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コラム
2025年07月23日

プラチナNISAに毎月分配型よりも必要なもの

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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資産取り崩し層への制度普及が課題の新NISA

NISAの口座数は2024年末に2,558万、さらに2025年3月末時点で2,646万に達している。2024年の制度拡充、すなわち新NISAの導入が起爆剤となり、2024年1年間で433万口座増加するなど、制度の普及が進んだ【図表1】。特に、資産形成世代を中心に普及している。2024年末時点の年代別口座数を見ても、50歳代、40歳代、30歳代が多く、人口に対する保有率も高くなっている。
【図表1】 年代別のNISAの口座数
その一方で60歳代以降については、成長投資枠を中心に積極的に活用している様子が見られる。しかし、制度の普及自体は資産形成世代と比較して進んでいない【図表2】。
【図表2】 2024年の投資枠の利用状況
そのような状況の中で、高齢者層の「貯蓄から投資へ」をより一層推進するために創設が検討されているのが、高齢者層に特化した新たな少額投資非課税制度、いわゆるプラチナNISAである。

毎月分配型よりも定率売却

プラチナNISAの目玉として注目されているのが対象商品の拡大、特に新NISAで除外された毎月分配型投信の導入である。毎月分配型投信は、確かに資産取り崩し層向けの商品であり、制度の趣旨と合致した商品といえる。
 
しかし、プラチナNISAで掲げられている「高齢者が安心して長生きできる社会を金融面から支えるための環境整備」という目的に照らすと、毎月分配型投信以上に潜在的に求められ、実際に普及してほしいサービスが存在する。それは、投信の定期売却、特に定率売却である。
 
毎月分配型投信の場合、安定して分配金を出すものが多いが、市場環境次第では取り崩しすぎる可能性がある。一方で、定率売却は売却額が不安定になるものの、取り崩し過ぎになりにくいため、資産を運用しながら取り崩す手段として、毎月分配型投信以上に有効なサービスであると筆者は考えている。しかし、執筆時点では大手ネット証券など、ごく一部でしか提供されておらず、利用したくてもできない人が多い。
 
そこで提案したいのが、プラチナNISAは「定率売却サービスを提供している金融機関」のみで口座開設できるようにするという制度設計である。つみたてNISAが格安インデックス型投信の普及を促したように、プラチナNISAを定率売却サービスの普及を促す起爆剤とすべきではないだろうか。見方を変えれば、プラチナNISAにおいて毎月分配型に限らず、定率売却など様々な資産取り崩し方法が提案できないのであれば、制度設計上の課題といえる。
 
政府や金融庁には、プラチナNISAに「投信の定率売却サービス」の提供を含めることを、ぜひ検討すべきであると提言したい。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年07月23日「研究員の眼」)

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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

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