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生涯現役促進地域連携事業の実態~先進23地域の動向
生活研究部 上席研究員・ジェロントロジー推進室兼任 前田 展弘
そうした高齢者の活躍の場を拡げるために国(厚生労働省)が本気性を持って打ち出した政策の一つが筆者も期待する「生涯現役促進地域連携事業」である1。当事業は、地方自治体(都道府県/市区町村)が中心となって、まず所定の「地域高年齢者就業機会確保計画」を策定し、その上で地域の関係機関(自治体をはじめ高齢者の就業などに関係する機関)で組織する「協議会」 が、高齢者の活躍場所を拡げるための様々な活動を行っていく(基本形)。2016年4月に創設され、1年半が経過した現在(2017年10月)、全国では23の地域(都道府県12、市区町村11)で当事業が進められている(図表1)。なお、当事業は厚生労働省からの公募(継続的に実施される)に対して、各地方自治体が手を挙げて採択された場合に実施できる事業である。国からの年間の補助額(事業規模)は、都道府県の場合4000万円程度、政令指定都市及び特別区の場合3000万円程度、その他市町村の場合2000万円程度となっている。
図表2は、「誰がどのような分野」で高齢者の活躍の場を拡げようとしているかをまとめた一覧である。ご覧のとおり、事業構想提案団体である事業の主体者は前述した「協議会」が多い(17地域)。ただ、協議会という形態をとらず、1団体が単独で事業の主体者になっている地域もある(6地域)。どのような主体を置くか、体制を組むかは自治体の判断である。
また当事業は高齢者の活躍の場として積極的に開拓すべき「重点分野」を設定することが要件となっている。その分野を見ると、最も多いのが「介護や医療(関連事業)」(20地域・87%)、次いで、「観光(関連事業)」(19地域・83%)、「製造業・工業(関連事業)」(13地域・57%)となっている。それぞれの地域において、人手を増やしたい分野、高齢者が活躍しやすいと思われる分野(高齢者に活躍して欲しいと思う分野)として、これらの分野に重点が置かれていることがわかる。
当事業は2020年までに100地域、将来的には全ての自治体で当事業が展開されていくことが理想である2。当事業を知らなかった自治体の方はぜひこれらの情報を参考にしていただきながら、高齢者の活躍の場を拡げる取組みを加速するためにも当事業へ手を挙げていただきたい。また、高齢者の活躍を支援する団体などの方々も地元の自治体に働きかけるなかで、協働していただければ幸いである。年齢に関わらず活躍し続けられる社会の実現は、日本の未来にとって欠かせられない。日本の未来を支える事業として、当事業が今後も全国に拡充されていくことを期待する。
1 前田展弘「生涯現役促進地域連携事業の本来の意味」(研究員の眼、2016.11.17)
前田展弘「高齢者雇用政策の新たな展開~地域における高齢者の多様な就業機会の確保・拡充に向けて」(基礎研Report、2016.6.20)
2 厚生労働省へのヒアリングベース
(2017年10月06日「研究員の眼」)
生活研究部 上席研究員・ジェロントロジー推進室兼任
前田 展弘 (まえだ のぶひろ)
研究・専門分野
ジェロントロジー(高齢社会総合研究学)、超高齢社会・市場、高齢者就労問題、ライフデザイン、高齢者のQOL/well-being
03-3512-1878
- 2004年 :ニッセイ基礎研究所入社
2009年度~ :東京大学高齢社会総合研究機構 客員研究員
2022年度~ :東京大学未来ビジョン研究センター 客員研究員
2021年度~ :慶応義塾大学ファイナンシャル・ジェロントロジー研究センター 訪問研究員
2023年度 :早稲田大学Life Redesign College(人生100年時代の大学)講師
内閣官房「一億総活躍社会(意見交換会)」招聘(2015年度)
厚生労働省「生涯現役地域づくり普及促進事業有識者委員会」委員長(2024年度)
財務省財務総合政策研究所「高齢社会における選択と集中に関する研究会」委員(2013年度)、「企業の投資戦略に関する研究会」招聘(2016年度)
東京都「東京のグランドデザイン検討委員会」招聘(2015年度)
神奈川県「かながわ人生100歳時代ネットワーク/生涯現役マルチライフ推進プロジェクト」代表(2017-19年度)
生協総研「2050研究会(2050年未来社会構想)」委員(2013-14、16-18年度)
全労済協会「2025年の生活保障と日本社会の構想研究会」委員(2014-15年度)
一般社団法人未来社会共創センター 理事(全体事業統括担当、2020年度~)
一般社団法人定年後研究所 理事(2018-19年度)
【資格】 高齢社会エキスパート(総合)※特別認定者、MBA 他
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