2022年11月30日

国内旅行客の重い足取り、回復期待とコロナ後の変化について~旅行・観光消費動向調査2022年7-9月

金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子

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■要旨

観光庁によると、2022年7-9月の国内居住者による旅行消費額は2019年同期比▲20.3%と、動きが鈍かった。最近、訪日外国人の個人旅行が解禁されたことにより、外国人の旅行需要が注目されている。しかし、ホテル・旅館などの宿泊施設や小売・飲食店などの店舗の収益回復を考える際、ウエイトの大きい日本人旅行客の動向を無視できない。
 
実旅行者数は完全回復には至っておらず、各日の全宿泊者数を足し合わせた延べ旅行者数は実旅行者数よりもやや戻りが鈍い。依然として人の集まる移動手段は避けられる傾向にあり、公共交通機関を利用した旅行の回復も待たれるところである。
 
延べ旅行者数の回復に対する旅行消費額の回復度合いは一様でない。この事象は、2019年と2022年で旅行者層が変化して消費水準が変わり、コロナ前後で収益性が変化したことに起因するのではないかと考えられる。コロナ禍発生から既に2年半が経過し、変化が一定程度定着している可能性もある。
 
また、コロナによる健康被害を恐れてか、アクティブシニア層が継続して旅行を控えているとみられ、一旦市場から離れてしまったシニア層をどこまで長期旅行に戻せるか、どのようにしたら若年層を呼び込むことができるかは、今後重要な経営課題の一つとなるだろう。
 
実際問題として、人々が何の心配もなく自由に長期の国内旅行に行くようになるにはまだまだ時間を要すると考える。観光業界に関係する各社は、将来の観光業界の回復を見据えて、今のうちに生き残りをかけて経営戦略を策定し、ターゲット層の見直し、収益獲得方法などの具体的戦術や方策を用意していく必要があると思われる。

■目次

・夏の国内旅行ハイシーズンでも、日本人国内旅行者の動きは鈍かった
・延べ旅行者数では、宿泊数の多い長期旅行、バス旅行、出張などが減っている
・長期旅行では、延べ宿泊者数の減少より旅行消費額の減少が小さく、収益性は改善
・収益性の変化に応じて、アプローチする需要者層などを変える時期ではないか
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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴
  • 【職歴】
     2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
     2006年 総合不動産会社に入社
     2018年5月より現職
    ・不動産鑑定士
    ・宅地建物取引士
    ・不動産証券化協会認定マスター
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

    ・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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