2022年11月01日

宿泊旅行統計調査2022年9月~新型コロナ感染者数の減少で、延べ宿泊者数は再び回復へ

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1. 延べ宿泊者数の2019年同月比は2ヵ月ぶりにマイナス幅が縮小

観光庁が10月31日に発表した宿泊旅行統計調査によると、2022年9月の延べ宿泊者数は3,914万人泊となった。前年同月比は71.9%となり、新型コロナウイルスの影響が出る前の2019年同月比でみると、▲19.7(8月:同▲25.0%)と2ヵ月ぶりにマイナス幅が縮小した。

7月から新型コロナウイルスの新規感染者が急拡大(第7波)したことで、宿泊旅行を自粛した人が多く、8月の延べ宿泊者数の2019年同月比はマイナス幅が拡大した。しかし、9月以降、新規感染者数は減少しており、2019年同月比は再びマイナス幅縮小となった。

2022年9月の日本人延べ宿泊者数は3,832万人泊となり、2019年同月比は▲5.4%(8月:同▲13.1%)と2ヵ月ぶりにマイナス幅が縮小した。

2022年9月の外国人延べ宿泊者数は82万人泊となった。2019年同月比は、2020年4月以降、▲90%台で推移を続けており、9月は▲90.1%(8月:同▲92.3%)となった。
延べ宿泊者数(2019年同月比)の推移/宿泊施設タイプ別客室稼働率の推移
2022年9月の客室稼働率は全体で46.9%となった。2019年同月差では▲16.5%(8月:同▲18.1%)と3ヵ月ぶりにマイナス幅が縮小した。

宿泊施設タイプ別客室稼働率をみると、旅館は34.5%、2019年同月差▲4.9%(8月:同▲9.1%)、リゾートホテルは47.5%、2019年同月差▲12.3%(8月:同▲16.1%)、ビジネスホテルは56.1%、2019年同月差▲20.2%(8月:同▲20.2%)、シティホテルは51.8%、2019年同月差▲27.5%(8月:同▲30.9%)、簡易宿所は22.5%、2019年同月差▲14.2%(8月:同▲16.0%)であった。2019年同月差では、ビジネスホテルは8月から横ばいとなったが、旅館、リゾートホテル、シティホテル、簡易宿所は8月からマイナス幅が縮小している。

2. 10月以降、延べ宿泊者数は回復が見込まれる

第7波では、特別な行動制限が課されなかったものの、感染拡大を受けて、宿泊旅行を自粛した人が多かったことから、8月の延べ宿泊者数は回復が足踏みとなった。しかし、8月末から新規感染者数が減少し始めたことで、9月の延べ宿泊者数は再び回復に向かった。

政府は全国を対象とした観光需要喚起策として、全国旅行支援を開始した。旅行者は、宿泊旅行一泊で最大8,000円の割引を受けられ、その地域で使用することができるクーポン券を受け取ることができる。クーポン券は観光需要を分散させるために、平日が3,000円、休日が1,000円となっている。期間は東京以外の道府県では10月11日から12月20日まで、東京では10月20日から12月20日までであり、すべての都道府県でワクチンの3回接種もしくは陰性証明が要件とされている。

10月31日現在、政府によって発表されている日本人のワクチン3回接種率は66.2%となっており、国民の3分の1は事前に検査を受けて陰性でなければ全国旅行支援を使うことはできないが、開始から20日たった現在で既に予算を使いきり、予約を締め切っている地域も多い。全国旅行支援が積極的に活用されていることから、10月以降の日本人延べ宿泊者数は大きく回復することが予想される。
全国旅行支援
10月11日以降、個人旅行の解禁、短期滞在のビザ免除の再開、一日あたりの入国者数の上限撤廃など水際対策が緩和されたことで、外国人観光客の増加も見込まれる。ただし、有効なワクチン接種証明書がなければ、出国前72時間以内の検査での陰性証明は引き続き必要である点に注意が必要だ。

水際対策は大きく緩和されたが、欧州の国々のようにすべての条件が撤廃され、完全にコロナ禍前に戻ったわけではない。ワクチン接種証明、および陰性証明が外国人観光客の回復を阻害する可能性があるだろう。

8月以降、新型コロナウイルスの感染者数は減少を続けており、旅行者数は回復に向かっている。10月11日からは、国内旅行者への支援、外国人旅行者への訪日条件の緩和が進められ、旅行をする環境が整えられている。これに加えて、現在、円安となっており、インバウンド需要を獲得しやすくなっている。これらの要因により、10月以降、日本人宿泊旅行者数、外国人宿泊旅行者数は回復していくだろう。
 
 

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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

(2022年11月01日「経済・金融フラッシュ」)

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