2019年12月12日

EUのデジタルプラットフォーマー規則

保険研究部 専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長 松澤 登

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■要旨

GAFAなどのデジタルプラットフォーマーは、個人データ等を蓄積することを通じ、デジタルプラットフォームを利用する事業者に対して、大きな影響力を及ぼすことができるようになってきた。政府からは、デジタルプラットフォーマーと利用事業者との間の取引を透明化する法案を提出する方向性が示されている。
 
この点に関し、EUではデジタルプラットフォーマーの取引を透明化するための規則が制定・公布され、2020年7月より効力が発生することとされている。規則は商品・サービスを仲介するオンライン仲介サービス企業と、ウェブページを検索するオンライン検索エンジン企業とをその規制対象としている。
 
規則では、オンライン仲介サービス企業につき、利用事業者との間で締結する契約に一定の条項を定めるべきことや、仲介サービスを停止・解除する場合に所定の手続を経るべきこと、また、収集される個人データ等を利用できる者やその範囲・条件等を明確化すべきこと等が求められている。
 
また、オンライン仲介サービス企業とオンライン検索エンジン企業共通の規律として、ランキングがどのような変数(parameters)に基づいて算出されているかを明確にすること、またオンライン仲介サービス企業等自身が提供する商品・サービスと、他の事業者・ウェブ開設者の提供する商品・サービスとで差別化された取扱をする場合は、その旨と根拠を示すことが求められている。
 
EUの規則は日本での立法作業に当たって参考になる。日本でも、イノベーションを阻害せず、かつ公正な取引を促進するために、デジタル社会における法的なインフラとして早期の立法が望まれる。

■目次

1――はじめに
2――公布されたEU規則
  1|経緯
  2|オンライン仲介サービスのビジネスユーザーへの公平性・透明性促進規則
3――EU規則の概要
  1|適用範囲
  2|オンライン仲介サービス企業の契約条項に設けるべき条項
  3|オンライン仲介サービス企業による事業者へのサービスの制限、停止、解除
  4|オンライン仲介サービスにおける個人データ等の利用
  5|オンライン仲介サービスとは別のチャネルを通じたサービス・商品の提供の制限
  6|ランキング
  7|差別化された取り扱い
4――紛争解決
5――おわりに
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保険研究部   専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴
  • 【職歴】
     1985年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
     2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
     2018年4月 取締役保険研究部研究理事
     2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
     2024年4月より現職

    【加入団体等】
     東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
     東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
     大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
     金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
     日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

    【著書】
     『はじめて学ぶ少額短期保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2024年02月

     『Q&Aで読み解く保険業法』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2022年07月

     『はじめて学ぶ生命保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2021年05月

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【EUのデジタルプラットフォーマー規則】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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