2021年06月10日

米国経済の見通し-21年は経済の正常化、経済対策の効果で高成長も、注目されるインフレリスク

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
 
  1. 米国の21年1-3月期の実質GDP成長率(前期比年率)は+6.4%と前期の+4.3%から上昇。設備投資や住宅投資が2桁の伸びを維持したほか、経済対策に伴う可処分所得の増加もあって個人消費が+11.3%と前期の+2.3%から大幅に回復して成長率を押し上げた。
     
  2. ワクチン接種の進捗に伴い年半ば以降はソーシャルディスタンシングの解消等、経済正常化の動きが継続することに加え、これまで実施された直接給付などの経済対策が21年の成長率を大幅に押上げよう。
     
  3. 経済見通しは、引き続き変異株の拡大など新型コロナの感染動向等に大きく左右される。当研究所は経済正常化の動きが継続する前提で、21年の成長率を前年比+6.8%と84年(+7.2%)以来の高成長を予想。22年も+4.3%と堅調な伸びとなろう。
     
  4. 金融政策は足元のインフレ高進が一時的に留まることから、今年や来年の政策金利の引き上げは見込まず。量的緩和の買い入れペースの縮小開始が22年前半、政策金利の引き上げ開始は24年前半を予想。
     
  5. 上記見通しに対するリスクは新型コロナとインフレ高進、米国内政治が挙げられる。変異ウイルスの影響でソーシャルディスタンシングの解消が遅れる場合や、FRBに対する信認低下などからインフレが持続的に加速し早期の利上げに追い込まれれば、経済の下振れ要因となる。一方、「米国雇用計画」、「米国家族計画」などの成長戦略が実現されれば、経済の上振れ要因となろう。
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)
■目次

1.経済概況・見通し
  ・(経済概況)1‐3月期の成長率は個人消費の回復もあって、前期から上昇
  ・(経済見通し)成長率は21年が前年比+6.8%、21年は+4.3%を予想
2.実体経済の動向
  ・(労働市場、個人消費)労働市場の回復は加速へ、個人消費は堅調推移
  ・(設備投資)当面堅調を維持
  ・(住宅投資)住宅市場の回復に陰り
  ・(政府支出、債務残高)バイデン政権の成長戦略の先行きは不透明
  ・(貿易)旺盛な国内需要を背景に当面外需は成長率を押し下げ
3.物価・金融政策・長期金利の動向
  ・(物価)当面はインフレ高進も来年以降のインフレ率は低下へ
  ・(金融政策)22年前半のテーパリング開始、24年前半の政策金利の引き上げを予想
  ・(長期金利)21年末1.9%、22年末2.2%を予想
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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