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- 物価高進行下の消費者の状況-低収入層や子育て世帯で負担感強、高収入層は海外ブランド品や不動産で実感
2022年10月21日
3|ライフステージ別の状況~物価高の負担感が強い中学生のいる世帯ではあらゆる面で支出抑制
ライフステージ別に見ても、これまでと同様、不要品の購入控えやポイント等の活用、低価格製品への乗り換えが上位を占める(図表8(b))。
なお、第一子中学校入学では、前節で見た通り、他年代と比べて収入減少層が多く、物価上昇の負担感が強かったが、物価高への対応を見ても、「特に何もしていない」や「その他」を除く全ての項目で全体を上回っており、あらゆる面で支出抑制を行うような厳しい状況が見える。第一子中学校入学では、特に「ポイントやクーポンなどを活用する」(63.6%、全体より+18.1%pt)のほか、「外食を減らす」(42.4%、同+17.4%pt)や「洋服や装飾品を買い控える」(33.3%、同+12.1%pt)、「(動画配信などの)サブスクリプションサービスを休止・解約する」(13.6%、同+10.3%pt)、「旅行やレジャーなどの娯楽費用を減らす」(25.8%、同+10.3%pt)などの娯楽関連の支出抑制では全体を+10%pt以上上回る。このほか「仕事を増やすなど収入を得る手段を増やす」(13.6%、同+7.8%pt)や「有価証券や保険を売却・解約する」(6.1%、同+5.1%pt)が他と比べて多いことも特徴的である。
また、未婚・独身では「外食を減らす」(19.4%、同▲5.6%pt)や「旅行やレジャーなどの娯楽費用を減らす」(10.5%、同▲5.0%pt)、「洋服や装飾品を買い控える」(17.0%、同▲4.2%pt)などの娯楽関連の支出抑制が全体より少ないことが特徴的である。
ライフステージ別に見ても、これまでと同様、不要品の購入控えやポイント等の活用、低価格製品への乗り換えが上位を占める(図表8(b))。
なお、第一子中学校入学では、前節で見た通り、他年代と比べて収入減少層が多く、物価上昇の負担感が強かったが、物価高への対応を見ても、「特に何もしていない」や「その他」を除く全ての項目で全体を上回っており、あらゆる面で支出抑制を行うような厳しい状況が見える。第一子中学校入学では、特に「ポイントやクーポンなどを活用する」(63.6%、全体より+18.1%pt)のほか、「外食を減らす」(42.4%、同+17.4%pt)や「洋服や装飾品を買い控える」(33.3%、同+12.1%pt)、「(動画配信などの)サブスクリプションサービスを休止・解約する」(13.6%、同+10.3%pt)、「旅行やレジャーなどの娯楽費用を減らす」(25.8%、同+10.3%pt)などの娯楽関連の支出抑制では全体を+10%pt以上上回る。このほか「仕事を増やすなど収入を得る手段を増やす」(13.6%、同+7.8%pt)や「有価証券や保険を売却・解約する」(6.1%、同+5.1%pt)が他と比べて多いことも特徴的である。
また、未婚・独身では「外食を減らす」(19.4%、同▲5.6%pt)や「旅行やレジャーなどの娯楽費用を減らす」(10.5%、同▲5.0%pt)、「洋服や装飾品を買い控える」(17.0%、同▲4.2%pt)などの娯楽関連の支出抑制が全体より少ないことが特徴的である。
4|職業別の状況~自営業・自由業で仕事を増やす、無職・学生で特に何もしていないが多い
職業別に見ても、不要品の購入控えやポイント等の活用は、いずれも上位にあがるが、低価格製品への乗り換えは、経営者・役員では上位にはあがらない(図表8(c))。
経営者・役員では「新品と比べて割安で購入できる中古品を購入する」(13.9%、全体より+6.4%pt)や「修理などして、できるだけ長く使えるものは使い続ける」(22.2%、同+5.6%pt)、自営業・自由業では「仕事を増やすなど収入を得る手段を増やす」(11.4%、同+5.6%pt)、無職・学生等では「特に何もしていない」(23.4%、同+7.9%pt)や「貯蓄を切り崩す」(15.5%、同+5.4%pt)が多いことなどが特徴的である。
職業別に見ても、不要品の購入控えやポイント等の活用は、いずれも上位にあがるが、低価格製品への乗り換えは、経営者・役員では上位にはあがらない(図表8(c))。
経営者・役員では「新品と比べて割安で購入できる中古品を購入する」(13.9%、全体より+6.4%pt)や「修理などして、できるだけ長く使えるものは使い続ける」(22.2%、同+5.6%pt)、自営業・自由業では「仕事を増やすなど収入を得る手段を増やす」(11.4%、同+5.6%pt)、無職・学生等では「特に何もしていない」(23.4%、同+7.9%pt)や「貯蓄を切り崩す」(15.5%、同+5.4%pt)が多いことなどが特徴的である。
5|個人・世帯年収別の状況~低収入層ほど支出全体を抑制、高収入層は3割前後が特に何もしていない
個人年収別に見ても、不要品の購入控えやポイント等の活用は上位にあがるが、年収が高いほど「特に何もしていない」が多く、1,000万円以上では「ポイントやクーポンなどを活用する」と「特に何もしていない」(いずれも25.5%)が同率2位を占める(図表8(d))。なお、「特に何もしていない」は、個人年収600万円以上では3割前後を占める。また、これまで上位にあがっていた「食料品などの生活必需品は価格の安い製品へ乗り換える」は、個人年収1,000万円未満までは比較的上位を占めるが、1,000万円以上(9.8%、全体より▲23.3%pt)では1割未満で、全体を大幅に下回る。
一方、個人年収が低いほど、「特に何もしていない」を除く、支出抑制等の項目が全体的に増える傾向があり、特に200万円未満では「洋服や装飾品を買い控える」(28.5%、全体より+7.3%pt)や「ポイントやクーポンなどを活用する」(51.7%、同+6.2%pt)、「できるだけ不要なものは買わない」(72.1%、同+5.2%pt)が多い。また、「貯蓄を切り崩す」についても、選択割合は1割程度で低いが、個人年収が低いほど多い。
世帯年収別に見ても個人年収別とおおむね同様の傾向が見られる。
個人年収別に見ても、不要品の購入控えやポイント等の活用は上位にあがるが、年収が高いほど「特に何もしていない」が多く、1,000万円以上では「ポイントやクーポンなどを活用する」と「特に何もしていない」(いずれも25.5%)が同率2位を占める(図表8(d))。なお、「特に何もしていない」は、個人年収600万円以上では3割前後を占める。また、これまで上位にあがっていた「食料品などの生活必需品は価格の安い製品へ乗り換える」は、個人年収1,000万円未満までは比較的上位を占めるが、1,000万円以上(9.8%、全体より▲23.3%pt)では1割未満で、全体を大幅に下回る。
一方、個人年収が低いほど、「特に何もしていない」を除く、支出抑制等の項目が全体的に増える傾向があり、特に200万円未満では「洋服や装飾品を買い控える」(28.5%、全体より+7.3%pt)や「ポイントやクーポンなどを活用する」(51.7%、同+6.2%pt)、「できるだけ不要なものは買わない」(72.1%、同+5.2%pt)が多い。また、「貯蓄を切り崩す」についても、選択割合は1割程度で低いが、個人年収が低いほど多い。
世帯年収別に見ても個人年収別とおおむね同様の傾向が見られる。
6|購買意識別の状況~低価格志向で商品価格を抑える工夫、貯蓄・投資志向で家計の見直し
購買意識別に見ても、不要品の購入控えやポイント等の活用は上位にあがるが、高品質志向(「普及品より、多少値段がはってもちょっといいものが欲しい」にあてはまると回答した層)の高い層では「食料品などの生活必需品は価格の安い製品へ乗り換える」(25.5%、全体より▲7.6%pt)が少ない(図表8(f))。
低価格志向(「メーカーにこだわらず、とにかく安くて経済的なものを買う」にあてはまると回答した層)の高い層では「食料品などの生活必需品は価格の安い製品へ乗り換える」(45.6%、同+12.5%pt)や「ポイントやクーポンなどを活用する」(51.8%、同+6.3%pt)、「セールやアウトレットなどを利用する」(30.9%、同+5.1%pt)などが多く、商品価格を抑えることに積極的であり、貯蓄・投資志向(「今を楽しむより、老後のための貯蓄や投資を優先したい」にあてはまると回答した層)の高い層では「家計の見直し」(31.9%、同+6.8%pt)が多く、購買意識による特徴があらわれている。
購買意識別に見ても、不要品の購入控えやポイント等の活用は上位にあがるが、高品質志向(「普及品より、多少値段がはってもちょっといいものが欲しい」にあてはまると回答した層)の高い層では「食料品などの生活必需品は価格の安い製品へ乗り換える」(25.5%、全体より▲7.6%pt)が少ない(図表8(f))。
低価格志向(「メーカーにこだわらず、とにかく安くて経済的なものを買う」にあてはまると回答した層)の高い層では「食料品などの生活必需品は価格の安い製品へ乗り換える」(45.6%、同+12.5%pt)や「ポイントやクーポンなどを活用する」(51.8%、同+6.3%pt)、「セールやアウトレットなどを利用する」(30.9%、同+5.1%pt)などが多く、商品価格を抑えることに積極的であり、貯蓄・投資志向(「今を楽しむより、老後のための貯蓄や投資を優先したい」にあてはまると回答した層)の高い層では「家計の見直し」(31.9%、同+6.8%pt)が多く、購買意識による特徴があらわれている。
6――おわりに~更なる物価高進行の懸念、生活支援策も必要だが賃金構造の抜本的な改革を
本稿では、ニッセイ基礎研究所の調査に基づき、消費者の物価高に対する意識や行動について、性年代やライフステージ、職業、年収、購買意識などの属性による違いを捉えた。
その結果、食料や日用品の値上がりを背景に、消費者の実に9割が物価高を実感しており、特に低収入層のほか、子育て世帯(特に中学生のいる世帯)では収入減少層が比較的多く、負担感が強かった。これらの層では、あらゆる面において支出抑制に取り組む様子が見られるとともに、子育て世帯では貯蓄のある高年齢層などとは異なって貯蓄の切り崩しにも頼りにくく、非常に厳しい状況が見て取れた。一方、高収入層や経営者・役員では、物価高を海外ブランド品や不動産の価格で実感し、低価格製品への乗り換えが少ないなど、物価高への対応には消費者の経済状況によって温度差がある様子が見られた。
本稿執筆中も円安は進行し続け、150円台が視野に入る勢いだ。日本企業のコスト増が進み、賃金の上昇を圧迫するような状況が続けば、高収入層など比較的余裕のある層にも厳しい状況は広がる可能性は高い。
また、現在のような急速な円安進行が緩和されたとしても、賃金が上がりにくい状況が続くのならば家計負担が増した状況が改善されるわけではない。欧米と比較して日本の賃金水準が低い背景には、雇用者の約3割が賃金水準の低い非正規雇用者であり、正規雇用者であっても、終身雇用や年功序列が色濃く残る日本型雇用においては、高い能力や成果に対する報酬が低く抑えられていることがある。
生活困窮世帯を中心に喫緊に光熱費や食料費の支援などの生活支援策を講じることは重要だが、家計負担が増した状況を根本的に改善するには賃金の上昇が必要だ。そのためには、生産性を高めることで高い報酬を得られるような賃金構造に抜本的に変えていく必要がある。
コロナ禍も相まって、未婚化・少子化が一層進行しているが、将来的に賃金が伸びていくという明るい見通しを持ててこそ、将来世代が家庭を持ちたいと考えるのではないか。
その結果、食料や日用品の値上がりを背景に、消費者の実に9割が物価高を実感しており、特に低収入層のほか、子育て世帯(特に中学生のいる世帯)では収入減少層が比較的多く、負担感が強かった。これらの層では、あらゆる面において支出抑制に取り組む様子が見られるとともに、子育て世帯では貯蓄のある高年齢層などとは異なって貯蓄の切り崩しにも頼りにくく、非常に厳しい状況が見て取れた。一方、高収入層や経営者・役員では、物価高を海外ブランド品や不動産の価格で実感し、低価格製品への乗り換えが少ないなど、物価高への対応には消費者の経済状況によって温度差がある様子が見られた。
本稿執筆中も円安は進行し続け、150円台が視野に入る勢いだ。日本企業のコスト増が進み、賃金の上昇を圧迫するような状況が続けば、高収入層など比較的余裕のある層にも厳しい状況は広がる可能性は高い。
また、現在のような急速な円安進行が緩和されたとしても、賃金が上がりにくい状況が続くのならば家計負担が増した状況が改善されるわけではない。欧米と比較して日本の賃金水準が低い背景には、雇用者の約3割が賃金水準の低い非正規雇用者であり、正規雇用者であっても、終身雇用や年功序列が色濃く残る日本型雇用においては、高い能力や成果に対する報酬が低く抑えられていることがある。
生活困窮世帯を中心に喫緊に光熱費や食料費の支援などの生活支援策を講じることは重要だが、家計負担が増した状況を根本的に改善するには賃金の上昇が必要だ。そのためには、生産性を高めることで高い報酬を得られるような賃金構造に抜本的に変えていく必要がある。
コロナ禍も相まって、未婚化・少子化が一層進行しているが、将来的に賃金が伸びていくという明るい見通しを持ててこそ、将来世代が家庭を持ちたいと考えるのではないか。
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経歴
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
(2022年10月21日「基礎研レポート」)
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