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新型コロナワクチンを「接種したくない」と思っていた人が接種を決めた理由

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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1――はじめに
本稿では、第5回調査4(2021年7月5~7日実施)と第6回調査5(9月22~29日実施)の両方に回答をした2,347人のうち7月時点ではワクチンをすぐには接種を希望していなかったが、9月時点では接種をしていた、あるいは接種予約をしていた人の、7月時点におけるワクチンをすぐには接種したくなかった理由、7~9月における感染不安の変化、ワクチン接種(予約)理由を紹介し、今後のワクチン接種体制で考慮すべき点について考えたい。
1 村松容子「新型コロナワクチンをすぐにでも 接種したい人とは?~同居家族のリスクへの配慮や収束後の行動への期待」ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート(2021年6月15日)
2 村松容子「新型コロナワクチンをすぐには接種しない人の理由と特徴~「安全性への不安」「順番待ち・様子見」「面倒」「ワクチン不要」」ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート(2021年6月15日)
3 村松容子「ワクチン接種意向は高まったが、副反応への不安は依然として高い~効果を認めつつも接種を躊躇している人をどう後押しするか」ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート(2021年7月20日)
4 20~74歳男女個人を対象とするインターネット調査。2021年7月5日~7日実施。有効回答数2,582。詳細は、「第5回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」 調査結果概要をご参照ください。
5 20~74歳男女個人を対象とするインターネット調査。2021年9月22日~29日実施。有効回答数2,579。詳細は、「第6回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」 調査結果概要をご参照ください。
2――7月から9月における接種状況・意向の変化~7月に「接種希望なし」の半数は9月にも「接種希望なし」」。4割は「予約・接種済」
それからおよそ3か月後の9月の調査時点では、「予約・接種済」が81.5%であり、「未予約・意向あり」が7.8%、「接種希望なし」が10.8%と、接種が進んでいた。「まだ予約していないが、すぐにでも接種したい」は2.8%と、予約待ちである人は大幅に減少していた。接種意向のある人はおおむね予約まで終えたと考えられそうだ。
続いて、7月の接種状況・意向別の9月時点での接種状況・意向を図表2に示す6。全体でみると、7月時点で「未予約・意向あり」の8割以上が既に予約、または接種を済ませていた。「接種希望なし」だった人の半数近くが9月時点でも「接種希望なし」だったが、36.8%が9月時点で「予約・接種済」となっていた。
図表1と図表2を年代別にみると、60歳未満と60歳以上で差が大きい。60歳未満では7月の時点で「予約・接種済」だったのは2割強、「未予約・意向あり」が過半数を占めた。7月時点の意向別に9月の接種状況・意向をみると、「接種希望なし」の4割弱が「予約・接種済」となっていた。一方、60歳以上では、7月の時点で既に7割近くが「予約・接種済」だったが、7月の時点で「接種希望なし」だった人で9月に「予約・接種済」だったのは3割程度にとどまった。60歳以上では、7月の時点で希望すれば予約はできる状況にあった自治体が多かったことから、若い世代と比べて9月までに意向が変わった人が少なかったものと考えられる。
6 7月時点で「予約・接種済」は図示を省略した。
3――ワクチンをすぐには接種したくない理由(7月時点)~「希望しない→予約・接種済」で、“様子見・順番待ち”、「希望なし(7~9月)」で“安全性への不安”“ワクチン不要”
このことから、ワクチン接種意向としては、「あまり/絶対に接種したくない」と回答しているという点では同様だったが、(2)「希望なし→予約・接種済」は、(3)「希望なし(7~9月)」と比べると、ワクチン接種をまったく検討していなかったわけではなく、周囲の接種の様子を見ていた人が多かったと考えられる。
4――感染による健康への影響に関する不安~「適切な治療が受けられない」不安の有無でちがい
つづいて「感染しても適切な治療が受けられない」に関して、不安と感じている人の割合は、7月時点で(2)「希望なし→予約・接種済」が42.2%、(3)「希望なし(7~9月)」が42.8%と、(2)と(3)に差はなかった。ところが、9月には、順に57.1%、45.2%であり、(2)が15ポイント上昇したのに対し、(3)は2.4ポイントの上昇にとどまり、(2)と(3)に差ができていた。この3か月間は、自宅療養中に死亡した事例や、救急搬送ができなかった事例が多く取り上げられ、重症化しても治療が受けられない懸念が広がった。図表3のとおり、(2)は(3)と比べると、「自分は重症化しない」と考えている割合は低く、治療ができない不安が特に高まったと考えられる。
5――ワクチンを接種した理由(9月)~「予約・接種済(7~9月)」で自分や周囲のリスク軽減と「打つものだと思っていた」。「希望なし→予約・接種済」では家族の勧めや不利益をこうむりそう、周囲の接種状況
6――おわりに
(2)「希望なし→予約・接種済」を(1)「予約・接種済(7~9月)」や(3)「希望なし(7~9月)」を比較すると、(2)は、(3)と比べて、7月の時点で感染による健康状態の悪化に不安を感じる割合が高かったほか、9月の時点では、感染しても適切な治療が受けられない不安が大幅に上昇していた。7月の時点でワクチン接種希望がなかったものの、接種をまったく検討していなかったわけではなく、周囲の接種の様子を見ていた人が多かったと思われ、周囲の接種状況や、国内の感染状況、医療ひっ迫の状況等を踏まえて接種を検討したと推測できる。ワクチン接種理由は、ワクチンの効用に期待した回答も多かったが、(1)と比べると少なく、家族の勧めや周囲の人の接種状況、接種済み証明(ワクチンパスポート)の活用に関する議論を考慮して接種したなどの消極的な理由であった人も一定程度あるようだ。(1)との大きな違いとして、(1)は「(ワクチンを)打つものだと思っていた」が3割を超えていることがあげられる。「インフルエンザワクチン接種者の新型コロナワクチン接種意向7」でも触れたとおり、ワクチンで感染症を予防しようとする考えには個人差があると考えられた。
9月の調査で、「まだ予約していないが、すぐにでも接種したい」は2.8%にとどまり、接種意向のある人はおおむね予約を終えていると考えられそうだ。現在、接種意向がない人は、感染不安や適切な治療が受けられない不安、重症化する不安が相対的に低く、ワクチン接種に対する安全性への不安が高い人やワクチン不要との考えが多い。今後は、感染の再拡大や重症化リスクの高い変異株の出現、自分自身や同居家族が転職や持病の発症等によって感染や重症化リスクが高まったとき、副反応の頻度や程度が現在より低いワクチンが開発されたとき等に接種意向が生じる可能性があるため、必要な時に接種できる仕組みが必要だろう。
7 村松容子・岩﨑敬子「インフルエンザワクチン接種者の新型コロナワクチン接種意向」ニッセイ基礎研究所 基礎研レポート(2021年8月5日)
(2021年10月20日「基礎研レポート」)
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03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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