コラム
2020年11月09日

東京一極集中の「次世代ループ構造」―出生人口定着率に大きな地域格差―

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー   天野 馨南子

少子高齢化 人口動態 などの記事に関心のあるあなたへ

btn-mag-b.png
基礎研 Report Head Lineではそんなあなたにおすすめのメルマガ配信中!
各種レポート配信をメールでお知らせするので読み逃しを防ぎます!

ご登録はこちら

twitter Facebook このエントリーをはてなブックマークに追加 Pocketで後で読む

文字サイズ

はじめに

新型コロナウィルスによる過密回避、リモートワークの促進によって、今年5月、1996年以降続いていた東京都への人口の転入超過(転入する人口数>転出する人口数)が24年ぶりに転出超過(転入する人口数<転出する人口数)に転じた。

2020年9月末までの状況では、6月を除く5月・7月・8月・9月において、東京都の転出超過が発生している。新型コロナの影響による人口動態の変化についてはまた別の機会に解説したい。
 
今回は1996年から2019年4月まで四半世紀続いてきた、ほぼ20代のみといってよい若年人口の東京都への転入超過が次世代人口に及ぼす影響について、非常に興味深いデータを紹介したい。

若年人口の転入超過割合の上昇=家族形成の可能性が上昇

そのエリアに転入超過によって増加する人口の年齢ゾーン傾向は、そのエリアにおける次世代人口の未来に大きく影響する(図表1)。

このことを考慮せずに、地方において一時的な人口増加の成果を求める政策が行われた場合、「男性人口を主に集める」「中年以降の人口を主に集める」といった、投資でいうならば「一時保有資産」を集める結果となるような人口対策が打たれやすい。

確かに、アリゾナ州などアメリカの一部の州においては、年金生活を送る高齢者を集めることによって自治体を維持するといった都市の人口政策が存在する。

しかしこれはあくまでも、「国(広域エリア)全体としての人口が減少していないケースにおいて持続可能な政策」であることに気が付かねばならない。

高齢者を誘致する戦略は、誘致対象エリアに高齢者を絶え間なく供給するための高齢者予備軍としての「中年以下人口」を潤沢に有するエリアがあってこそ、成立する戦略である。

日本のように急速な人口の逆三角ピラミッド(2015年国勢調査において40代人口を100とすると、30代人口85、20代人口67)が形成されている国においては、誘致の持続可能性がない。

超少子化となった我が国において、若い男女を東京へ転出超過させているエリアが高齢者を誘致する人口戦略をメインとする場合、短期的には人口増加の成果が得られることもあるかもしれないが、中長期的には、若年人口の転出超過を食い止めたり、または増加させたりしているエリアと比べて、そのエリアの人口の寿命を短命化させ続けている(未来の親候補人口の母数が減る一方の状況は不変のため、中長期的に人口減少が加速していく構造)結果には変わりがない。
【図表1】転入超過後の「次世代人口維持力」でみた年齢ゾーン別人口の評価
上図からも示唆されるが、そのエリアの未来人口につながる持続可能な人口誘致政策とは、
重要な順に、
 
1)できるだけ若い人口の転入超過をはかり
2)その転入超過人口が、そのエリアで(家族を形成して)子どもをもち
3)その子どもたちがそのエリアから出ていかない
 
という政策である。
 
持続可能な人口誘致戦略としての3つの視点から考えると、東京都は1)については、国勢調査結果から9割以上が未婚(家族形成前)である20代前半人口の割合が男女とも転入超過人口の7割に達するために、満点評価に近い。

では、2)3)についてはどうだろうか。

東京都は、男女とも全国一の生涯未婚率の高さであるなど、未婚化が顕著であるため、2)については課題が残る。全国から20代という結婚適齢期の男女が毎年大量に集まるものの、それぞれ生まれ育った環境が大きく異なる男女であることが、マッチングの際には障害となっている。しかし、これは東京都の問題というよりも、全国各地から東京都に適齢期の独身男女が集まってくることの結果といえる。

そして、3)についてであるが、これについては国立社会保障・人口問題研究所が公表しているデータをもとに以下の状況を紹介しておきしたい(図表2)。
【図表2】生まれたエリアに住み続ける赤ちゃん=「ふるさと出生人口」の割合(%)
東京都とその隣接エリアである埼玉県、神奈川県、千葉県を含む東京圏で生まれた赤ちゃんは、その9割以上が東京圏に住み続ける、という分析結果である。

3)だけを見るならば、中京圏(岐阜県、愛知県、三重県)も優等生であるが、3)よりも以前の1)の段階(母数の維持段階)でつまずいているために、将来人口推計上の良好な結果はでていない。
 
上のデータからは、東京都は全国1位の「赤ちゃん定着率」エリアの中にある、といってよい。実は今回の新型コロナ禍での東京からの人口転出も、この東京圏内での移動割合が大きいことが見えてきている。
 
ii 調査対象:平成28 年国⺠生活基礎調査で設定された調査地区より、都道府県別層化抽出
を行い、各都道府県から無作為に調査対象地区を選定。抽出された1,300 調査区のうち、熊本地震の影響で調査を中止した熊本県および大分県由布市の調査区を除く1,274 地区の全ての世帯の世帯主および世帯員。
調査方法:調査員による回収、またはインターネット回答。外国語(英語、中国語、韓国語、ポルトガル語)による回答例も作成。
有効回答と有効回収率:48,477 票72.2%。
iii 「第8回人口移動調査報告書」Ⅳ章掲載(WEB公開報告書)
北海道:北海道
東北:青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県
北関東:茨城県、栃木県、群馬県
東京圏 : 埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県
中部:新潟県、山梨県、長野県、静岡県
北陸:富山県、石川県、福井県、
中京圏:岐阜県、愛知県、三重県
大阪圏:京都府、大阪府、兵庫県
京阪周辺 : 滋賀県、奈良県、和歌山県
中国:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
四国:徳島県、香川県、愛媛県、高知県
九州・沖縄:福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県

次世代につながる人口集中のループ構造

人口動態データからは、東京都がこの四半世紀において、いかに堅固な人口集中の次世代ループ、すなわち上に述べた1)3)を築き上げてきたかが示唆されている。対する人口転出超過エリアが、今後考えなくてはならない課題は、重要な順に、1)、3)であるといってよい。ちなみに2)は、持続可能な人口戦略として、国全体の課題である。
 
筆者は仕事柄、データに強い情報系の理系研究者と会話する機会が多い。

彼らは「SDGs施策に未来人口を生み出す施策をもっと増やしてはどうか」と語る。今後、そのような施策も多く盛り込まれるようになることを期待したい。
twitter Facebook このエントリーをはてなブックマークに追加 Pocketで後で読む

生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

(2020年11月09日「研究員の眼」)

アクセスランキング

レポート紹介

【東京一極集中の「次世代ループ構造」―出生人口定着率に大きな地域格差―】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

東京一極集中の「次世代ループ構造」―出生人口定着率に大きな地域格差―のレポート Topへ