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新型コロナ禍2年目上半期、人口の社会減はどこで起こったのか(上)―新型コロナ人口動態解説(10)
生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子
【はじめに】転出超過エリアは40エリア
コロナ禍が長期化する中で、出控えの機運が高まる中でも、やはり引っ越しによって「転入者数」<「転出者数」となり、人口減少している(社会減)エリアは40道府県となった。
40エリア全体では9万847人の移動による人口減少となった。うち男性の減少が3万8,321人、女性が5万2,526人となっており、男性の1.37倍の人数の女性が40エリア平均で減少していることが示された。
40エリア平均でみると、移動による人口減の約6割が女性、約4割が男性ということになる(図表1)。
総数で4000人以上減少したエリアは8エリア
男女の減少アンバランス度合いが全国平均以上のうち福島県や静岡県は、首都圏への新幹線の便もよく、また、若い男女が大学在学中にちょっとした週末の旅行やイベント参加において経済的に利用しやすい高速バスでの首都圏へのアクセス(かかる時間や費用など)も良好である。このため、地元大学在学中の若い女性の「首都圏慣れ」が発生しやすいエリアでもある1。広島県については大阪府へのアクセスが良好なため、同様の理由で男女アンバランスが生じやすいとみられる。
男女の減少アンバランスが平均以上の3エリアのうち、福島県は2011年の東日本大震災による原発事故の発生以降、広島県では2018年の西日本豪雨の甚大な災害が発生以降、転出超過が強まる傾向が続いている。
情報化社会の進展とともに大災害に関する情報の拡散や拡散スピードの加速化への迅速な対応の重要性が高まっている。特に地方創生の観点からはこの点を重視したい。なぜなら、人口の転出超過の急速な拡大にほぼ確実につながっていくからである。
筆者が依頼を受けたある地方創生案件で、ある年の人口転出超過がなぜ急に拡大したのかわからないと自治体の政策担当者が頭を抱えていることがあった。そこで月別のデータを提供していただき確認すると、他の年には見られない特定の月に転出が集中していた。
それは台風による中規模な風水害の翌月であった。
つまり、情報化社会において、災害後の迅速かつ多面的な対策(災害復興+人々のイメージ回復)をこれまで以上に急がないと、とりわけ若い世代の流出抑止や移住・定住施策に大きな支障をきたすことにもつながる。
最後に、この8エリアについて、コロナ禍前である2019年の年間転出超過数(男女合計)と2021年上半期の状況を比較すると、福島県、青森県は8割水準、長崎県、新潟県、兵庫県、静岡県は7割水準、岐阜県は6割水準という状況であり、人口の大移動が起こる3月を超えたとはいえ、予断の許さない状況であるといえるだろう(図表3)。
1 地元大学在学中の若い女性の「首都圏慣れ」について:2020年に東北活性化研究センターが実施した女性定着調査(主に東北6県+新潟県から首都圏に転出した女性)のヒアリング調査(筆者がインタビュアーを担当)において、高校時代には東京都のことを「海外」「異次元」と捉えて不安を感じていた女性たちも、大学時代に何度も東京にイベント参加やインターンなどで訪れることによって「全然怖くない」「私でもなじめる」と考えるようになる姿が浮き彫りとなった。
03-3512-1878
(2021年08月30日「研究員の眼」)
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