- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経営・ビジネス >
- 法務 >
- Facebook反トラスト訴訟中間判決の概要-FTCの主張は棄却するも訴訟は継続
2021年08月30日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
■要旨
米国連邦取引委員会(FTC)がFacebookをシャーマン法2条(私的独占の禁止)違反として差し止め等を求めて提訴した訴訟について、ワシントン地区連邦地裁は中間判決を下した。それによると、訴訟自体は棄却しないものの、FTCの主張について否定し、主張の出し直しを認めることとした。
FTCの主張としては、Facebookは個人向けSNSにおいて独占的な事業者であり、(1)InstagramとWhatsAppの買収・保有を通じて違法に独占的状態を維持したこと、(2)Facebookプラットフォームにおいて、第三者独立アプリ開発者に対して、競合する機能を有する製品の促進につながる行為を禁止し、違反とみなした開発者との相互接続を解除したことは違法な排除行為であるとする。
裁判所の判断としては、個人向けSNS市場の存在は認定可能であるが、そのうちでFacebookがどの程度のシェアを占めているかFTCは示していない。したがって個人向けSNS市場でFacebookが独占力を有するということは立証されていないとする。また、競合する機能を有する製品の促進につながるアプリとの相互接続を解除する行為は、それ自身違法な行為とは言えず、仮に言えるとしても行為としては8年以上前のことで差止を求めることはできないとする。以上から、FTCの主張はいずれも認められないとする。
このように裁判所はFTCの主張を認めなかったが、Facebook側のInstagram等の買収は過去のことであって差止できないとする主張も、買収とは資本関係を維持することも含むとして否定した。
なお、8月18日段階でFTCが再度主張を行っているが、別途検討することにしたい。
■目次
1――はじめに
2――裁判所の事実認定
1|個人向けSNSとFacebook
2|InstagramとWhatsAppの買収
3|アプリの相互運用性の制限
3――裁判所の判断
1|結論
2|関連市場と独占的シェア―原告の主張の分析
3|関連市場と独占的シェア―裁判所の判断
4――裁判所による補足的なガイダンス
1|取引拒絶
2|条件付き取引
3|過去の企業買収への反トラスト法適用
5――検討
1|裁判所が認めたこと
2|裁判所が認めなかったこと
6――おわりに
米国連邦取引委員会(FTC)がFacebookをシャーマン法2条(私的独占の禁止)違反として差し止め等を求めて提訴した訴訟について、ワシントン地区連邦地裁は中間判決を下した。それによると、訴訟自体は棄却しないものの、FTCの主張について否定し、主張の出し直しを認めることとした。
FTCの主張としては、Facebookは個人向けSNSにおいて独占的な事業者であり、(1)InstagramとWhatsAppの買収・保有を通じて違法に独占的状態を維持したこと、(2)Facebookプラットフォームにおいて、第三者独立アプリ開発者に対して、競合する機能を有する製品の促進につながる行為を禁止し、違反とみなした開発者との相互接続を解除したことは違法な排除行為であるとする。
裁判所の判断としては、個人向けSNS市場の存在は認定可能であるが、そのうちでFacebookがどの程度のシェアを占めているかFTCは示していない。したがって個人向けSNS市場でFacebookが独占力を有するということは立証されていないとする。また、競合する機能を有する製品の促進につながるアプリとの相互接続を解除する行為は、それ自身違法な行為とは言えず、仮に言えるとしても行為としては8年以上前のことで差止を求めることはできないとする。以上から、FTCの主張はいずれも認められないとする。
このように裁判所はFTCの主張を認めなかったが、Facebook側のInstagram等の買収は過去のことであって差止できないとする主張も、買収とは資本関係を維持することも含むとして否定した。
なお、8月18日段階でFTCが再度主張を行っているが、別途検討することにしたい。
■目次
1――はじめに
2――裁判所の事実認定
1|個人向けSNSとFacebook
2|InstagramとWhatsAppの買収
3|アプリの相互運用性の制限
3――裁判所の判断
1|結論
2|関連市場と独占的シェア―原告の主張の分析
3|関連市場と独占的シェア―裁判所の判断
4――裁判所による補足的なガイダンス
1|取引拒絶
2|条件付き取引
3|過去の企業買収への反トラスト法適用
5――検討
1|裁判所が認めたこと
2|裁判所が認めなかったこと
6――おわりに
(2021年08月30日「基礎研レポート」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1866
経歴
- 【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2024年4月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月
松澤 登のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/03/11 | 貸金庫契約とは-法的性質と実務 | 松澤 登 | 研究員の眼 |
2025/02/20 | 2022偽情報に関する実施規範-EUにおける自主規制 | 松澤 登 | 基礎研レポート |
2025/02/13 | 選挙におけるSNS偽情報対策-EUのDSAにおけるガイドライン | 松澤 登 | 基礎研レポート |
2025/01/24 | 第三者委員会とは-内部調査委員会との相違 | 松澤 登 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年03月19日
日銀短観(3月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは2ポイント低下の12と予想、トランプ関税の影響度に注目 -
2025年03月19日
孤独・孤立対策の推進で必要な手立ては?-自治体は既存の資源や仕組みの活用を、多様な場づくりに向けて民間の役割も重要に -
2025年03月19日
マンションと大規模修繕(6)-中古マンション購入時には修繕・管理情報の確認・理解が大切に -
2025年03月19日
貿易統計25年2月-関税引き上げ前の駆け込みもあり、貿易収支(季節調整値)が黒字に -
2025年03月19日
米住宅着工・許可件数(25年2月)-着工件数(前月比)は悪天候から回復し、前月から大幅増加、市場予想も上回る
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【Facebook反トラスト訴訟中間判決の概要-FTCの主張は棄却するも訴訟は継続】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
Facebook反トラスト訴訟中間判決の概要-FTCの主張は棄却するも訴訟は継続のレポート Topへ