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コラム
2021年10月01日
1――岸田氏もスタートアップ支援の強化を掲げる
9月29日投開票の自由民主党総裁選で勝利した岸田文雄氏が、10月4日召集の臨時国会で第100代の首相に指名される見込みだ。総裁選では、「成長なくして分配なし」とする一方で、「分配なくして次の成長なし」とも主張し、成長と分配の好循環による新たな日本型資本主義の実現、これまでの新自由主義的な政策からの転換を掲げた。「令和版所得倍増のための分配施策」として、子育て世帯の住居費や教育費の支援や看護師、介護士等の収入増などを打ち出している。
一方の成長戦略としては、「科学技術立国」や「デジタル田園都市構想」の実現などに加えて、「スタートアップへの徹底支援」が掲げられた(図表1)。オープンイノベーションへの税制優遇や政府調達を通じた支援などを具体策として提示している。スタートアップ支援という点では、岸田新政権のもとでも、成長戦略として支援を強化してきた安倍政権、菅政権の流れを受け継ぎ、一層強化することを視野に入れていると見られる。
より具体的な政策の中身はこれからだが、科学技術立国の実現に向けて、10兆円規模の大学ファンドの創設や研究開発などを行う企業を支援する大胆な税制などを掲げ、科学技術とイノベーションへの投資を抜本的に拡大させることへの意欲を見せていることから、創薬やバイオテクノロジー、再生可能エネルギーなどのクリーンテクノロジーなどを手掛ける研究開発型スタートアップ、大学発スタートアップの支援が拡充されることにも期待がかかる。また、デジタル田園都市構想の実現に向けて、デジタルインフラの拡充やデジタル技術の社会実装が推し進められ、より世の中のデジタル化の機運を高めることができれば、シニア層や中小・零細企業へのデジタルサービスなどを手掛けるスタートアップやフリーランスのビジネスチャンスが広がることも考えられる。
より具体的な政策の中身はこれからだが、科学技術立国の実現に向けて、10兆円規模の大学ファンドの創設や研究開発などを行う企業を支援する大胆な税制などを掲げ、科学技術とイノベーションへの投資を抜本的に拡大させることへの意欲を見せていることから、創薬やバイオテクノロジー、再生可能エネルギーなどのクリーンテクノロジーなどを手掛ける研究開発型スタートアップ、大学発スタートアップの支援が拡充されることにも期待がかかる。また、デジタル田園都市構想の実現に向けて、デジタルインフラの拡充やデジタル技術の社会実装が推し進められ、より世の中のデジタル化の機運を高めることができれば、シニア層や中小・零細企業へのデジタルサービスなどを手掛けるスタートアップやフリーランスのビジネスチャンスが広がることも考えられる。
2――求められる長期で続けるブレない姿勢
岸田新政権の支援に期待がかかるところだが、スタートアップの創出や育成、そしてスタートアップ・エコシステムの構築に向けた取り組みは、短期で成果が出るものではない。例えば、研究開発型のスタートアップのビジネスが立ち上がるまでには長い期間と多くの資金が必要になる。研究開発や資金調達に頓挫し、事業が立ち行かなくなるケースも多い。科学技術立国にふさわしい、研究開発型のスタートアップが次々と生まれ、成長するようなスタートアップ・エコシステムを作り上げようとするのであれば、長期的な視点で支援を継続する必要がある。まだ新型コロナウイルスが完全に終息したわけではなく、まだまだ霧が晴れない状況が続くからこそ、長期で支援を続けるブレない姿勢が求められる。
一方、コロナ禍においても、日本のスタートアップをめぐる環境が着実に前進していることは、岸田新政権にとっても追い風となる。一時は急落した株価は、足もと不安定さを見せているものの依然として高値圏にあり、新規上場数も堅調に推移している。スタートアップの資金調達金額は底堅く推移しており、大型の資金調達も見られる。ここ数年でスタートアップとの連携や資本提携を増やしてきた大企業の姿勢も大きくは変わっていないように見える。
さらに、海外の投資家が日本のスタートアップに投資する事例も増えてきた。例えば、バイオ素材の開発を手掛けるSpiber(山形県鶴岡市)は、この9月に米国のカーライルやフィデリティ、英国のベイリー・ギフォード等から大型の資金調達を行うことを発表した。また、海外の有力企業に買収されるスタートアップも現れた。米決済大手ペイパル・ホールディングスは、後払いサービスを手掛けるPaidy(東京都港区)を3,000億円で買収することを発表した。長らく、内外の有力企業が買収したいと思うようなスタートアップが少ない、EXITがIPOに偏重しているなどと言われてきたが、米国の大手IT企業から3,000億円もの評価額で買収される企業が出てきたことは、非常に画期的なことである。
一方、コロナ禍においても、日本のスタートアップをめぐる環境が着実に前進していることは、岸田新政権にとっても追い風となる。一時は急落した株価は、足もと不安定さを見せているものの依然として高値圏にあり、新規上場数も堅調に推移している。スタートアップの資金調達金額は底堅く推移しており、大型の資金調達も見られる。ここ数年でスタートアップとの連携や資本提携を増やしてきた大企業の姿勢も大きくは変わっていないように見える。
さらに、海外の投資家が日本のスタートアップに投資する事例も増えてきた。例えば、バイオ素材の開発を手掛けるSpiber(山形県鶴岡市)は、この9月に米国のカーライルやフィデリティ、英国のベイリー・ギフォード等から大型の資金調達を行うことを発表した。また、海外の有力企業に買収されるスタートアップも現れた。米決済大手ペイパル・ホールディングスは、後払いサービスを手掛けるPaidy(東京都港区)を3,000億円で買収することを発表した。長らく、内外の有力企業が買収したいと思うようなスタートアップが少ない、EXITがIPOに偏重しているなどと言われてきたが、米国の大手IT企業から3,000億円もの評価額で買収される企業が出てきたことは、非常に画期的なことである。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2021年10月01日「研究員の眼」)
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