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入院は大幅減少、外来は微減-2020年の「患者調査」にあらわれたコロナ禍の影響

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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外来についても、外来受療率の上位6つについて推移を見てみよう。
最も外来受療率の高い消化器系の疾患は、概ね横這いとなった。循環器系の疾患は、入院受療率と同様、大きく低下した。内分泌,栄養及び他代謝疾患や、筋骨格系及び結合組織の疾患は、いずれも上昇や低下の割合が小さかった。
外来受療率の低下という点では、新型コロナウイルス感染症と症状が類似している呼吸器系の疾患で、マイナス25%もの大きな低下となった。コロナ禍で、呼吸器系の疾患の患者が医療施設での受療を控えるケースが増えていたものとみられる。
一方、健康状態に影響を及ぼす要因及び保健サービスの利用は、43%を超える大きな伸びを見せた。これは、主として、予防接種の増加による。2020年の調査時点では、新型コロナのワクチンはまだ開発されていなかったが、インフルエンザとダブルで流行することを心配した人々が、大挙してインフルエンザの予防接種を受けたことが、統計に反映されたものと考えられる。
5――平均入院日数
1|コロナ禍と調査票の元号記載の2要因で、2020年の平均入院日数は増加
近年、退院した患者の平均入院日数は、年々減少していた。しかし、2020年には増加に転じた。その要因として、コロナ禍の影響と、調査票の元号記載の影響が考えられる。
まず、コロナ禍の影響については、比較的軽症の患者が受療を控えたり、予定手術が延期となり事前の入院がなくなったりした結果、短期入院が減少し、長期入院の割合が高まったことが考えられる。
つぎに、調査票の元号記載の影響については、入院年月日の記入箇所で、令和に○を付すべきところを平成に○を付したために、入院期間が30年以上として処理されたケースが混入したことが考えられる。厚生労働省では、入院年が「平成元年」や「平成2年」と記入された753件の調査票を精査して、入院元号の選択誤りである可能性が高いものについて、元号を令和に修正したり、入院元号不詳としたりして取り扱うこととした。ただ、その処理後も、1万日(約27年)以上の入院の件数は2020年に366件あり、2017年の173件、2014年の156件、2011年の167件に比べて、約200件多い結果となっている。
6――おわりに (私見)
こうした行政や民間企業での患者調査の活用状況を踏まえた場合、コロナ禍の影響を受けたとみられる2020年のデータをどのように用いるべきか? 今後、その活用にあたって、そもそものデータの採否や、各種の調整方法など、さまざまな検討を要するものと考えられる。
今後、患者調査を用いて受療状況などを見る際には、データの分析とともに、コロナ禍の影響の取り扱い方法について、議論を重ねていくべきといえるだろう。
(2022年09月27日「基礎研レター」)

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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