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企業にとってのESGへの取組み~ESGは外部不経済を抑制する~
金融研究部 取締役 研究理事 兼 年金総合リサーチセンター長 兼 ESG推進室長 德島 勝幸
企業にとってESGやSDGsに対して取り組むことは、コストでしかないという見方がある。短期的に見れば、経営資源を「余分な」行動に投入することであるから、コストと考える見方を完全には否定できない側面がある。しかし、高度経済成長期の日本において大問題となった公害の事例を考えてはどうだろうか。単なる短期的な経済合理性の観点から、外部不経済の発生を無視し収益獲得活動のみに邁進した企業は、厳しく社会から指弾されることになった。公害がメディアに取り上げられ大問題となって以降、有害ガスの排出抑制や産業廃棄物の発生を削減するといった公害防止への取り組みを、コストだと主張して否定することは許されなくなったのである。
ESGやSDGsに関する取り組みにも、同様のことが言えるのかもしれない。単純にコストだと主張して取り組まないことは、短期的には経済合理性があるように思えるかもしれない。しかし、企業が中長期的に社会の中で存続し成長して行くためには、既にESGやSDGsに取り組むことが必然となっており、株主やステークホルダーから求められている経営行動に取り組むのは、エージェンシーである経営者が取り組むべき責務なのである。
ESG関連指数の短期的なパフォーマンスを捉え、ESGへの取り組みがコストであるため、パフォーマンスが市場インデックスに劣るという批判も見られる。しかし、そもそも市場インデックスに追随する運用の適否にすら様々な議論があるだけでなく、ESGやSDGsへの取り組みが中長期的なものであることを考えると、数年間程度のパフォーマンスで議論することすら、ESG投資の本質を理解していないことの証左でしかないだろう。
機関投資家がESG投資を推進するのは、自らの利益のためだけでなく、それが地球環境を含めた多くの人たちにとって善となることを信じているためであり、株主や投資家としての立場から企業活動に対してESGやSDGsを意識して企業活動を行うよう要請するものである。それは同時に、機関投資家にとっても株主等を含む社会からの要請を果たす行動なのである。
■目次
1――企業にとってESGはコストなのか
2――ESG指数のパフォーマンスを考える
3――外部不経済を否定してこそのESG経営

03-3512-1845
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