2021年05月07日

コロナ禍における生活の変化(3)-「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」からみる生活行動の変化と地域間較差

生活研究部 主任研究員 井上 智紀

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4――働き方の変化

1|増加した働き方
感染拡大前(昨年1月頃)に比べて増加した行動についてみると、南関東および東京都では「在宅勤務などのテレワーク」「オンライン会議や打合せ」が3時点とも一貫して高くなっているほか、第2回調査を実施した昨年9月には東京都で「労働時間」が、大阪府で「在宅勤務などのテレワーク」が高くなっている。また、第3回調査を実施した昨年12月時点では南九州で「勤務先への出社」が、北関東で「上司や部下、同僚との会食」が、甲信越で「労働時間」がそれぞれ高く、第4回調査を実施した今年3月時点では北関東で「勤務先への出社」「オンライン会議や打合せ」「上司や部下、同僚との日常的なコミュニケーション」がそれぞれ高くなっている。

3時点間の変化に着目すると、「勤務先への出社」は9月から12月にかけては北海道、甲信越では減少、南九州では増加し、12月から3月にかけては北海道、東北、北関東、中国で増加する一方で南九州では減少している。一方、「在宅勤務などのテレワーク」は9月から12月にかけては北関東、近畿および大阪府で減少していたものが12月から3月にかけては北海道、東北、北関東、大阪府、北九州で増加する反面、「オンライン会議や打合せ」は東京都、中国で増加から減少に転じている。
図表5 増加した働き方
2|減少した働き方
感染拡大前(昨年1月頃)に比べて減少した行動についてみると、南関東および東京都で「勤務先への出社」が3時点とも一貫して高く、第2回調査を実施した昨年9月時点では大阪府で「勤務先への出社」が、中国で「在宅勤務などのテレワーク」「オンライン会議や打合せ」が、甲信越、南九州で「上司や部下、同僚との日常的なコミュニケーション」が高く、南関東および東京都では「上司や部下、同僚との日常的なコミュニケーション」、甲信越では「出張」も、東京都、愛知県、大阪府では「労働時間」も高い。また、第3回調査を実施した12月時点では東京都、甲信越、四国で「上司や部下、同僚との日常的なコミュニケーション」が、北海道、東京都、南九州で「上司や部下、同僚との会食」が、東京都、甲信越で「出張」がそれぞれ高く、第4回調査を実施した今年3月時点では大阪府で「在宅勤務などのテレワーク」「上司や部下、同僚との日常的なコミュニケーション」が、東海および愛知県で「上司や部下、同僚との会食」が、中国で「労働時間」が高い。

3時点間の変化に着目すると、「勤務先への出社」は東北、東京都、東海および愛知県、近畿および大阪府で9月から12月にかけて減少した後、北関東、東海および愛知県、大阪府で増加に転じている。また、「上司や部下、同僚との日常的なコミュニケーション」は北海道、北関東、甲信越など8地域で9月から12月にかけて増加した後、北関東、南関東および東京都など6地域で減少し、「上司や部下、同僚との会食」は北海道、東京都、東海、大阪府、北九州で9月から12月にかけて、北関東、甲信越、東海および愛知県、近畿、中国では12月から3月にかけて、それぞれ増加している。
図表6 減少した働き方

5――生活時間の変化

5――生活時間の変化

1|増加した生活時間
感染拡大前(昨年1月頃)に比べて増加した生活時間についてみると、第2回調査を実施した昨年9月時点では東京都で「家事時間」「家族と過ごす時間」が、南九州で「休養・くつろぎ時間」が高く、第3回調査を実施した昨年12月時点では北関東で「食事時間」が、中国で「休養・くつろぎ時間」「趣味や娯楽、スポーツ時間」が、北陸で「家族と過ごす時間」が高い。また、第4回調査を実施した今年3月時点では北関東、東京都で「睡眠時間」が、北関東で「食事時間」「休養・くつろぎ時間」が、東京都、甲信越で「家事時間」が、中国で「趣味や娯楽、スポーツ時間」が高く、北関東、東京都、北陸、東海および愛知県では「家族と過ごす時間」が高くなっている。

3時点間の変化に着目すると、北関東では「睡眠時間」「一人で過ごす時間」が、甲信越では「家事時間」が、北陸では「家族と過ごす時間」が、それぞれ一貫して増加し、北陸で「交際やつきあい時間」が、南九州で「家事時間」「休養・くつろぎ時間」が、それぞれ一貫して減少している。
図表7 増加した生活時間
2|減少した生活時間
感染拡大前(昨年1月頃)に比べて減少した生活時間についてみると、第2回調査を実施した9月時点では南関東および東京都で「交際やつき合い時間」が、中国で「趣味や娯楽、スポーツ時間」が高くなっている。また、第3回調査を実施した12月時点では愛知県、四国で「睡眠時間」が、北関東で「家事時間」が、愛知県で「休養・くつろぎ時間」が、大阪府、北九州で「家族と過ごす時間」が、それぞれ高く、第4回調査を実施した今年3月時点では北九州で「休養・くつろぎ時間」が、東京都、東海および愛知県で「交際やつき合い時間」が、北陸で「一人で過ごす時間」が、それぞれ高くなっている。

3時点間の変化に着目すると、「交際やつき合い時間」は北海道、北関東、東海および愛知県、近畿および大阪府、四国、北九州で9月から12月にかけて、甲信越、北陸、中国、南九州で12月から3月にかけてそれぞれ増加し、東北、東京都、甲信越、北陸、南九州で9月から12月にかけて、北海道、東北、近畿および大阪府、四国で12月から3月にかけてそれぞれ減少するなど、地域により、また時期により変化の方向性が異なっている。
図表8 減少した生活時間

6――結果の総括

6――結果の総括

以上みてきたとおり、買い物、食事サービス利用、働き方の3つの局面における生活行動および生活時間のいずれについても昨年の9月、12月、今年3月の3時点における生活行動はそれぞれ様々に変化している上、地域によってもそれぞれ異なっていた。時点間の差や地域差はいずれもそれぞれの時点、それぞれの地域における感染拡大の状況など様々な要因が影響した結果であるとともに、こうした行動が感染拡大の一因にもなっているとも考えられよう。

感染拡大の状況はこのほか、生活上の様々な局面における不安に対する影響としても現れている。生活不安の状況については稿を改めて提示する。
 

Appendix

Appendix

各回の「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」の地域別のサンプル数は下表のとおりである。就労者に限定すると、3時点を通じて北陸で、また、9月および3月調査の四国では、それぞれサンプル数が30に満たず結果の信頼性に疑義が残るため、「働き方」に関する分析部分では図表中に参考として掲載するに留め、本文中には記載していない。
図表9 各回調査における分析に用いたサンプル数
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生活研究部   主任研究員

井上 智紀 (いのうえ ともき)

研究・専門分野
消費者行動、金融マーケティング、ダイレクトマーケティング、少子高齢社会、社会保障

(2021年05月07日「基礎研レター」)

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