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コラム
2025年08月07日

高値警戒感から米国株離れか~2025年7月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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資金流入が急減速、新NISA以降の最低を更新

2025年7月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入を見ると、7月はファンド全体に2,700億円の資金流入があった。6月の5,200億円から概ね半減し、2024年以降の月間流入額としては最小を更新した【図表1】。2025年は、1月に2兆2,200億円の資金流入があったが、その後は減少傾向が続いている。特に4月以降の落ち込みが顕著となっているが、この7月も止まらなかった。
 
なお、SMA専用ファンドについても7月は全体で300億円の資金流入と2023年6月以降で最も少額であった。ファンドだけでなく、ラップ口座の販売も鈍化したことが推察される。
【図表1】 日本籍追加型株式投信(除くETF)の資金流出入

株高の裏で進む米国株離れ

組み入られている資産別に見ると、外国株式ファンドに4,200億円の資金流入があった【図表2】。ただ、6月の5,200億円から1,000億円減少した。一般販売されている外国株式ファンドの中では、インデックス型に4,100億円の資金流入と6月の4,500億円から減少し、アクティブ型は100億円以下と少額であるが資金流出に転じた。
【図表2】 2025年7月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入
このようにタイプ問わず外国株式ファンドの資金流入が鈍化した背景には、米国株式ファンドの販売鈍化が続いたことがあげられる。米国株式以外の外国株式ファンドへの資金流入は、インデックス型、アクティブ型ともに資金流入の鈍化が7月に止まっている【図表3】。資金流入が大きかった外国株式ファンドを見ても、インデックス型の米国株式(赤太字)以外のファンド(青太字)は6月からやや資金流入が増加していた【図表4】。
【図表3】 一般販売されている外国株式ファンドの資金流出入
【図表4】 2025年7月の推計純流入ランキング
米国株式は6月と比べて上昇スピードこそ緩やかだったが、7月もS&P500種株価指数が史上最高値を連日更新するなど上昇した。上昇に伴って高値警戒感も懸念されていたため、投資を見合わせる、もしくは売却する個人投資家が6月以上に多かったと考えられる。一部で米国株式ファンドからグローバル株式ファンドや金関連ファンド(【図表4】黄太字)に流れていることが、それらのファンドの販売が相対的に堅調となっている背景の一つにあるのかもしれない。

国内株式も利益確定売りが優勢

また、7月はバランス型ファンドの資金流入も鈍化し、さらに国内株式ファンドと外国債券ファンドは資金流出した。外国債券ファンドは900億円の流出のうち半分以上がSMA専用からだったが、国内株式ファンドは一般販売されているものから2,400億円の資金流出があった。
 
一般販売されている国内株式ファンドでは、インデックス型(黄棒)からの流出が1,300億円と6月の1,600億円から鈍化したが、アクティブ型(緑棒)は1,100億円の流出と6月の400億円から急増した【図表5】。アクティブ型の国内株式ファンドからの資金流出が1,000億円超えるのは、2020年11月以来のことであった。国内株式ファンドの場合、アクティブ型はインデックス型と比べて投資期間が長い傾向があるが、国内株式が7月に高値を付ける中、売却する投資家が多かった様子である。

一方で、7月もインデックス型の外国株式ファンドへの資金流入自体は続いており、積立投資を継続している個人投資家が多いことがうかがえる。ただ、内外株式などの高値警戒感から投資を見合わせる、もしくは売却する動きが見られたため、ファンド全体で見ると資金流入が減少したといえよう。
【図表5】 一般販売されている国内株式ファンドの資金流出入

アジア、テーマ型株式ファンドが好調

7月も、世界的に株価が上昇する中、一部の中国・アジア株式ファンドやハイテク系のテーマ型の株式ファンドの中に特に高パフォーマンスをあげるものが見られた【図表6】。
【図表6】 2025年7月の高パフォーマンス・ランキング

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年08月07日「研究員の眼」)

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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

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