- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 政策提言 >
- 規制・制度改革 >
- 「データ利活用」と「プライバシー」
「データ利活用」と「プライバシー」
中村 洋介
このレポートの関連カテゴリ
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1――データを利活用するインターネット広告
昨今、インターネット広告が高い伸びを見せている。株式会社電通の推計(図表1)によれば、2018年における日本のインターネット広告費は2012年の2倍にもなった。新聞、雑誌、ラジオ、テレビの広告費と比べると、その勢いは歴然としている。消費者向けの製品・サービスを扱う企業の多くが、インターネット広告を強化し、当たり前のように使っているのが現状だ。
仮に、データを活用して広告収入を得るのではなく、ユーザーから課金(有料化)するとなったらどうなるのか。公正取引委員会がデジタル・プラットフォーマーの実態調査の一環として行った消費者向けアンケート調査(図表2)で、SNSや検索サービスが有料化されたらどうするかという設問がある。調査の結果では、多くのユーザーが利用をやめる、他の無料サービスに乗り換えると回答した。他の代替サービスが全く無い、代替サービスがあっても無料サービスが無いということであれば少し話は変わるかもしれないが、ユーザーから課金するのはそう簡単ではなさそうだ。その意味では、ユーザー(消費者)の「紐が固いお財布」を狙うより、マーケティングに積極的な企業の「大きな広告予算」を狙うのは理にかなったやり方と言える。
2――高まるプライバシーへの懸念
インターネット広告に代表されるように、データの積極的な利活用によって、イノベーションが産まれ、市場は拡大する。便利なサービスも提供されるようになる。一方、プライバシーへの配慮を求める声は日に日に高まっており、企業はその声を無視できない。ただ、過度な規制やルールは新しいイノベーションの芽を摘む可能性がある。データの利活用に向けては、消費者の便益向上、イノベーションの推進、プライバシーへの配慮等、バランスの取れた議論を進めていくことが必要だろう。成長戦略でデータ利活用が前面に押し出される中、政府が謳う「データ駆動型社会」がより良い形で実現するよう、前向きな議論が進むことを期待したい。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2019年05月24日「研究員の眼」)
このレポートの関連カテゴリ
中村 洋介
中村 洋介のレポート
| 日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
|---|---|---|---|
| 2021/10/01 | 岸田新政権によるスタートアップ支援への期待 | 中村 洋介 | 研究員の眼 |
| 2021/07/06 | スタートアップとの連携、問われる本気度 | 中村 洋介 | 研究員の眼 |
| 2021/03/15 | 関西のスタートアップ・エコシステム構築への期待 | 中村 洋介 | 基礎研レポート |
| 2020/07/16 | 「情報銀行」は日本の挽回策となるのか | 中村 洋介 | ニッセイ基礎研所報 |
新着記事
-
2025年11月18日
今週のレポート・コラムまとめ【11/11-11/17発行分】 -
2025年11月17日
タイGDP(25年7-9月期)~外需の鈍化と観光の伸び悩みで景気減速 -
2025年11月17日
【令和時代の2人の姿】入籍月の変化にみる「イマドキの選択」とは -
2025年11月17日
QE速報:2025年7-9月期の実質GDPは前期比▲0.4%(年率▲1.8%)-トランプ関税の影響が顕在化し、6四半期ぶりのマイナス成長 -
2025年11月14日
マレーシアGDP(2025年7-9月期)~内需は底堅く、外需は純輸出が改善
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【「データ利活用」と「プライバシー」】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
「データ利活用」と「プライバシー」のレポート Topへ












