コラム
2025年02月26日

ふるさと納税、確定申告のススメ-今や、確定申告の方が便利かもしれない4つの理由

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任 高岡 和佳子

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ふるさと納税の利用者1,000万人に対し、ワンストップ特例制度利用者は500万人を超える。給与所得者に限定すれば、大半がワンストップ特例制度を利用していると考えられる。ワンストップ特例制度が選ばれる理由は、「確定申告より便利で簡単」と考えられているからだろう。しかし、確定申告を選択することで得られるメリットも見逃せない。ワンストップ特例制度ではなく確定申告をおすすめする理由を4つ紹介したい。

理由1 確定申告も便利で簡単、学びも多い

昨今のワンストップ特例制度はとても便利だが、その利便性がデジタル化によるところが大きい。ほんの数年前までは、紙媒体の申請書をマイナンバーカード等の写しを添えて提出する必要があり、今ほど便利ではなかった。かつては難易度が高かった確定申告も、デジタル化の進展により便利で簡単になっている。オンラインワンストップ申請の際に利用するスマホとマイナンバーカードがあれば、確定申告もオンラインで完結できる。マイナポータルと連携すれば、寄付金控除(ふるさと納税)に関する各種証明書1、給与所得の源泉徴収票情報2ともに、まとめてデータ取得できる。今回(2024年分)に限り定額減税に関する情報の入力が必要だが、源泉徴収票や寄付受領書などとの確認・照合が必要な難しい入力は原則不要で、年に1度の作業で完結する。マイナポータルの連携が難しいと感じるかもしれないが、保険料控除や住宅ローン減税の各種証明書の連携も進んでおり、すでに年末調整で経験済みの人も多いだろう。
 
これから確定申告する人も既にワンストップ特例申告をした人も、「確定申告も便利で簡単」と言われても不安に感じるなら、国税庁がアップする解説動画の視聴をお勧めする3。スマホでの確定申告や各種データの自動連携の方法など、解説動画が豊富に用意されており、学びが多い。将来、医療費控除などを受けるため確定申告が必要となる状況に備える意味でも、ふるさと納税を機に確定申告を学び、実践してみる価値はある。
 
1 一部のふるさと納税ポータルサイトや自治体は未対応なので注意が必要である。
対応済みポータルサイト:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/mynumberinfo/list.htm
対応済み自治体:https://www.shift7.jp/e-tax-service/join-list.html
2 勤務先や給与所得水準(給与)によっては、自動連携対象外の場合もあるので注意が必要である。
3 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/kakushin-sakusei/douga.htm

理由2 寄付先の選択がより自由になる

ご存じの通り、寄付先が5自治体を超えるとワンストップ特例制度を利用することはできない。ふるさと納税の上限額が明確になる12月分の給与明細を受け取った後に、まとめてふるさと納税を行う人が多いと聞くが、冷凍庫に限界があるので、年間を通して計画的にふるさと納税を行う人も多いのではないか。年始からその都度魅力的な寄付先を選んでいくと、早々に寄付先数が5自治体に達し、残りの寄付をすでに寄付した自治体の中から選ばざるを得ない経験をした人も少なくないのではないだろうか。

確定申告の場合、寄付先数に制限はないので、寄付先選択の自由度が増す。寄付先が5自治体を超えないよう気を遣う負担からも解放されるのである。

理由3 お正月(松の内)をゆっくり過ごせる

ワンストップ特例制度の申告期限は寄付した年の翌年1月10日である。12月分の給与明細を受け取った後に恒例の年末特別番組を見ながらふるさと納税を行う多くの人は、極めて短期間で申告手続きを済ませる必要がある。オンライン申請なら郵送に時間はかからないとはいえ、自治体によっては寄付情報のオンラインシステムへの反映に時間がかかり、年末年始休暇中ならなおさらである。いつ反映されるのか気をもみ、差し迫った期限が気になってお正月をゆっくり過ごせない人もいるかもしれない。

確定申告の申告期間は、2月中旬から3月下旬なのでお正月をゆっくり過ごせる。さっさと手続きを済ませたい人は、2月中旬まで待たなくてもよい。源泉徴収された所得税の還付を受ける場合は、確定申告の受付開始を待たずに申告することも可能だ。直近2年では、仕事始めの日に「確定申告等作成コーナー」が公開されている。

理由4 居住自治体の税収減を抑えられる

ふるさと納税は寄付額から2,000円を差し引いた金額と同額分の減税を受けられる仕組みである。この減税の一部は所得税の控除として国が負担し、残りが住民税の控除として居住自治体の税収減となる。住民税の控除が大部分を占めるため、居住自治体の税収が減少し、住民サービスの低下が懸念される。

ワンストップ特例制度を利用すると、先のコラム4で記した通り、所得税からの控除がなくなり、全額が住民税で処理されるため、居住自治体の税収減がさらに大きくなる。つまり、ワンストップ特例制度を利用すると控除の全額が住民税から差し引かれるため、居住自治体の税収が一層減少する。一方、確定申告をすると一部は所得税から控除されるため、居住自治体の税収減を抑えられる。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年02月26日「研究員の眼」)

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金融研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任

高岡 和佳子 (たかおか わかこ)

研究・専門分野
リスク管理・ALM、企業分析

経歴
  • 【職歴】
     1999年 日本生命保険相互会社入社
     2006年 ニッセイ基礎研究所へ
     2017年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

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