2023年08月08日

官民協働による高齢化課題解決の取組視点~85歳以上1000万人時代をどう支えるか

基礎研REPORT(冊子版)8月号[vol.317]

生活研究部 上席研究員・ジェロントロジー推進室兼任 前田 展弘

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■今後の高齢化の行方と特徴

“官民協働して社会課題を解決しながら成長を目指す”、これは今年(令和5年)の「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針2023)」の冒頭で強調されていたことである。産業界の多くの企業もこの具体的な実現に向けて検討を深めているところではないだろうか。本稿では、筆者の専門とするジェロントロジー、つまり高齢者及び高齢化に関する領域からこの点について考えてみたい。

まずおさらいにはなるが日本の高齢化の動向について確認しておこう。周知のとおり、日本は戦後一貫して高齢化が進んできた。図表1に人口の年齢構造(3区分)の変化を示しているが、1920年の人口に占める14歳以下の割合は36.5%、15~64歳は58.3%、65歳以上は5.3%であったものが、その後、特に1970年代以降急速に速度を上げて高齢化が進み、現在(2022年)では、14歳以下は11.6%、15~64歳は59.4%、65歳以上は29.0%と、高齢者が約3割を占める社会となっている。ではこれからの高齢化はどうなっていくのか、3つのポイントを述べておきたい。
[図表1]日本の人口の年齢構造(3区分)の推移と推計(1920~2070年)
(1)高齢化はやがて落ち着く(今が社会・市場の創り直しの過渡期)
今後も高齢化は進んでいくが、永遠に続くわけではない。2050年あたりを過ぎると、高齢者が約4割、15~64歳が約5割、14歳以下が約1割で構成される社会が常態化していく。今のトレンドが続く限り未来の日本は、こうした超高齢社会が基本の形になっていくのである。
(2)高齢者だけが今後も増え続ける(高齢者市場は拡大する)
人口減少下にある日本であるが、その中でも唯一65歳以上の高齢者だけは、少なくとも2044年まで増加していく見通しにある。人口=市場と捉えれば、高齢者市場は当面拡大の一途にあり、また高齢者は他の年代よりも相対的に保有資産が大きいことも加味すれば、高齢者市場が有する経済成長のポテンシャルは大きいと考えられる。
(3)「高齢者の後期高齢化」が進む(85歳以上1000万人時代の到来)
増加する高齢者の多くは75歳以上の高齢者である。65~74歳の人口割合は2050年まで13%台で大きな変化は見られない一方で、75歳以上は14.8%(2020年)⇒19.2%(2035年)⇒23.3%(2050年)と増えていく。その中でも特に注目されるのが、85歳以上の高齢者であり2036年には1000万人を超えていく。2020 年の613万人に対して1.6倍の数である。こうした高齢者の後期高齢化の変化を踏まえて、課題解決の道筋を考えていく必要がある。

■官民協働による高齢化課題解決の取組視点

<視点>民間版生活支援コーディネーター(仮称)の配置による官民協働事業の展開
85歳以上の高齢者が1000万人を超えていくということは社会にとって大きなインパクトであり、そうした高齢者を支え切れるのか大きな社会課題になり得る。同居する家族(子ども)がいる、あるいは高齢者向けの施設や住宅(有料老人ホーム等)に入居していれば比較的心配は少ないかもしれないが、身寄りがいない人はもちろん、子供がいても同居せず独り暮らしである場合は非常に心配である。

そこで提案したいことが、民間による「生活支援コーディネーター(仮称)」の配置による協働事業の展開である。一人でも誰かが常にサポートする(気にかける、支援する)、その“誰か”を確保することが重要であり、福祉だけでは量的にカバーしきれないとの観測からその一翼を福祉とともに民間が担うことを企図している。ただ、どのような条件で協働関係を構築できるか、互いの目的とメリットを共有できるかということが重要であり、その課題をクリアしなければこうした協働事業は生まれない。雑駁な提案であるが、未来の安心で豊かな超高齢社会を築いていけるように、こうした官民連携の協働事業が数多く開発され実行されていくことを大いに期待したい。
 
* 本稿は同タイトルの「研究員の眼」(2023年7月19日)で詳述している。
* 図表の出典根拠
 資料:国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2023年改訂版)」及び「日本の将来推計人口(令和5年推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計結果より作成
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生活研究部   上席研究員・ジェロントロジー推進室兼任

前田 展弘 (まえだ のぶひろ)

研究・専門分野
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)、超高齢社会・市場、QOL(Quality of Life)、ライフデザイン

(2023年08月08日「基礎研マンスリー」)

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