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- デジタル・プラットフォーマーと競争法(4)-Appleを題材に
2021年06月16日
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■要旨
Appleは、iPhoneやiPadなどのデジタル端末の販売と、アプリストア経由で各種デジタルサービスを提供あるいは仲介する巨大なデジタルプラットフォーム事業者である。スマートフォンに限れば、GoogleのAndroid端末とAppleのiOS端末とで市場をほぼ二分している。
Appleは巨大であるが故、競争法の問題が指摘され、実際に調査を受け、あるいは訴訟を提起されている。欧州では競争法当局である欧州委員会が、iOS端末のアプリストアであるApp Storeでのアプリ販売にあたって、アプリ内課金システムの利用を強制し、30%の手数料を徴収することの問題につき調査を行った。
2021年4月欧州委員会は音楽ストリーミングサービスにおいて、アプリ内課金システムの利用を強制し、App Store経由以外の楽曲購入を禁止し、30%もの手数料を課したことが市場独占力の濫用に該当するとの暫定的な見解を示した。
米国では、2020年8月にエピックゲーズムが自社のフォートナイトというゲームにおいて、Appleのアプリ内課金システムを迂回する自社課金システムを仕組んだバージョンを配布した。これを受け、Appleは、エピックゲーズムのゲームをApp Storeから削除等した。これに対して、エピックゲーズムはAppleの行為は競争法違反として、削除行為の仮差し止めを求めた。北カルフォルニア連邦地裁は2020年10月にエピックゲーズムの一部主張を認めたが、ゲームの削除の差し止めは認めなかった。
欧州委員会の調査はSpotifyという音楽ストリーミングサービスからの申立を受けて行ったもので、AppleにもApple Musicという競合サービスがあったことが競争法違反を認める暫定的な見解の前提になっているという当該見解の射程の問題はある。しかし、アプリストアの市場における重要性を考慮すると、アプリストア全体に関して、何らかの形で競争の回復が求められることになりそうである。
■目次
1――はじめに
2――Appleのビジネスモデル
1|アップルの製品とサービス
2|アプリストア
3――欧州委員会による競争法違反の調査
1|アプリストアに対する調査開始
2|アップルペイに対する調査開始
3|音楽ストリーミングサービスにおけるEU委員会の暫定的見解
4――米国での訴訟動向
1|エピックゲーズムによる差し止め訴訟の提起
2|エピックゲームズの主張
3|その後の動き
5――検討
1|報告書における考え方
2|欧米の調査・訴訟の行方
6――おわりに
Appleは、iPhoneやiPadなどのデジタル端末の販売と、アプリストア経由で各種デジタルサービスを提供あるいは仲介する巨大なデジタルプラットフォーム事業者である。スマートフォンに限れば、GoogleのAndroid端末とAppleのiOS端末とで市場をほぼ二分している。
Appleは巨大であるが故、競争法の問題が指摘され、実際に調査を受け、あるいは訴訟を提起されている。欧州では競争法当局である欧州委員会が、iOS端末のアプリストアであるApp Storeでのアプリ販売にあたって、アプリ内課金システムの利用を強制し、30%の手数料を徴収することの問題につき調査を行った。
2021年4月欧州委員会は音楽ストリーミングサービスにおいて、アプリ内課金システムの利用を強制し、App Store経由以外の楽曲購入を禁止し、30%もの手数料を課したことが市場独占力の濫用に該当するとの暫定的な見解を示した。
米国では、2020年8月にエピックゲーズムが自社のフォートナイトというゲームにおいて、Appleのアプリ内課金システムを迂回する自社課金システムを仕組んだバージョンを配布した。これを受け、Appleは、エピックゲーズムのゲームをApp Storeから削除等した。これに対して、エピックゲーズムはAppleの行為は競争法違反として、削除行為の仮差し止めを求めた。北カルフォルニア連邦地裁は2020年10月にエピックゲーズムの一部主張を認めたが、ゲームの削除の差し止めは認めなかった。
欧州委員会の調査はSpotifyという音楽ストリーミングサービスからの申立を受けて行ったもので、AppleにもApple Musicという競合サービスがあったことが競争法違反を認める暫定的な見解の前提になっているという当該見解の射程の問題はある。しかし、アプリストアの市場における重要性を考慮すると、アプリストア全体に関して、何らかの形で競争の回復が求められることになりそうである。
■目次
1――はじめに
2――Appleのビジネスモデル
1|アップルの製品とサービス
2|アプリストア
3――欧州委員会による競争法違反の調査
1|アプリストアに対する調査開始
2|アップルペイに対する調査開始
3|音楽ストリーミングサービスにおけるEU委員会の暫定的見解
4――米国での訴訟動向
1|エピックゲーズムによる差し止め訴訟の提起
2|エピックゲームズの主張
3|その後の動き
5――検討
1|報告書における考え方
2|欧米の調査・訴訟の行方
6――おわりに
(2021年06月16日「基礎研レポート」)
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03-3512-1866
経歴
- 【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2025年4月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月
松澤 登のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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2025/04/28 | 欧州委、AppleとMetaに制裁金-Digital Market Act違反で | 松澤 登 | 研究員の眼 |
2025/04/18 | 資金決済法の改正案-デジタルマネーの流通促進と規制強化 | 松澤 登 | 基礎研レポート |
2025/04/16 | 公取委、Googleに排除命令-その努力と限界 | 松澤 登 | 研究員の眼 |
2025/04/11 | AlphabetにDMA違反暫定見解-日本のスマホ競争促進法への影響 | 松澤 登 | 研究員の眼 |
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【デジタル・プラットフォーマーと競争法(4)-Appleを題材に】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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