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セカンドライフの空洞化問題(2)-高齢者就労は進んでいるのか?
生活研究部 上席研究員・ジェロントロジー推進室兼任 前田 展弘
■減少の一途にある「現役」「労働力人口」
1 労働力人口の対象は15歳以上であるが、ここでは図表1に沿って20~64歳を現役層として表記している。
■高齢者就労は進んでいるのか?
注目すべきは「率」であろう。労働力人口比率、つまり各年齢段階人口における労働力人口の割合をみると、65~69歳では1970年代から2005年まで低下し、そこから増加傾向にある。70歳以上では、同様に低下したのち、近年は僅かながら増加傾向にある。水準だけを比べれば、約半世紀前の状況に戻ってきたところと言える。意外と思われた方もいるかもしれないが、昔の高齢者の相当の人は働いていた、仕事があったのである。こうした率の変化は、産業構造の変化(近代化)、つまり第1次産業などの定年のない仕事が減少する一方で、定年のある第2・3次産業が増加したことの影響により低下してきたものが、人手不足の影響や高齢者雇用を推奨する政策的な効果等によって上昇に転じてきたものと推察している。
ただ、今の高齢者は昔の高齢者よりも体力的にも非常に若返ってきている3。社会の中で活躍できる高齢者は非常に多くなってきているにも関わらず、2020年時点を見ても例えば、まだまだ元気に活躍できる65~69歳の2人に1人は就労につかない(つけない)状況である。70歳以上については、高齢者の高齢化の影響も加味する必要があり、もう少し丁寧な見方が必要であるが、労働力人口比率は17.9%にとどまっている。いずれにしても、活躍できるのに活躍できない高齢者が増えてしまうことは、社会にとって貴重な社会資源を無作為に喪失させてしまうことであり、国として大きな損失であることは違いないであろう。
2 65歳以上人口は1970年の740万人(総務省「国勢調査」)から2020年の3619万人(総務省「人口推計」)へ増加(4.89倍)。
3 スポーツ庁が毎年実施する「体力・運動能力調査」でも近年、高齢者の体力の若返りが確認できる。
生活研究部 上席研究員・ジェロントロジー推進室兼任
前田 展弘 (まえだ のぶひろ)
研究・専門分野
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)、超高齢社会・市場、QOL(Quality of Life)、ライフデザイン
03-3512-1878
- 2004年 :ニッセイ基礎研究所入社
2006~2008年度 :東京大学ジェロントロジー寄付研究部門 協力研究員
2009年度~ :東京大学高齢社会総合研究機構 客員研究員
(2022年度~ :東京大学未来ビジョン研究センター・客員研究員)
2021年度~ :慶応義塾大学ファイナンシャル・ジェロントロジー研究センター・訪問研究員
内閣官房「一億総活躍社会(意見交換会)」招聘(2015年度)
財務省財務総合政策研究所「高齢社会における選択と集中に関する研究会」委員(2013年度)、「企業の投資戦略に関する研究会」招聘(2016年度)
東京都「東京のグランドデザイン検討委員会」招聘(2015年度)
神奈川県「かながわ人生100歳時代ネットワーク/生涯現役マルチライフ推進プロジェクト」代表(2017年度~)
生協総研「2050研究会(2050年未来社会構想)」委員(2013-14、16-18年度)
全労済協会「2025年の生活保障と日本社会の構想研究会」委員(2014-15年度)
一般社団法人未来社会共創センター 理事(全体事業統括担当、2020年度~)
一般社団法人定年後研究所 理事(2018-19年度)
【資格】 高齢社会エキスパート(総合)※特別認定者、MBA 他
(2022年09月01日「研究員の眼」)
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