コラム
2025年03月28日

新NISAの現状

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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2014年に迫る口座開設

少額投資非課税制度(NISA)が、いわゆる新NISAとして大幅に制度拡充されてから1年経過した。口座数は2024年末の速報値だと2,560万となっており、2023年末の2,124万から435万、20%も増えた【図表1】。一般NISAが始まった2014年を除くと、2024年は最も口座開設が行われたといえる。
 
改めて制度開始から振り返ってみると、2014年の口座開設が顕著だったことが分かる。ただ、2014年は開設された口座の稼働率は45.5%しかなかった。つまり、2014年は開設された825万口座のうち、実際に買付が行われたのは375万口座のみだった。
 
2024年に増えた435万口座もすべて稼働しているわけではなく、そのうち稼働しているのは過去のつみたてNISAの状況を踏まえると7割、300万口座程度だと思われる。それでも、一人一口座という縛りがあり、すでに2,000万口座以上あったことを踏まえると、2024年は2014年に迫るくらい制度普及が進んだといえるだろう。
【図表1】 NISAの口座数 と その増加数

買付も3倍に増加

NISA口座からの買付についても、2024年は17.4兆円と2023年の3.4兆円から3倍程度に増えた【図表2】。そのうち成長投資枠が12.5兆円と2023年の一般NISA口座の買付から3.5倍となり、つみたて投資枠も5兆円と2023年のつみたてNISA口座の買付の2.9倍となった。口座数自体が増えたこともあるが、それ以上に買付枠が大きく増えたため、増えた買付枠を積極的に活用する人が多かったことがうかがえる。
【図表2】 NISAからの買付額
なお、NISA口座からの買付すべてが新規資金というわけではなかったようだ。日本証券業協会のアンケート結果をみると、購入資金は「預金・給与所得・年金」が最も多いが、再投資に加えて、旧NISA口座や課税口座からの買替もみられた【図表3】。
【図表3】 新NISAにおける購入資金
さらに、2024年にNISA口座からの売却もみられた。こちらも日本証券業協会のアンケート結果になるが、成長投資枠の利用者の25%、つみたて投資枠の利用者でも18%は、2024年中に一部かもしれないが売却したと回答している。買替や売却があったことを踏まえると、必ずしもNISA口座からの買付が「貯蓄から投資へ」になっていない点には、留意が必要かもしれない。

2025年は勝負の1年に

いずれにしても、2024年は制度拡充に伴って非常に良いリスタートを切ったといえる。2025年に入ってもNISA口座からの買付は、とりあえず継続している様子である。証券会社10社のみになるが、特に2025年1月は成長投資枠を中心に2024年1月以上の買付があった【図表4】。ただし、金融市場の雲行きは怪しくなってきている中、脱落する人が出てこないかが心配される。
【図表4】 証券会社10社のNISA口座からの買付額
また、口座開設は残念ながら新NISAとして拡充された2024年初が口座開設のピークで、2024年中から既に鈍化してしまっている【図表5】。2025年に入っても、証券10社の口座開設は前年同月の半分以下にとどまっている。NISAが広く普及してきたといっても、最も普及が進んでいる30歳代でも3人に1人程度しか保有していない状況である。制度普及がこのまま止まってしまうのか、口座の利用状況と合わせて今後の動向が注目される。
【図表5】 四半期ごとのNISA口座の増加数

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年03月28日「研究員の眼」)

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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

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