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新型コロナ人口動態解説(1)-対男性223%増、強まる東京都の女性偏在
生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子
はじめに
2021年1月末現在、政府のオープンデータにて2020年12月末までの状況が確認できる。2020年1月から4月までは、東京都は例年通りの転入超過となっており、入学・入社のための引っ越しシーズンの3月には、前年2019年を超える数の男女が東京都に転入超過していた1。
しかしながら緊急事態宣言解除後も感染が拡大していく中で、その後は6月を除く5月から12月の計7か月において、東京都の人口転出超過が発生している(図表1)。
コラム「新型コロナ人口動態解説」では、シリーズにて東京都における新型コロナによる転出超過の中身の詳細をお伝えしていきたい。
初回は、顕著な変化が見られている男女バランスについて、2020年における東京都の人口の転入超過状況を月別・男女別に示し、2019年との比較において判明した重要な結果について注意喚起をしたい。
1 2019年3月合計39,556人、男性18,022人、女性21,534人に対し、2020年3月合計40,199人、男性18,236人、女性21,963人
社会移動による東京都への女性偏在は一気に加速へ
次に、実数表で男女バランスを計算した結果を確認してみたい(図表2)。
新型コロナによる1回目の緊急事態宣言が発出されたのは4月であるが、その月の東京都への女性転入超過数は男性の3.5倍にものぼり、前年2019年1月からの各月における倍率で最高倍率となった。
この理由は、対前年同月と比較すると、男性は4892人から1001人(80%減)に転入超過数が減少したのに対し、女性は8181人から3531人(57%減)の減少にとどまったからである。
なぜ緊急事態宣言の発出によって、男性の転入超過数は激減したにもかかわらず、女性はそこまで激減しなかったのか、という疑問が生じる。
これは、次回以降のコラムにて詳細データをお示しするが、2018年、2019年と東京都の転入超過人口の7割が実は「20代前半人口」であり、20代人口だけで男性の10割超(中高齢で転出超過のため10割超となる)、女性の9割を占めることから、大学進学や子育て世帯の移動というよりも、圧倒的に大卒新卒、または大卒・高卒後の転職といった就職関連の転居で東京一極集中が起こってきたことが示されている。
東京へ就職で転居しようとしている若い男女において、感染拡大をうけて早急に就職先を変更することができるのか、という視点で考えてみると4月における男女の3.5倍もの転入格差の発生を理解しやすい。国の就業構造基本調査から鑑みても、女性の方が(正社員職場を)男性ほどには迅速かつ容易に地元の職場をみつけることができない、という理由があるだろうと考えられる。
その後、7月から10月までは徐々に男性に対して女性の転出超過数が近づく傾向が見られたものの、11月(コロナに対する警戒感が弱まっていたコロナ第3波直前)には再び6割台に減少しており、改めて、感染状況が改善した際の東京都への女性人口の転入圧力の強さがうかがえる。
月別データからは総じて、男性の方が東京都の感染状況に応じて地方へと転出超過に、より早く、より多く動く傾向が見られることから、男性の方が感染の状況を見つつ都外への転居を決定しやすい、つまり女性の方が男性よりも都外に転居しやすい環境にはない、という状況がみてとれる。
こう書くと、「女性には子育てがあるし動きづらいのかも・・・」という議論が出てきそうであるが、子育て世帯であれば、多少のタイムラグはあっても男女ともに同数で動くはずである。
対前年同期間比88ポイント上昇の衝撃
新型コロナの影響で、総数でこそ東京都の転入超過人口は38%にまで減少したものの、男女の居場所・マッチングなどの視点からは、エリアバランスはかつてないほどに悪化している。
新型コロナは「女性に強い東京都」の姿をより明確に描き出したといえ、これは地方の弱みを明確化させたともいえる。
少子化が進む日本において、男性よりも女性を大きく減らしているエリアほど、エリアの未来人口の消滅速度を加速化させていることをあらためて指摘しておきたい。

03-3512-1878
(2021年02月01日「研究員の眼」)
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