2022年05月09日

2021年47都道府県・人口移動解説(上)-コロナ禍の長期化で人口移動はどう変わったのか

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー   天野 馨南子

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1――はじめに-東京への人口移動はいつも「女性」から始まる

筆者は2018年発表のニッセイ基礎研レポート『データでみる東京一極集中()』以降、日本における人口移動と、とりわけ顕著な「東京一極集中」の現状について、男女別、年齢ゾーン別に人口動態を分析し、人口の「社会減」(統計用語:あるエリアの人口が転入<転出となり、移動による人口の純減が起こっている状態)エリアでは、次のような事象が発生していることを訴えてきた。

(1) 男性を大きく上回る、女性の社会減が顕著となっているエリアが極めて多いこと
(2) 年齢ゾーンでいうと、20代前半の未婚者が就職による移動時期において大きく転出超過となっていること

最初に発表した2018年当時、自治体政策担当者や公益財団法人東北活性化研究センター(以下、活性研と略)から、そのレポートについての照会をいただいた。活性研では、東北各県が女性の社会減の規模が大きいエリアとして都道府県でみて上位にランクされていることを危惧し、「人口の社会減と女性の定着に関する意識調査」を行うことを決定した。

2020年夏に、人口の社会減を各人の直感的な感覚論で語るのではなく、人口動態のファクトに基づく、つまり統計的にみて社会減の大きい層にターゲティングしてアプローチする大規模アンケート調査が活性研によって行われた(筆者は同調査の企画検討委員会委員長に就任)。

同調査では、東北6県と新潟県の7エリアから首都圏に転出した女性を中心として、10代後半から20代の女性2300人への大規模アンケートならびにインタビュー調査を実施した1
 
さて、前述(1)(2)でも指摘した通り、人口の社会減は若い女性の移動が鍵を握っていることに注目されたい。この統計において明らかなファクトを軽視してきたことが、エリアにおける地方創生の敗因となっていることを、以下の人口動態の歴史からも強調したい。
 
東京一極集中の現状を正確に語れる者は多くない。以下の内容は、2020年に筆者が経団連の地域経済活性化委員会において解説した内容の一部に加筆したものである。
 
バブル景気が始まってからの東京都の人口転入超過(転出超過も含めて統計上は転入超過と呼ぶ)を俯瞰すると、以下の4期に分けることができる。
 
1期(1986年から1995年の10年間) 東京都から地方への「人口拡散期」
バブル景気の中で、まず女性の東京都から地方への転出超過が86年に発生し、それを追うように男性の転出超過が87年に発生
 
2期(1996年から2008年の13年間) 東京都への「人口集中期」
バブル崩壊後、まず女性の地方から東京都への転入超過が96年に発生、それを追うように男性の転入超過が97年に発生
 
3期(2009年から2019年までの11年間) 東京都への転入超過人口「男女集中の格差拡大期」
2008年のリーマンショック以降では、東京都への男女の集中格差が拡大し、恒常的に女性>男性の転入超過となる。バブル崩壊後となる2期もそうであったが、不景気といわれるフェイズが来ると地方から東京都への女性の転出圧力が一気に高まる。景気が悪化すると、地方における女性の経済力維持が男性以上に不安定になることが示唆されている。2014年に成立した地方創生関連2法は地方における女性流出の足止めにはならず、2015年以降は東京都への転入超過数は加速的に増加し、男女の人口集中格差もさらに広がった(女性の社会増/男性の社会増=2009年以降1.2倍程度⇒2015年以降1.4倍へ)。

また、2015年に施行された女性活躍推進法は、特に301人以上の企業に女性活躍のための行動指針を提出することを義務付けた(300人以下企業は努力義務にとどまった)ため、就職活動を行う若い男女にとっては、301人以上従業者総数のうち50%以上が集中する東京都の企業の女性活躍努力の「見える化」が顕著となった。
 
4期(2020年からコロナ禍の現在まで) 東京都における男女集中格差拡大「女性集中の加速期」
全国的に感染者数の多い都市部への足止めが起こったために、一見、東京都への集中は激減したかに見えている。これは東京都から地方への人口流入(取り戻し)が起こった結果というよりも、主に地方からの転出が減少した結果である。また、2020年の東京都の男女の集中格差(女性転入超過数/男性転入超過数)は2.2倍で過去最高倍率の男女アンバランスとなった。さらに、2021年は女性のみが東京都への転入超過となり、東京一極集中の本質が「女性一極集中(ならびに社会増)」であることが浮き彫りとなった。
 
当レポートの読者の地元において、人口の社会減の改善を目標に何かしら施策を考える、広報する、などを実施するにあたり、前述のように統計的なエビデンスとして最も大きな人口の社会減の要因と言える「若い女性の社会減」改善が掲げられているだろうか。

そのような対策を具体的に行っている自治体は多くはないだろう、と感じるのは筆者だけであろうか。
 
1 詳細は活性研より2021年3月に事業報告されている。

2――2021年人口の社会減 37道府県ランキング

2――2021年人口の社会減 37道府県ランキング

人口移動が年間で最も多くなるのは日本中どこであっても3月である。就職や就学のための移動の決断が全てコロナ禍となった2021年3月に、人口はどのように動いたのか、ランキング形式で示したい(図表1)。

2021年に人口移動により社会減(転出超過)となったエリアは、47都道府県(エリア)のうち37エリア(79%)であった。2020年は39エリアが社会減であったので、2エリアの減少となった。
 
総数および女性の人口を移動によって最も減らしたのは広島県である。 広島県は、2018年までは社会減エリアとして7位あたりにあった。しかし2019年にいきなり社会減1位のエリアとなり、8千人規模の社会減が発生した。2020年は5千人規模の転出超過で再度7位となったものの、人口の出控えが大きかった2021年も5千人規模の社会減を発生させ、再び社会減1位のエリアとなった。
 
社会減の大きなランキング移動は災害の発生が関係する可能性が高く、2018年の西日本大豪雨の影響が懸念される2。2位の福島県も2011年の東日本大震災後から、人口流出が止まらない状況にある。

このような背景を聞くと「それならば仕方がない」と思われるかもしれない。しかし、被災地の復興に、人口の社会減のエビデンスを組み合わせて考えるならば、若い男女、特に女性の就業環境を早急に整備するという視点で復興が行われているだろうか。これまでの施策では、女性誘致といえば既婚女性のイメージが強く、とかく出産支援、子育て支援、と女性人口といっても、偏ったイメージ(アンコンシャス・バイアス)に基づく誘致施策が行われてきたのではないか、と筆者は感じている。

いくら出産支援や子育て支援があろうとも、まずはそのエリアで若い独身の女性が安心して働ける環境がなければ、「そもそもそこにいない女性に出産・育児支援は届かない」のである。

人口の流出が20代前半の女性人口に大きく偏っている実態を把握しないままでの災害復興では、地元に次世代を担う人口を呼び戻すことは出来ない。

未婚化と離婚化が加速する令和時代において、パートナーの経済力に依拠しない男女がともに安心して暮らせる社会づくりこそが、若い男女のエリアからの転出を抑制し、結果としてそのエリアでの家族形成のベースが育まれることとなり、未来の可能性がある社会となるだろう。
【図表1】2021年 社会減(転出超過)道府県(エリア)ランキング(人)
2021年に社会減(転出超過)となった37エリアのうち、

(1)男性は減らなかったが、女性だけ減ったのは3エリア(北海道、熊本県、長野県)
(2)男性よりも女性が多く減ったのは27エリア
 
となり、合計30エリア(81%)において、社会減の最も大きな要因は男性よりも女性の減少(転出超過)であったことが示されている。北海道、熊本県、長野県に関しては、社会減対策は女性減対策であり、その他の27エリアでは、鹿児島県の39倍を筆頭に、多くのエリアにおいて看過できないほどの男女アンバランスな人口減少が発生していることがみてとれる。
 
尚、社会減が発生した37エリアにおける全国平均では、男性の1.36倍の女性がエリアから転出超過となっている。男性をエリアに呼び戻す目線の地方創生施策では、もはや奏功するとは言い難い。
 
2 西日本豪雨7カ月 止まらぬ人口流出 岡山・広島の被災地/産経新聞ネット版2019年2月7日
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

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