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ESGと企業価値
金融研究部 企業年金調査室長 年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 梅内 俊樹
ESG投資の戦略ごとの残高推移によると、2012年においてはネガティブ・スクリーニングが7通りの投資戦略の中で最も残高が多くなっている。当時は、ESG投資と言えばネガティブ・スクリーニングであり、ESGの観点で好ましくない企業を排除する投資が中心であったことがわかる。
しかし最近では、2020年の残高が最も多い戦略がESGインテグレーションとなっていることからも分かるように、ESGに対する見方は変化しつつあるようだ。ESGインテグレーションは、財務情報に加えて、ESGに係る取り組みを非財務情報として組み込み、企業の将来的な企業価値向上の可能性を評価する投資であり、従来、主にリスクとして捉えられていたESGが、ビジネス機会や収益機会として捉えられるようになった可能性がある。
今後、必要とされるESG情報の適切な開示が進むことによって、ESGが企業価値に及ぼす影響は着実に高まっていくものと想定される。
最近、「ステークホルダー資本主義」が注目されている。顧客や従業員、サプライヤー、地域社会などにも価値を提供することにコミットするという点で、従来の株主資本主義と異なるものである。その考え方や解釈を巡っては様々な指摘があるが、経済産業省の「サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会」では、企業が創造すべき「価値」についての考え方を取りまとめている。それによれば、ステークホルダー資本主義は従来の株主資本主義と矛盾するものではなく、新たな考え方のもとでも、企業に求められるのは、中長期的に持続性のある企業価値創造に向けた取り組みであることには変わりはないことになる。
■目次
1――ESG投資の変遷と企業価値向上の可能性
2――ステークホルダー資本主義における価値の考え方
03-3512-1849
- 【職歴】
1988年 日本生命保険相互会社入社
1995年 ニッセイアセットマネジメント(旧ニッセイ投信)出向
2005年 一橋大学国際企業戦略研究科修了
2009年 ニッセイ基礎研究所
2011年 年金総合リサーチセンター 兼務
2013年7月より現職
2018年 ジェロントロジー推進室 兼務
2021年 ESG推進室 兼務
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