとみている。中小企業にとっては一層厳しくなる(東北・高級レストラン)
なお、小売関連は前月差▲0.5ポイント低下の47.3、住宅関連は前月差0.1ポイント上昇の41.2と前月からほぼ横ばいの動きとなった。
雇用関連の落ち込みについては、原材料価格の高騰や円安による影響で企業の採用意欲が弱まることへの懸念が主な背景にある。加えて、求職者が集まらないことによる人手不足の深刻化も影響を与えている。
<回答者のコメント>
- 政府の景気対策はあっても局所的である。ここ最近のマイナス要素は改善されず、全体を浮揚させるまではいかない。人材不足感はあるが、採用についてもコストについても非常にシビアになっている(東海・新聞社)
- 求人数全体の伸びが鈍化している。飲食、宿泊業が増加している一方で、製造業、卸売、小売、医療、介護分野は減少に転じている。特に、製造業では原材料高で業績が落ち込んでいるとの声が多く聞かれる(南関東・職業安定所)
- 夕方から営業するような飲食店やアパレル業種の人手不足には厳しいものがあり、今後、営業を縮小するおそれもあることから、景気はやや悪くなる(北海道・求人情報誌)
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2022年11月09日「経済・金融フラッシュ」)
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