コラム
2021年03月08日

2020年大阪府/転入超過数は前年の1.7倍 転入超過貢献エリアはどこなのか?―新型コロナ人口動態解説(4)

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー   天野 馨南子

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はじめに

新型コロナ感染拡大による人口動態の変化を解説するシリーズコラムの第4弾では、これまでの3回のコラムの内容についてメディアからのお問合せを頂いたもののうち、追加分析を行った結果、興味深い結果が得られたものの一部を紹介したい。
 
2020年の人口動態について、大阪府と東京都という東西の2大自治体における転入超過の実態を2019年と比較すると
 
「大阪府は2019年に比べて転入超過数が1.7倍に増加した。福岡県も増加している。それに対して東京都は0.38倍であり、人口動態は西高東低となったのだ」
 
という、極めてキャッチ―ではあるものの「定点観測的な解釈」が一部で流布したことに関して、果たして統計的にはどのような状況となっているのか、大阪府の2020年の転入超過人口(転入人口―転出人口)の分析結果を示しつつ解説してみたい。
 
コロナ禍と地方創生との関係性が注目される中、誤った解釈の流布は地方創生に向けた政策奏功の壁ともなりかねない。人口移動については直感的な意見ではなく、今一度、統計的エビデンスを確認することが肝要である。

大阪府の転入超過への貢献度ベスト3は全て近畿エリア

大阪府の転入超過数1万3356人に大きく貢献することになったのは大きい順に兵庫県、京都府、和歌山県となっており、全て近畿エリアである(図表1)。この3エリアが上位に来る結果は2019年と変わらないが、注目すべき点は、兵庫県からの転入超過数の拡大幅である。前年である2019年と比べると1.82倍の転入超過数となっており、2019年に1位の京都府を逆転しての1位となった。
【図表1-1】2020年 社会移動による「大阪府の転入超過への貢献*度」都道府県ランキング(人・倍)
【図表1-2】2020年 社会移動による「大阪府の転入超過への貢献*度」都道府県ランキング(人・倍)
兵庫県、京都府からは、ともにコロナ禍において大阪府に人口がより多く流れていく(転出数と転入数という人口綱引きでは、大阪府に対してはより不利となる)結果となった。

上位3エリアで大阪府の転入超過人数の71.0%を占めており、大阪府の転入超過の発生源は近畿エリアである、といえるだろう。また、大阪府への転入超過が1000人以上となっているエリアは6エリアあり、上位3エリアに加えて愛知県、広島県、岡山県がランクインしている。中でも愛知県は前年と比べて2.36倍の大阪府への転入超過となっており、ランキングでも2019年の12位から4位まで浮上するなど、大阪府の転入超過拡大のメジャーな供給元の一つとなった。

大阪府の転入超過数は、この6エリアで転入超過総数の98.4%に達しており(かつ、6エリア中4エリアにおいて前年と比べて転入超過が拡大)、コロナ禍において大阪府をとりまく近畿を中心とした周辺エリアからの吸引力が急上昇した様子が見てとれる。
 
次に大阪府の転入超過が500人以上1000人未満だった次点エリアが7エリア存在する。多い順に福岡県、三重県、愛媛県、徳島県、香川県、滋賀県、奈良県である。福岡県のみ九州で、他は近畿もしくは四国地方となっている。また、この7エリア中4エリアにおいて転入超過が拡大しており、大阪府の転入超過は、愛知県と福岡県を除くと近畿、中国、四国地方を中心とした西日本エリアから発生している様子が明確となっている。ちなみに福岡県からの転入超過増加率は1.1倍であり、愛知県ほど対前年増加率は大きくない。

大阪から転出超過となった6エリアは関東と沖縄】

図表の通り、大阪が転入超過となったエリアは40エリアに達しているが、残りの6エリアは依然、2019年と同じく大阪府との人口綱引きにおいて有利な立場(つまり、大阪にとっては転出超過)をキープしている。6エリアは大阪府からの転出超過が多い順に、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、沖縄県、群馬県である。
 
全国で人口転入超過ナンバー1である東京都との間では、大阪府からも5698人の転出超過となっている。ただし、これは前年と比べると7割(69%)水準にまで下落している。一方、コロナ禍においても大阪府からの転出超過が大きく減らなかったのが、埼玉県(対前年91%)、神奈川県(同83%)である。

なお、実数としては少ないものの、沖縄県は2019年には142人の大阪府からの転出超過であったが、2020年は343人と2.42倍に拡大し、大阪からの人口吸引力を大きく伸ばしてきている。

コロナ禍でドーナツ化した東京圏、逆ドーナツ化した大阪圏

シリーズ第二弾である『新型コロナ人口動態解説(2)』で2020年転入超過となった8エリアの状況を紹介し、東京都とその周辺エリアとの間では、感染拡大防止の観点から過密を回避して人口のドーナツ化現象が起こっていることを解説した。

特に東京都への電車通勤圏となっているエリアである神奈川県、埼玉県、千葉県の3県の転入超過が進んでおり、さらにこれら1都3県をとりまく中部エリア、北関東などでは転出超過の減少が起こっている。東京をとりまくドーナツ化現象は、コロナ禍対策としてはわかりやすい人口動態となっている。
 
しかし、大阪府は過密を回避した人口移動の発生、とはならず、周辺エリアからの人口流入が加速化するという、東京圏とは対照的な逆ドーナツ化現象が発生している。

地方創生という観点から見ると、東京都については東京一極集中から東京圏(1都3県)一極集中への移行がある程度進んだといえるのかもしれない。
 
今回解説した大阪府については、

1.関東との人口綱引きにおいて、依然不利ではあるものの状況は改善された
2.大阪府周辺の近畿・中国・愛知県を中心に人口吸引力を拡大させた
 
という2点が指摘できる。

冒頭に述べた西高東低の論調については、大阪府と東京都とを局所的にみれば、そのようにも言えるのかもしれないが、それでイメージされるような東から西への人口移動の加速は見えてはおらず、両者の周辺エリアを含めると西高東低となった、といった説明には極めて懐疑的な結果となっている。
 
都市計画の要因か、働き方改革の要因かは検証が必要であるが、2000年代のインフルエンザ大流行や若年層の失業率拡大への対策としてリモートワーク(欧州ではリモートワークとは呼ばず、eWorkと呼称し、行政が主体となって推進している)が進展したり、大都市集中が回避されたりした欧州諸国のトレンドと大阪圏の状況は逆行している。

両親のルーツが関西(近畿・四国)である筆者にとっては少々、不安が残る結果である。
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

(2021年03月08日「研究員の眼」)

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