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コラム
2025年06月11日

DCでも、国内株式の利確膨らむ~2025年5月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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外国株式ファンドへの資金流入が鈍化

2025年5月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、5月は外国株式ファンドに9,200億円の資金流入があった【図表1】。2025年に入って最小だった4月の9,800億円からさらに減少したが、減少幅は600億円と4月の2,300億円に比べて縮小した。
 
一般販売されている外国株式ファンドをタイプ別に見ても、インデックス型、アクティブ型ともに小幅な減少にとどまった。流入額が、インデックス型は5月に6,400億円となり、4月の6,600億円から200億円減少した。アクティブ型も5月は2,100億円となり、4月の2,400億円から減少となった。
【図表1】 2025年5月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入
5月は、月を通じて米関税政策に対する警戒感がさらに後退したことが追い風となり、世界的に株価が上昇した。外国為替市場でも、値動きの激しい展開となったが月間でみるとやや円安に振れた。それに伴って、多くの外国株式ファンドの基準価額が大きく上昇した。実際、5月に資金流入が大きかった外国株式ファンドの5月の収益率は、インデックス型(赤太字)、アクティブ型(青太字)問わず7%を超える高パフォーマンスとなった【図表2】。
 
こうした中、5月の外国株式ファンドの資金流出入を見る限りでは、インデックス型もアクティブ型も基準価額の上昇に伴う戻り売りは限定的で、外国株式の投資意欲は引き続き高かったことがうかがえる。ただし、米関税政策の先行き不透明感が残る中、様子見姿勢やポジション調整の売却が見られ、外国株式ファンドへの資金流入はやや鈍化したと考えられる。
【図表2】 2025年4月の推計純流入ランキング

バランス型とラップ口座の販売回復

また、バランス型投信については5月に1,200億円の資金流入があり、4月の400億円から大きく増加した【図表3】。4月に一部で買い控えが起き、買付が落ち込み、資金流入が減少していたが、5月には流入が急回復し、買付が再び活発になったことがうかがえる。SMA専用ファンドでも4月は資金流入が鈍化していたが、5月に回復した。バランス型ファンドと類似した商品コンセプトを持つラップ口座の販売についても、同様の傾向が確認された。
【図表3】 バランス型ファンドの買付額と解約額

国内株式は利益確定の売却の動き

その一方で国内株式ファンドは、5月に1,700億円の資金流出があった【図表4】。国内株式も外国株式と同様に、日経平均株価が月初から一時2,000円以上上昇するなど大きく上昇したが、それに伴いインデックス型を中心に利益確定売りが出たと見られる。
 
特に日経平均株価が3万8,000円を超えた翌営業日にあたる14日と30日には、それぞれ600億円、500億円に迫る資金流出があり、売却が顕著だった。米関税政策に対して本格的に警戒される前、2月以前の日経平均株価の水準が3万8,000円台だったこともあり、この水準を意識して売却する個人投資家が多かったと推察される。
 
このように国内株式ファンドの資金流出が影響し、5月はファンド全体でみると9,000億円の資金流入となり、4月の1兆2,600億円から3,600億円減少し、2025年に入って初めて1兆円を下回った。
【図表4】 国内株式ファンドの資金流出入

DCでも利益確定売りが顕在化

なお、国内株式ファンドについてはDC専用(緑棒)に限っても、5月に100億円の資金流出があった【図表4】。過去にも、国内株式が上昇した2024年10月、12月なども流出超過に転じており、確定拠出年金口座もその他の一般口座と同様に利益確定売りが出ている傾向が見受けられる。
 
投信市場全体で見ると、インデックス型の外国株式ファンドの残高が積み上がっているなど、長期投資が根付きつつある。しかし、国内株式ファンドに限ると確定拠出年金口座であっても株価の変動に応じた売買が目立ち、長期投資がまだ十分に根付いていないようだ。

半導体関連ファンドのパフォーマンスが急回復

5月は、半導体関連に注目したテーマ型の外国株式ファンド(赤太字)が総じて高パフォーマンスとなった【図表5】。ただし、これらのファンドは、過去1年間では収益率が二桁のマイナスに落ち込んでいた。外国為替市場で1ドル156円台だったのが足元143円台になるなど1年間で円高が進行したことも逆風となったほか、半導体関連株自体も一部のAI関連銘柄を除き、冴えない展開が続いたが、5月は株価が急反発した。
【図表5】 2025年5月の高パフォーマンス・ランキング

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年06月11日「研究員の眼」)

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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

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