コラム
2021年03月05日

投信は低コスト化?それとも二極化?~2021年2月の投信動向~

金融研究部 准主任研究員   前山 裕亮

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ファンド全体への資金流入は鈍化

2021年2月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、外国株式に7,600億円と大規模な資金流入があった【図表1】。ただ、その他には資金流出が拡大、もしくは資金流入が鈍化した資産クラスばかりであった。そのため、2月はファンド全体でみると4,300億円の資金流入といまだに外国株式が牽引して高水準ではあるが、1月の5,600億円から1,300億円ほど減少した。
【図表1】 2021年2月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入

意外と控えめだった国内株式の資金流出

2月は国内株式、外国債券、バランス型、外国REITからの資金流出が1月から増加した。特に国内株式は最も資金流出が大きく2,000億円もの資金流出があり、1月の300億円の資金流出から急増した。このように2月に資金流出した資産クラスが多かった背景は、投資家が売却を検討したくなるような市場環境であったからであろう。

2月は国内株式が一段と上昇し利益確定売りを招きやすく、外国債券や外国REITは世界的な金利上昇が警戒され売りが出やすかったものと思われる。バランス型については株式市場、債券市場、両方の動向が意識され、売られたものと考えられる。
 
また、2月の資産クラスごとの資金動向はラップ口座等の資産配分の調整にも左右された面がある。2月はSMA専用ファンド全体からの資金の動きはほぼなかったものの、資産クラスごとにみると国内株式、外国債券からは資金流出、外国株式と国内株式には資金流入があった【図表2】。ラップ口座等で国内株式、外国債券の資産配分を減らし、その一方で外国株式と国内債券の資産配分を増やすリバランスが2月に行われたものと推察される。
 
国内株式は2月に資金流出が加速したが、SMA専用ファンドからの資金流出も800億円と大きかった。2月は月末に株価が急落し上げ幅を縮めたが、日経平均株価が一時3万円を超え1月からの上げ幅が月中には3,000円に迫るなど大きく上昇した。その割には、SMA専用ファンドを除くと国内株式からの流出金額は1,200億円で収まっており、むしろ資金流出は控えめであった印象である。実際に国内株式のインデックス・ファンドでは売却一色でなかった。2月の中旬から下旬にかけて日経平均株価が3万円前後と高水準にあるにも関わらず、資金流入している日もあった。
 
国内株式では資金流出が続いているが、売却の一巡もしくは高値圏が続く中でも再び投資するタイミングをうかがっている投資家も一定存在すると思われる。
【図表2】 2021年2月のSMA専用ファンドの推計資金流出入

外国株式でタイプによって異なる売れ筋

その一方で外国株式は2月に7,600億円の資金流入と1月の6,900億円の資金流入からさらに増加した。タイプ別にみても、アクティブ・ファンドに5,900億円、インデックス・ファンドに1,700億円の資金流入と、ともに1月の5,200億円、1,600億円の資金流入から増加した。2月はSMA専用ファンドの影響で外国株式への資金流入が膨らんでいた面も多少はあるが、外国株式はアクティブ・ファンド、インデックス・ファンドともに販売が市場環境に左右されず、引き続き堅調であった。

個別にみても、テーマ型(赤太字)と特定地域型、特に米国株式(青太字)、さらに「ESG」考慮型(緑太字)などの外国株式のアクティブ・ファンドの人気が1月同様に高かった【図表3】。
【図表3】 2021年2月の推計純流入ランキング
ここで2月に資金流入が大きかった外国株式のアクティブ・ファンド8本(太字)は、信託報酬が年率1.65%(税抜きで1.5%)を超えているファンドばかりであった【図表3】。足元2月だけでなく2020年以降を振り返ってみても、2020年7月以降の外国株式アクティブ・ファンドへの大規模資金流入のほとんどが、信託報酬が年率1.65%以上のファンド(青色棒)への流入であった【図表4:左】。
 
これは外国株式のアクティブ・ファンドの商品選びの際に、信託報酬などのコスト面がそこまで重視されていなことの現れなのかもしれない。外国株式に限った話ではないがアクティブ・ファンドではコストが高くてもそれに見合う、もしくはそれ以上の収益が上がれば良い。それゆえに投資哲学や投資アイデア(テーマ)、さらには運用体制などが、コスト面以上に重視されていると考えられる。
 
外国株式のアクティブ・ファンドには、外部機関の助言などを活用している場合も多い。そのようなファンドは信託報酬が高めに設定されており、概ね年率1.65%以上である。つまり、あくまでも外部機関の助言を活用しているような運用体制が充実しているファンドが人気になった結果、信託報酬が年率1.65%以上のファンドへ大規模な資金流入が続いていると解釈することができる。
【図表4】 信託報酬の水準別の外国株式ファンドの資金流出入の推移
逆に外国株式のインデックス・ファンドでは、やはり低コストのものが投資家の人気を集めている。外国株式のインデックス・ファンドの信託報酬は年率1.65%をほとんどのものが下回っているため、別途、執筆時点で最低水準といえる信託報酬が年率0.22%未満のファンド(黄色棒)とそれ以上に分けてみた【図表4:右】。外国株式のインデックス・ファンドはSMA・DC専用、また既に償還されたものを除くと集計時点で167本あるが、そのうち信託報酬が年率0.22%未満のものは25本しかない。にもかかわらず資金流入は、その少数のファンドに集中していることからもそのことが分かる。
 
このように外国株式ではタイプによらず資金流入が続いているが、コスト面に注目してみてみると、人気を集めている売れ筋のファンドの特徴はタイプごとに大きく異なっており、必ずしもアクティブ・ファンドでは低コストのものが売れているわけではなかった。ここ数年で外国株式のインデックス・ファンドの信託報酬が0.22%未満のもの、さらには0.1%を切るものまで出てきたこともあり、投信の低コスト化が進んだ印象を持っている方も多いと思われる。ただ、実際に足元で売れているファンドを見る限りでは、どちらかというと二極化が進んだという方が実態に即しているのかもしれない。

テーマ型の株式インデックス・ファンドは新たな風になるか?

なお、信託報酬が年率0.22%以上の外国株式のインデックス・ファンドも2021年に入ってから、資金流入が膨らんでいる【図表4:右(青色棒、赤囲い部分)】。市場平均狙いのインデックス・ファンドでない、いわゆるテーマ型の株式インデックス・ファンドへの資金流入が1月に続いて2月も大きかったためである。テーマ型の株式インデックス・ファンドは2月も高パフォーマンスだったファンド(赤太字)があるなど、足元のパフォーマンスが著しく良いものが出てきており、そのことが認知拡大や販売促進につながっていると思われる【図表5】。
 
テーマ型の株式インデックス・ファンド自体はテーマ型にも関わらず、コストはアクティブ・ファンドよりは低く設定されている。つまり、二極化してきている投信市場の中で、どちらにも含まれていない第三極的な特性を持っているといえよう。過去に似たような特性を持つものとしてスマート・ベータ型のインデックス・ファンドが2013年、2014年頃から登場している。スマート・ベータ自体は年金等の機関投資家向けには広く浸透したが、個人投資家が中心の投信市場では難解なコンセプトだったこともあり、あまり浸透しなかった。テーマ型自体は元々、個人投資家の人気が高いだけに、テーマ型の株式インデックス・ファンドが今後、投信市場でより浸透、定着していくのか注目である。
【図表5】 2021年2月の高パフォーマンス・ランキング
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではあり ません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資 信託の勧誘するものではありません。
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前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・資産運用

(2021年03月05日「研究員の眼」)

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