2021年05月11日

コロナ禍における生活の変化(4)-「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」からみる生活不安の変化と地域間較差

生活研究部 井上 智紀

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1――はじめに

先日公表した拙稿1では、弊社が継続実施してきた「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査2」から、昨年9月以降の生活実態と生活時間の変化について地域別に分析した結果を示した。本稿では引き続き同調査を用い、各調査時点である昨年9月、12月および今年3月の生活に対する不安として、感染不安、経済不安、働き方不安、家族関係不安と人間関係不安、行動不安のそれぞれについて、地域ごとに各時点の状況および時点間の変化を概観していく。
 
1 井上智紀(2021)「コロナ禍における生活の変化(3)-「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」からみる生活行動の変化と地域間較差」『基礎研レター』(2021/05/07)
2 調査概要等、調査の詳細は弊社サイト内の特設ページを参照されたい。
 

2――感染不安

2――感染不安

コロナ禍での感染に関わる不安についてみると、第2回調査を実施した昨年9月時点では、「感染が懸念されても適切な検査が受けられない」は愛知県で、「感染しても適切な治療が受けられない」は南九州で高く、「自分や家族の感染による世間からの偏見や中傷」は甲信越、北陸、東海で、「自分や家族の感染による人間関係への悪影響」は甲信越、東海および愛知県、南九州で高くなっている。また、第3回調査を実施した昨年12月時点では、「自分や家族の感染による健康状態の悪化」は東北で、「感染が懸念されても適切な検査が受けられない」は愛知県で、「感染しても適切な治療が受けられない」は北関東、愛知県で、「自分や家族の感染による世間からの偏見や中傷」は甲信越、東海および愛知県、四国で、「自分や家族の感染による人間関係への悪影響」は北陸、愛知県、四国でそれぞれ高く、第4回調査を実施した今年3月時点では、「自分や家族の感染による健康状態の悪化」は東海および愛知県、南九州で、「感染が懸念されても適切な検査が受けられない」「感染しても適切な治療が受けられない」は愛知県、四国で、「自分や家族の感染による世間からの偏見や中傷」は甲信越、北陸、東海および愛知県、四国で、「自分や家族の感染による人間関係への悪影響」は東北、甲信越、東海および愛知県で、それぞれ高くなっている。

9月から12月にかけての変化では「自分や家族の感染による健康状態の悪化」「感染が懸念されても適切な検査が受けられない」「感染しても適切な治療が受けられない」が多くの地域で増加している一方で、「自分や家族の感染による世間からの偏見や中傷」では甲信越、北陸、近畿および大阪府、南九州で、「自分や家族の感染による人間関係への悪影響」では甲信越、東海、中国、南九州で減少している。また、12月から3月にかけての変化では、「感染しても適切な治療が受けられない」はほとんどの地域で、「自分や家族の感染による健康状態の悪化」「感染が懸念されても適切な検査が受けられない」「自分や家族の感染による世間からの偏見や中傷」「自分や家族の感染による人間関係への悪影響」は多くの地域で、それぞれ減少している。
図表1 感染不安

3――経済不安

3――経済不安

コロナ禍で経済に関わる不安についてみると、第2回調査を実施した昨年9月時点では、「世界経済が悪化し、世界大恐慌に陥る」は甲信越、北陸、愛知県、北九州で、「日本経済が悪化し、企業業績や雇用環境が悪化」は甲信越、愛知県で、「東京五輪が開催されず、日本経済がさらに悪化」は北陸、愛知県で、「勤務先の業績悪化による収入減少、雇用の不安定化」は甲信越、愛知県、中国で、「自分や家族の収入減少」は甲信越、北陸、東海および愛知県で、「自分や家族が仕事を失う」は甲信越、北陸、東海で、それぞれ高くなっている。また、第3回調査を実施した昨年12月時点では、「世界経済が悪化し、世界大恐慌に陥る」は北陸、四国で、「日本経済が悪化し、企業業績や雇用環境が悪化」は愛知県、四国で、「東京五輪が開催されず、日本経済がさらに悪化」は東海および愛知県、四国で、「勤務先の業績悪化による収入減少、雇用の不安定化」は東北、甲信越、愛知県、四国で、「自分や家族の収入減少」「自分や家族が仕事を失う」は甲信越、北陸、愛知県で高く、「自分や家族が仕事を失う」は四国でも高い。第4回調査を実施した今年3月時点では、「世界経済が悪化し、世界大恐慌に陥る」は東海で、「日本経済が悪化し、企業業績や雇用環境が悪化」は甲信越、北陸、東海で、「東京五輪が開催されず、日本経済がさらに悪化」は北海道、甲信越、北九州で、「勤務先の業績悪化による収入減少、雇用の不安定化」は東北、甲信越、東海および愛知県で、「自分や家族の収入減少」「自分や家族が仕事を失う」は東北、北陸、東海および愛知県で高くなっている。

9月から12月にかけての変化では、「世界経済が悪化し、世界大恐慌に陥る」は北海道、東北、中国、四国で、「日本経済が悪化し、企業業績や雇用環境が悪化」は北関東、四国、南九州で、「東京五輪が開催されず、日本経済がさらに悪化」は中国、四国、南九州で増加している。一方、12月から3月にかけては、これらの不安項目は一部の地域を除いてほぼ全面的に減少しており、総じてマクロの経済環境に対する不安は払拭に向かっているように見受けられる。身近な経済環境に対する不安についても同様に、9月から12月にかけては「勤務先の業績悪化による収入減少、雇用の不安定化」は北海道、北関東、東京都、愛知県、北九州で、「自分や家族の収入減少」は東京都、四国で、「自分や家族が仕事を失う」は東京都、中国、四国、北九州で増加していたものが、12月から3月にかけてはほとんどの地域で減少に転じている。
図表2 経済不安

4――働き方不安

4――働き方不安

コロナ禍での働き方に関わる不安についてみると、第2回調査を実施した昨年9月時点では、「在宅勤務が増え、集中力やモチベーションが低下する」、「在宅勤務が増え、コミュニケーションが取りにくくなる」は東京都で高く、「在宅勤務が増え、時間管理型から成果主義へ変わる」は北関東、中国で、「在宅勤務ができる仕事ではないため、継続しにくくなる」は甲信越で高くなっている。また、第3回調査を実施した昨年12月時点では「在宅勤務が増え、労働時間が長くなる」は四国、北九州、南九州で、「在宅勤務が増え、集中力やモチベーションが低下する」は東北、東海、南九州で、「在宅勤務が増え、コミュニケーションが取りにくくなる」「在宅勤務が増え、残業代が減る」は四国で、「在宅勤務が増え、時間管理型から成果主義へ変わる」は大阪府、四国、南九州で高く、第4回調査を実施した今年3月時点では、「在宅勤務が増え、労働時間が長くなる」は東北で、「在宅勤務が増え、集中力やモチベーションが低下する」は東海および愛知県、南九州で、「在宅勤務が増え、コミュニケーションが取りにくくなる」は北関東で、「在宅勤務が増え、残業代が減る」は東北、愛知県、中国で、「在宅勤務が増え、時間管理型から成果主義へ変わる」は東北、愛知県、南九州で、「在宅勤務ができる仕事ではないため、継続しにくくなる」は東北、北関東、愛知県、中国、南九州で高くなっている。

9月から12月にかけての変化では、「在宅勤務が増え、労働時間が長くなる」は東北、東京都、北九州、南九州で、「在宅勤務が増え、集中力やモチベーションが低下する」は東北、東海および愛知県、南九州で、「在宅勤務が増え、コミュニケーションが取りにくくなる」は中国、北九州、南九州で、「在宅勤務が増え、残業代が減る」は北関東、甲信越、東海および愛知県、北九州、南九州で、それぞれ増加している。また、「在宅勤務が増え、時間管理型から成果主義へ変わる」は北海道、甲信越、近畿および大阪府、南九州で、「在宅勤務ができる仕事ではないため、継続しにくくなる」は東京都、甲信越を除く全ての地域で増加している。一方、12月から3月にかけては、「在宅勤務が増え、労働時間が長くなる」「在宅勤務が増え、集中力やモチベーションが低下する」は北海道、北関東、大阪府、中国で、「在宅勤務が増え、コミュニケーションが取りにくくなる」は北関東で、「在宅勤務が増え、残業代が減る」は北海道、東北、中国で、「在宅勤務が増え、時間管理型から成果主義へ変わる」は東北、北関東、愛知県、中国で、「在宅勤務ができる仕事ではないため、継続しにくくなる」は中国で、それぞれ増加している。
図表3 働き方不安
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