- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 金融・為替 >
- 金融政策 >
- 資産配分の見直しで検討したいプライベートアセット
資産配分の見直しで検討したいプライベートアセット

金融研究部 企業年金調査室長 年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・サステナビリティ投資推進室兼任 梅内 俊樹
このレポートの関連カテゴリ
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
しかしながら、海外に起因する不確実性が世界経済に暗い影を落としている点には注意が必要だろう。経済政策の不確実性を論じる新聞記事の割合から各時点の不確実性の度合いを定量的に示す「グローバル経済政策不確実性指数」によれば、トランプ氏が米大統領選で勝利した昨年11月以降、不確実性が高まっていることが示されている(図表2)。
トランプ政権が誕生して2カ月強が経過するが、その政策には依然として不透明感があり、政策次第では、米国経済はもとより、国内経済や金融市場は大きく左右されかねない情勢だ。海外で財政規律の緩みへの警戒感が高まっていることの影響も含め、国内経済については日銀が想定するシナリオから大きく上下に振れる可能性を意識せざるを得ない状況と言える。
こうした不確実性の高い環境を年金運用で乗り越える上では、米年金運用におけるプライベートアセットへの積極的な投資スタンスは参考になろう。プライベートアセットは未公開資産であるが故に流動性に制約があるなど、留意すべき点は多く、取り組む上で克服しなければならない課題は多岐にわたる。ただ、総じて伝統的資産との低相関性という特徴があり、リスク・リターン特性やリターン源泉の異なる多様な投資対象が存在するといった魅力があるためだ。
年金基金を公的年金と企業年金に区分すると、オルタナティブの構成比率が高いのは公的年金であり、公的年金がオルタナティブ投資をけん引してきたことが窺える。ただし、企業年金においてもオルタナティブの構成比率は2022年時点で27%と3割近くに達しており、少なくとも約20%はプライベートアセットに配分されている模様だ(図表4)。
国内でも確定給付企業年金(以下、DB)の運用では、オルタナティブへの投資は増加傾向にあり、企業年金連合会の調査によれば、オルタナティブの構成比率は2023年度に20%となっている。ただし、オルタナティブ投資の多くは、ヘッジファンドなどの非伝統的手法で占められており、プライベートアセットへの投資スタンスでは、米国の企業年金との間に格差があるような印象を受ける。
DBは個々に資産規模や年金財政上の事情が様々で、母体企業の方針を含めた違いによって年金運用の考え方は異なる。そもそも図表3・4の調査対象となっている米国の企業年金とは資産規模に大きな格差があり、日米間では年金運用を取り巻く環境にも違いがある。このため、米国の企業年金と同様の資産配分がDBに共通の最善策となる訳ではない。
ただ、プライベートアセットへの投資でリターン源泉を多様化できる点に違いはなく、伝統的資産と上手に組み合わせることで、リターンの安定化や運用効率の向上を図ることも可能だ。10年国債金利の上昇によって資産配分を見直す機運が高まっている。この機会を捉えて、プライベートアセットの採用や拡充の是非を検討することは、不確実性の高まる運用環境を乗り越え、中長期的な年金運用の安定化を目指す上で、決して無駄にはならないだろう。
(2025年04月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1849
- 【職歴】
1988年 日本生命保険相互会社入社
1995年 ニッセイアセットマネジメント(旧ニッセイ投信)出向
2005年 一橋大学国際企業戦略研究科修了
2009年 ニッセイ基礎研究所
2011年 年金総合リサーチセンター 兼務
2013年7月より現職
2018年 ジェロントロジー推進室 兼務
2021年 ESG推進室 兼務
梅内 俊樹のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/03 | 資産配分の見直しで検討したいプライベートアセット | 梅内 俊樹 | ニッセイ年金ストラテジー |
2025/02/28 | 日本版サステナビリティ開示基準を巡る議論について-開示基準開発の経過と有価証券報告書への適用の方向性 | 梅内 俊樹 | 基礎研レター |
2024/09/06 | 持続的な発展に向けて-SDGsの先を見据えた継続的な取組が必要か? | 梅内 俊樹 | 基礎研マンスリー |
2024/09/05 | 持続的な発展に向けて-SDGsの先を見据えた継続的な取組が必要か? | 梅内 俊樹 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年05月01日
ユーロ圏GDP(2025年1-3月期)-前期比0.4%に加速 -
2025年04月30日
2025年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~ -
2025年04月30日
「スター・ウォーズ」ファン同士をつなぐ“SWAG”とは-今日もまたエンタメの話でも。(第5話) -
2025年04月30日
米中摩擦に対し、持久戦に備える中国-トランプ関税の打撃に耐えるため、多方面にわたり対策を強化 -
2025年04月30日
米国個人年金販売額は2024年も過去最高を更新-トランプ関税政策で今後の動向は不透明に-
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【資産配分の見直しで検討したいプライベートアセット】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
資産配分の見直しで検討したいプライベートアセットのレポート Topへ