2021年11月05日

Facebook反トラスト訴訟FTCの修正申立ての概要

保険研究部 常務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長 松澤 登

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■要旨

米国連邦取引委員会(FTC)は、2020年12月にFacebookに対して、InstagramとWhatsAppを買収したこと、およびFacebookのプラットフォームの利用条項としてFacebook中核機能を複製した製品等との間で相互運用するアプリを排除することとした(中核機能制限条項)ことが、シャーマン法2条(反トラスト法、私的独占禁止)違反であるとして、その差し止めを求めて連邦裁判所に提訴した。
 
連邦裁判所はシャーマン法2条違反を認定するには、Facebookが関連市場である個人向けSNS市場で独占者であることが前提となる。しかし、Facebookのシェアが具体的に計測されていないので、独占者とは認定できない。また、中核機能制限条項は既に存在せず、この条項に基づくアプリの排除は8年前のことであり、現在のこととして差し止めはできないとした。
 
今般、2021年8月19日のFTCの修正申立てでは、Facebookの市場シェアは利用時間、一日当たり利用者数、月間利用者数で計測することができ、そのシェアは少なくとも65%であり、独占者と言えると主張する。また、中核機能制限条項についてFacebookは、議会や当局の調査があったため削除をしたが、調査が終了した後には復活をする可能性が高く、現在のこととして差し止めは認められるべきとした。
 
Facebookは、各国で競争法当局との間で競争法に基づく訴訟をし、あるいは課徴金命令等を受けている。米国における反トラスト法の最初の案件であり、今後の動向が注目される。

■目次

1――はじめに
2――提訴から中間判決までの経緯
3――中間判決が前提とした事実
  1|個人向けSNSとFacebook
  2|Facebookの行った排除行為
  3|InstagramとWhatsAppの買収
  4|アプリの相互運用性の制限
4――中間判決で示された裁判所の判断の概要
  1|結論
  2|関連市場と独占力―FTCの主張の分析
  3|関連市場と独占力―裁判所の判断
5――FTCの修正申し立ての概要
  1|総論
  2|個人向けSNSにおけるシェアの計測
  3|市場支配力を証明する直接証拠
  4|参入障壁の存在
  5|中核機能制限条項は「違反を継続し、違反をしようとする」との要件を満たす
6――検討
7――おわりに
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保険研究部   常務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

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