2023年06月08日

景気ウォッチャー調査(23年5月)~現状判断DIは4か月連続で上昇

山下 大輔

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1.先行き判断DIは前月から低下に転じたが、現状判断DI、先行き判断DIともに50超を継続

現状判断DI・先行き判断DIの推移 6月8日に内閣府が公表した2023年5月の景気ウォッチャー調査(調査期間:5月25日から月末)によると、3か月前との比較による景気の現状判断DIは55.0と前月から0.4ポイント上昇した(4か月連続の上昇、4か月連続の50超え)。また、景気の水準自体に対する判断を示す現状水準判断DIも50.9と前月から0.4ポイント上昇した(4か月連続の上昇、3か月連続の50超え)。他方、2~3か月先の景気の先行き判断DIは54.4と前月から▲1.3ポイント低下した(6か月ぶりの低下、4か月連続の50超え)。

5月調査では、全体として、新型コロナウイルス感染症の分類変更により、コロナ前と同様の方法で各種イベントが開催され、人流が増加していることなどの影響から、景況感の改善が続いていることが示された。先行き判断DIが前月から低下に転じるなど、物価上昇の影響への懸念は残るものの、先行き判断DIは引き続き50を超えており、先行きへの楽観的な見方は継続している。

2.景気の現状判断DI:飲食、サービスは好調を維持

現状判断DIの内訳の推移 現状判断DIの内訳をみると、家計動向関連は54.9(前月差0.0ポイント、4か月連続の50超え)、企業動向関連は54.3(同1.1ポイント上昇、5か月連続の上昇、3か月連続の50超え)、雇用関連は57.1(同1.3ポイント上昇、5か月連続の上昇、16か月連続の50超え)となり、家計動向関連は横ばいとなったが、企業動向関連、雇用関連は前月から更に上昇した。
現状判断DI(家計動向関連)の内訳の推移 家計動向関連の内訳では、上述の新型コロナに関する感染症法上の分類が5類に変更されたことに伴う、経済活動の促進により、飲食関連やサービス関連が前月から上昇した。飲食関連は前月差1.2ポイント上昇の61.1(2か月ぶりの上昇、4か月連続の50超え)、サービス関連は前月差0.1ポイント上昇の59.2(4か月連続の上昇、9か月連続の50超え)となった。他方、小売関連は、前月から▲0.1ポイント低下の53.1(2か月ぶりの低下、4か月連続の50超え)となった。小売関連は、引き続き50を超えており、景況感の改善は続いている状況にはあるものの、物価上昇による影響がある。住宅関連は前月まで2か月連続で上昇した反動もあり、前月差▲0.7ポイント低下の45.4(3か月ぶりの低下、32か月連続の50割れ)であった。
<回答者の主なコメント>
  • 新型コロナウイルス感染症の分類が5類感染症に移行したことで、ふだんは余り利用のない九州方面や関東方面からの団体利用があり、大きなプラス要因になっている(北陸・高級レストラン)
  • 新型コロナウイルス感染症の5類移行で、旅客の動きが著しく良くなっている。また、欧米系を中心としてインバウンド客が伸びている(北関東・旅行代理店)
  • 値上げの影響は大きい。買上点数は下がっているが客単価は前年と同様である。主に総菜や生鮮食品の即食性の高い商品が売れているためで、日用品については買い控えや、価格比較で安価な店舗への買い回りが一層多くなっている。余計なついで買いは自粛している(東北・スーパー)
  • 新型コロナウイルスの5類感染症への移行により、富裕層の外出関連の消費が増えた。それに伴い、これまで好調であった特選ラグジュアリーブランドの売行きは、相次ぐ値上げもあって伸びが鈍化している(近畿・百貨店)
現状判断DI(企業動向関連)の内訳の推移 企業動向関連の内訳は、製造業(前月差1.6ポイント上昇の51.2、2か月ぶりの上昇、2か月ぶりの50超え)、非製造業(前月差0.1ポイント上昇の56.8、5か月連続の上昇、4か月連続の50超え)ともに上昇した。上述のように、5類への移行に伴う人流の活発化に加え、回答者のコメントからは、生産コストの上昇を製品価格に転嫁できつつあるとの指摘もあった。
<回答者の主なコメント>
  • イベントでの売上が好調である。また、ギフト商材も少し売れてきている(南関東・食料品製造業)
  • 観光産業関連の受発注量が新型コロナウイルス感染症発生前の水準までは届かないが、好調である(沖縄・輸送業)

3.景気の先行き判断DI:物価上昇への懸念で、小売、飲食、サービスが低下も、引き続き50超

先行き判断DIの内訳の推移 先行き判断DIの内訳について、家計動向関連は54.1(前月差▲2.3ポイント低下、6か月ぶりの低下、4か月連続の50超え)、企業動向関連は53.6(同0.4ポイント上昇、3か月連続の上昇、3か月連続の50超え)、雇用関連は58.2(同1.4ポイント上昇、5か月連続の上昇、5か月連続の50超え)となった。
先行き判断DI(家計動向関連)の内訳の推移 家計動向関連では、住宅関連は、前月差0.4ポイント上昇の46.9(2か月ぶりの上昇、19か月連続の50割れ)であったが、それ以外の内訳全てが前月から低下した。小売関連は、前月差▲2.4ポイント低下の53.4(6か月ぶりの低下、4か月連続の50超え)、飲食関連は、前月差▲1.3ポイント低下の58.6(2か月連続の低下、4か月連続の50超え)、サービス関連は、前月差▲2.9ポイント低下の55.9(5か月ぶりの低下、4か月連続の50超え)であった。物価上昇への懸念はあるものの、引き続き先行きへの楽観的な見方は強い状況だ。
<回答者のコメント>
  • 電気料金の値上がりや物価上昇といったマイナス要素はあるが、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類へ移行し、気分的には消費の傾向にある。しかし、来月から電気料金が更に値上げされれば、買い控えが進み、来客数は減少するとみている(東北・スーパー)
  • 5月8日以降、コロナ禍での各種規制が全面解除されたことで、人流に変化が出てくる。テレワークから会社での勤務に変わった影響か、ランチタイムの販売量が伸びており、全体としても好調を維持している(近畿・一般レストラン)
  • インバウンドを含め、観光客数はどんどん増えているが、観光関連以外の飲食店は電気料金の大幅値上げで営業に支障が出そうである。なお当社の店舗では1店舗当たり、15万円ほど電気料金が上がる(沖縄・その他レストラン)
  • このまま新型コロナウイルス感染症が完全に終息し、客が新型コロナウイルス感染症の発生前の水準に戻ってくることを期待しつつ現在も営業している。ただし、6月以降に水道光熱費の値上げが発表されていること、原価の高騰、この2つが非常に不安材料である。これについて、政府の強力な対策をお願いしたい(南関東・都市型ホテル)
先行き判断DI(企業動向関連)の内訳の推移 また、企業動向関連の内訳では、製造業は、前月差0.4ポイント上昇の53.7(2か月ぶりの上昇、3か月連続の50超え)となり、非製造業は、前月差▲0.3ポイント低下の54.1(3か月ぶりの低下、3か月連続の50超え)となった。現状判断と同様に、5類への移行に伴う人流の活発化に加え、生産コストの上昇を製品価格に転嫁できつつあるとの指摘もあった。
<回答者のコメント>
  • 世間全体に値上げの意識が共有され、以前よりスムーズな交渉ができるので、良い傾向である (南関東・出版・印刷・同関連産業)
  • 企業の好業績、賃金アップ、アフターコロナ、インバウンドの復活、株価高など好景気の要素が多い一方、景気を下げる要因は余りない(東海・化学工業)
  • 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類に引き下げられたことで、経済活動が活発化している。G7広島サミットの開催の影響で、データセンターの立地場所としての印象が良くなり、今後も注目されるため、景気は良くなる(中国・通信業)
 
 

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山下 大輔

研究・専門分野

(2023年06月08日「経済・金融フラッシュ」)

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