2021年08月04日

グリーンボンドとは?-要は環境問題に対する共通認識

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任   高岡 和佳子

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1――グリーンボンドって何?

ESG投資手段の一つであるグリーンボンドとは、その名の通り債券(ボンド、bond)の一種である。債券は発行体や発行体の信用力、償還期間等の様々な特徴によって分類され、分類ごとの名称がある。例えば、発行体が国なら「国債」、会社なら「社債」、発行体の信用力が高ければ「投資適格債」、低ければ「投資不適格債」、償還期間が長ければ「長期債」、短ければ「短期債」と呼ばれる。グリーンボンドもある特徴を持つ債券を指す名称であり、その特徴とは資金使途が環境問題の解決に貢献する事業であるグリーンプロジェクトに限定されることである。
図表1 グリーンプロジェクトのカテゴリー グリーンボンド発行に関する業界のガイドラインであるグリーンボンド原則(以下、GBP)の最新版1を確認すると、グリーンプロジェクトの10のカテゴリー(図表1)が示されている。しかし、この10のカテゴリーは、グリーンプロジェクトとして一般に広く支持されるであろう例示であって、グリーンプロジェクトは10のカテゴリーに限定されるものではないことも明記されている。時、地域、業界によって、重要な環境問題やその解決策が異なる可能性が有るのだから、グリーンプロジェクトの範囲を限定することは困難である。実際、2015年時点のGBPでは、8つのカテゴリーしか示されておらず、「環境配慮型商品・生産工程」と「グリーンビルディング」の2つのカテゴリーは、後に追加されている。  

2――グリーンボンドって名乗ったもの勝ちなの?

2――グリーンボンドって名乗ったもの勝ちなの?

グリーンボンドとは資金使途がグリーンプロジェクトに限定される債券の総称だが、肝心のグリーンプロジェクトの範囲を限定することが困難である。そうならば、『グリーンボンドの範囲も不明確であり、環境問題の解決にさほど貢献しないのにグリーンボンドと言い張る、悪意ある発行体が現れると、ESG投資を推進したい投資家や環境問題に関心のある投資家の思いが蔑ろにされるのではないか』といった懸念が生じる。このような投資家等の懸念を払しょくするために前述のGBPがある。
 
GBPでは、『投資家等が個々のグリーンボンドの特性を正しく理解する』ために、『発行体による透明性が高く、正確でかつ完全な情報の開示』を重視する。GBPには『発行体による透明性が高く、正確でかつ完全な情報の開示』に求められる具体的な内容も示されている。例えば、どのようなプロジェクトに資金が利用されるのか、そのプロジェクトの目標や、グリーンプロジェクトに適合しているという判断に至ったプロセス等の開示の他、資金の適切な管理、定期的なプロジェクトの進捗情報等の報告が求められる。しかし、『発行体による透明性が高く、正確でかつ完全な情報の開示』はあくまで手段でしかない。その手段を用いる目的は『投資家等が、個々のグリーンボンドの特性を正しく理解する』ことである。投資家等が正しく理解することで、グリーンボンド市場の健全性を保つことができると考えられるからである。投資家等がグリーンボンドの内容を正しく理解できるのであれば、環境問題の解決にさほど貢献しないのにグリーンボンドと言い張る、悪意ある発行体に対する資金の提供(グリーンボンドの購入)を拒絶するという対抗策をとれるからだ。
 
このようなことが無いことを願うが、真に地球環境の維持・改善効果があるプロジェクトであっても、環境問題としての認識を持ち、そのプロジェクトの価値を理解できる投資家が数多くいなければ、グリーンボンドの発行により必要な資金を調達することができない。実質的にグリーンボンドの範囲を決めるのは投資家等であると言っても過言ではないだろう。もちろん、外部機関に、グリーンボンドとしての適切性を客観的に評価してもらうといった補完的方法も推奨されている。しかし、グリーンボンド市場の健全性維持、しいては地球環境の維持・改善のために、投資家等が担う役割は極めて大きい。
 

3――グリーンボンド発行実績から読み取る環境問題に対する関心の広がり

3――グリーンボンド発行実績から読み取る環境問題に対する関心の広がり

図表2 グリーンボンド発行額の推移 近年、グリーンボンドの発行額は拡大傾向にある(図表2)。グリーンボンドは、発行体と投資家等の間に、解決すべき環境問題と有効な解決策であるという共通認識がなければ成立しないのだから、グリーンボンドの発行額の拡大から、環境問題に対する関心の高まりが読み取れる。ここでは、資金使途別の発行割合に着目することで、環境問題に対する有効な解決策として注目されているグリーンプロジェクトを確認したい。時、地域の違いによって重要な環境問題やその解決策が変化している可能性があるので、2015年と2020年の2時点における資金使途別の発行割合を、先進国と新興国のそれぞれ比較する(図表3)。
図表3 資金使途別グリーンボンドの割合 <発行額ベース>  (外側:先進国  内側:新興国)
2015年は先進国、新興国共に、発行されたグリーンボンドの過半をエネルギー関連が占めていた。気候変動を引き起こす温室効果ガスが最大の関心事項であり、太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーを促進し、温室効果ガスの排出量を削減することが重要なテーマであったことが分かる。2020年においても、エネルギー関連が占める割合が最も高いが、2015年と比較するとエネルギー関連の割合は減り、建物(グリーンビルディング)や輸送(クリーンな輸送)の割合が増えている。特に、先進国において、この傾向が顕著である。

グリーンビルディングとは、建物の設計、建設、運用の各段階において、自然環境への悪影響を排除・軽減するように配慮する環境性能の高い建物を指す2。当然ながら、再生可能エネルギーの活用やエネルギーの効率利用等、温室効果ガスの排出量削減を目指す取り組みも含まれるが、建物の建築中および竣工後における水の効率的使用や廃棄物の削減対策・再利用の促進等、幅広い環境問題の解決に取り組むものである。一方、クリーンな輸送の代表例は、電気自動車の促進や、各人が自動車で移動する場合と比べて、温室効果ガスの排出量が少ない公共交通の建設等であり、温室効果ガスの排出量削減が中心である。しかし、日本郵船や商船三井が発行したグリーンボンドは、船舶の運航に伴う生態系への影響を軽減する取り組みや、船舶の排気ガスに含まれる汚染物質の排出を抑制する取り組みにも活用されている3。とりわけ先進国において顕著な建物や輸送の割合増加から、事業者や投資家等がより多様な環境問題に関心を持ち始めた様子が伺える。
 
 

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金融研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任

高岡 和佳子 (たかおか わかこ)

研究・専門分野
リスク管理・ALM、価格評価、企業分析

(2021年08月04日「基礎研レター」)

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