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コラム
2025年03月21日
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米国株式が急落
高金利で割高感が意識されやすく
まず、1つめの誤算は金利の高止まりである。米国の10年国債利回り(面グラフ)は2024年9月に利下げが開始されたこともあり、一時3.6%台まで低下していた【図表1】。しかし、その後の11月、12月のFOMCで連続して利下げが行われたが、インフレの再燃が懸念されたため長期金利は上昇した。特に、12月のFOMCでは、2025年以降の利下げを急がない姿勢が示されたこともあり、会合後の2025年1月に4.7%台をつけるなど一段と上昇していた。これもトランプ大統領の関税政策に伴う物価上昇を警戒した結果ともいえ、トランプ大統領の影響ともいえる。
米国株式は、S&P500種株価指数の予想PERが20倍超えと高水準にあったが、長期金利が高止まりする中、よりバリュエーション面での割高感が意識されやすくなっていたと考えられる【図表2】。実際にS&P500種株価指数は2月に史上最高値を更新したが、2024年12月のFOMC以降ほぼ上昇が止まり、踊り場状態であったことからもそのことがうかがえる。
米国株式は、S&P500種株価指数の予想PERが20倍超えと高水準にあったが、長期金利が高止まりする中、よりバリュエーション面での割高感が意識されやすくなっていたと考えられる【図表2】。実際にS&P500種株価指数は2月に史上最高値を更新したが、2024年12月のFOMC以降ほぼ上昇が止まり、踊り場状態であったことからもそのことがうかがえる。
米企業の業績拡大もやや一服
ここでS&P500種株価指数のセクター別に2025年の予想EPSの変化率をみると、2024年前半(青棒)は「情報技術」、「通信サービス」の2つのセクターにけん引される形でS&P500種株価指数の予想EPSが上昇していたことが分かる【図表4】。しかし、それ以降(赤棒)は「情報技術」、「通信サービス」の業績拡大が鈍化している。さらに下方修正されるセクターも多かったため、S&P500種株価指数全体でみても低下基調になっているといえよう。
つまり、米国株式は割高感が意識されやすい上に業績拡大にやや一服感が見られていたころに、トランプ大統領の関税政策やそれに伴う景気減速懸念が加わったため株価が下落したと考えている。
つまり、米国株式は割高感が意識されやすい上に業績拡大にやや一服感が見られていたころに、トランプ大統領の関税政策やそれに伴う景気減速懸念が加わったため株価が下落したと考えている。
単なる株価の水準調整ならそろそろ一服も
米国株式の2月下旬からの下落は米国景気の減速を実際に織り込む動きというより、株価の水準調整の意味合いが大きいと思われる。S&P500種株価指数の予想PERは24倍に迫っていたのがこの下落を受けて低下したといっても20倍前後と高水準にある。S&P500種株価指数のセクター別の騰落率をみても、大統領選後の上昇が大きかったセクターほど下落が大きくなっている【図表5】。楽観的に買われていた分、下落が大きくなっていたことがうかがえる。
一方で米国株式のこれまでの株価の水準調整自体は、ある程度終わった可能性がある。S&P500種株価指数の予想PERは、足元見込まれている来期2026年の業績拡大まで織り込んで計算すると、18倍台まで低下する。大幅に業績見通しが下方修正されなければ、高水準であるが過熱感がなくなったことが示唆されるためである。
ただし、懸念されている関税政策などの影響が米国の景気や企業業績に実際に表れてくるのはこれからである。トランプ大統領の動向と合わせて米国の景気や企業業績の動向に左右される不安定な展開が続くことが見込まれる。本当に米国で景気後退、企業業績が腰折れするようなことになると、米国株式は一段安、S&P500種株価指数が5,000ポイント割れという展開になるかもしれない。
一方で米国株式のこれまでの株価の水準調整自体は、ある程度終わった可能性がある。S&P500種株価指数の予想PERは、足元見込まれている来期2026年の業績拡大まで織り込んで計算すると、18倍台まで低下する。大幅に業績見通しが下方修正されなければ、高水準であるが過熱感がなくなったことが示唆されるためである。
ただし、懸念されている関税政策などの影響が米国の景気や企業業績に実際に表れてくるのはこれからである。トランプ大統領の動向と合わせて米国の景気や企業業績の動向に左右される不安定な展開が続くことが見込まれる。本当に米国で景気後退、企業業績が腰折れするようなことになると、米国株式は一段安、S&P500種株価指数が5,000ポイント割れという展開になるかもしれない。
(2025年03月21日「研究員の眼」)

03-3512-1785
経歴
- 【職歴】
2008年 大和総研入社
2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
2022年7月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)
前山 裕亮のレポート
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