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2020年 20代前半女性転出超過ランキング/人口移動の「主役」はどう動いたか―新型コロナ人口動態解説(7)
生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子
【はじめに】過疎と過密の立役者は20代前半女性の移動
新型コロナ禍の前の2019年までにおいて、東京一極集中の状況をみると、1995年に東京都は女性の転入超過となり、遅れて翌1996年、男性が転入超過に転じる。2008年までは男女ともほぼ同数で東京都への転入超過が続いたが、2009年以降、女性が男性を超えて転入超過するようになった。
地方創生関連2法が可決された翌年、2015年からは女性が男性を上回る倍率がさらに拡大(女性/男性1.4倍程度)していた(図表1)。
新型コロナ禍の2020年においては転入超過総数では対前年4割を切る水準(+31,125人)とはなったものの(それでも全国1位の数万単位の転入超過数であることは変わらず、東京一極集中は終焉していないことに注意)、女性(+21,493人)と男性(+9,632人)の転入超過数の差は2019年の1.4倍から2.2倍へと急拡大した。日本における東京都の女性偏在傾向がより鮮明となった。
この半世紀において、最も居住エリアからの「出控え」がおこった年であるからこそ、それでも動いた人口は平時に比べて「より強い意志で」動いたと推量される。
不要不急ではない人口の動きとみられる新型コロナ禍という状況においての人口移動が、男性に比べて女性において強く起こったことは看過してはならないポイントである。
コロナ禍での移動結果は、若い女性の移動が「東京都には遊興施設が多いから」といった今まで度々指摘されてきたようなエンターテイメント理由メインで発生しているものでは決してないことを明らかにしたといってよいだろう。
人口移動のメインとなる年齢ゾーンについても新型コロナ人口動態解説(6)などで解説しているが、大卒・院卒の新卒就職タイミングである20代前半人口が東京一極集中(2020年においては1都3県人口集中)のメインであり、男女とも集中人口の7割を占めている。
20代前半女性人口の6割を東京都が吸収、1都3県で8割超
転出超過数2000人超えは茨城県、新潟県、兵庫県、福島県
47都道府県のうち、40にものぼるエリアで就職移動とみられる若い女性の減少が起こっていることについて、あらためて若い女性を受け入れる(若い女性に好まれる)労働市場の偏在を感じざるを得ない。単純に100%を転出超過した40エリアで割ると平均は2.5%となるが、その平均値以上に減少させたエリアは20代前半女性減少40エリアの中でも、より女性に選ばれなかったエリアともいえる。同数値が5%となったのは茨城県、新潟県、兵庫県の3エリアである。茨城県と新潟県は東京都に比較的近く、例年も東京都への女性の流出が大きいエリアであるが、兵庫県からは主に大阪府に流出している1。
次いで4%となったエリアは福島県、静岡県、岐阜県、北海道、長野県、である。福島県は東日本大震災以降、女性の大量流出が続いているエリアである。また、北海道に比べて人口の少ない中部エリアからの流出が目立っている。中部エリアも東京都からは比較的近い立地にあるが、それが20代前半人口という就職のための移動がメインとなる年齢ゾーンにおいては、東京都への移動が大きくなる方向に作用していることが示されている。
地元から将来の母親候補を失うだけでなく、それを同年代の男性数以上に失うことは、地元の男性の未婚化を加速化させる。
50歳時点での結婚歴なし割合が4人に1人に達している日本の男性の未婚化(女性は7人に1人。同世代人口の人口数男女差はほぼない)。
ふるさとのSDGsを考える原点ともなるべき「将来人口を見据えたバランスのとれた人口確保」の視点をニッポンの地方創生はこれまで見落としてきたのではないだろうか。
1 ちなみに兵庫県から転入(転入超過数ではない)した20代前半女性人口は大阪府(4026人)が最も多く、次いで東京都(1787人)、神奈川県(633人)となっている。
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(2021年06月07日「研究員の眼」)
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