コラム
2020年04月13日

強まる東京一極集中(総数編)社会純減2019都道府県ランキング分析-最新純減ランキングにみる新たな動向-

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー   天野 馨南子

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なぜ地方創生において、「純増減」数をみるべきなのか

これまでのコラムで、人口移動について最も注目すべきは「グロスでみた流出数、流入数の大きさ」ではなく、その差としての「ネットの純増減である」と伝えてきた。
 
一番の理由は、多くの地方において男性よりも女性が社会移動によって大きく純減しているにも関わらず、日本全体(または個別エリアの多く)のグロスでみると男性流出数合計>女性流出数合計となっているために「男性の流出をまずは止めないといけない」といった思い込みが、いまだに地方創生に関してエビデンス的確認がないまま唱えられる傾向があるからである。
 
そもそも人口移動が着眼されるのは、社会移動によって過疎エリアと過密エリアとの間に人口格差が生じ、社会保障においても格差問題が生じてくることにある。

経済発展上の問題といった文脈で語られることが多いが、最終目標はその地域の人々の生活や社会保障のインフラが税収によって支え切れるかどうかである。その税収を確保するためには、産業発展はもちろん大切ではあるものの、それは同時に、エリア外への労働人口移動に歯止めをかけるものでなければならない。

労働人口のエリア外への純減を防止する産業発展を考えるにあたり、女性が男性よりも大きく減る中で、かつてのような男性労働者をメインに集める政策を考え続けていくとどうなるであろうか。
 
この政策の強化で男性は集まるかもしれないが、同時に女性をも集めて男女での家族形成をバランスよく促すという視点に欠ける誘致政策のために、婚姻出産による次世代人口育成が減速する。その地の出生数が示す「ふるさと人口」の減少は、その地にゆかりをもつ人口の人口減となり、さらにエリア外からの人口を呼び寄せにくくさせる。というのも、人口動態分析によると、同じエリア間の双方向の移動が大きい。エリア内の出生数が大きく減ることは、将来呼び寄せやすい傾向の転出した人口の還流規模も激減させることになる。地方創生において、UIJターンなどによる人口の流入が期待されているが、研究所における首都圏への移住者インタビュー調査においても、出身地へのUターン希望が最も現実的な希望としてあがっており、その他の希望については実現可能性という意味では弱い希望となっている。
 
このふるさと人口であるエリアの出生数増減を、統計上の強い相関で左右するのは合計特殊出生率ではなく、女性の社会移動純増減数であることを過去のレポートの分析結果(人口減少社会データ解説「なぜ東京都の子ども人口だけが増加するのか」(上)-10年間エリア子ども人口の増減、都道府県出生率と相関ならず-)で確認されたい。

令和元年は社会純減エリアに目立つ変化が発生

令和元年の社会移動による人口純減(以下、社会純減)は、過去3年の純減数ランキングの動きから見ると以下の目立った変化が生じた。
【図表1】2019年 エリア間社会移動による人口純減数ランキング(男女計・人)
1・東日本大震災以降、人口の大量純減が続いていた福島県の社会純減が純減数5位へとランクダウンし、まだまだ多いものの、ようやく震災の爪痕といえる減少は減速モードに入ってきた。
 
2・2017年、2018年では7000人以上純減したエリアが2エリア(2017年は福島県、岐阜県、2018年では茨城県、福島県)にとどまっていたが、2019年には4エリア(図表1)の広島県、茨城県、長崎県、新潟県に拡大した。
 
3・2017年、2018年の純減数では7位であった広島県が1位となった。これについては2018年7月に発生した西日本大豪雨の影響が大きいのではないかと考えられるが、同じく被害の大きかった岡山県の社会純減に大きな変化が見られないため、今後の推移の観察が必要1
 
4・これまでは純減数10位以内に岐阜県以外みられなかった中部エリアが、3エリアのランクインに増加した(三重県、静岡県、岐阜県)
 
自然災害が大きな要因の1つとみられる1と3の傾向を除く結果から考えると、これまで東京都を中心とする東京グループ(通勤圏である神奈川県、千葉県、埼玉県を含む)に多くの人口が流出してきた東北地方から、2019年においては、中部地方へと規模的な人口流出源がシフトしている様子がみてとれる。
 
また傾向の2について、社会純減エリアの1エリアあたりの平均純減数を計算してみると、年々増加してきている。このことから、人口純減エリアと人口純増エリアの社会純増減格差がより一層拡大していることが見て取れる(図表2)。
【図表2】2017年~2019年 社会純減エリア 1エリアあたり平均純減数の推移
 
1 しかしながら、内閣府非常災害対策本部資料「平成30年7月豪雨による被害状況等について」によれば、2018年7月22日時点の人的被害(死者)は、広島県107人が最多であり、岡山県61人、愛媛県26人と続く。

大都会との交通がよくなることは「諸刃の剣」―意図せざる飽和への配慮を

講演会でたびたびお伝えしているのは、「ここは交通が不便だから過疎化している。交通の便さえよくなれば人口は戻る」というあやまった思い込みの是正である。

過去の人口動態から明らかなことは、新幹線などの交通網がよくなることで、地方の思惑である「都会から地方へ戻ってくる」はずの若年人口が、真逆の方向へ大流出(都会への流出数増加)を加速化させている、という事実である。
 
これを筆者は塩水の飽和でたとえるのだが、その真ん中をガラスで完全に仕切った器の片方に濃い塩水、片方に真水があるとする。塩水に含まれる塩分は、その仕切りガラスを取り払うことによって器全体に飽和(拡散)していく。

その仕切りの取り払い方が大胆であればあるほど、あっという間に塩分の拡散が起こっていく。
 
IT化して、交通の便をよくして、といったインフラ強化だけの志向では、むしろ地方の若者の動きは、より多様なライフデザインが許容される都会へと向かっていく。

また別の機会に、都会と地方でのライフデザインの違いを分析した結果を掲載したいが、昭和型の家族観(男女観)、その家族観に基づく労働体制を変えていく、という、根本からの発想の転換にもとづく政策が求められていくものと思われる。そして、それを変えない限り、どんなに器の仕切りを工夫しても、器を新しくしてみても、塩水の拡散は止められないということを、特に社会純減エリアの方々にはご理解をいただきたい。
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

(2020年04月13日「研究員の眼」)

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